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幼馴染みと大陸横断鉄道~トキオ国への道~  作者: ルト
第6章 帰り道の始まり
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第84話 トワイライト・トラベラー

 夕方が、訪れた。

 太陽が西へ西へと傾いていき、その中をバーン・スワロー号は走り抜けていく。


 もうすぐ太陽が、地平線まで到達することは、誰もが分かり切ったことだ。

 そんな中、オレとライラは、食堂車へと向かっていた。




「ビートくん、今日は夕食も早いね」


 ライラが、オレに云う。

 先ほどまで娼婦のドレスを着ていたライラは、今は薄紫色のドレスに身を包んでいた。


「今日は色々とあって疲れたからね。だから、早めに夕食にしておいて、夜はゆっくり休もうと思うんだ」

「あー、それ賛成!」


 オレの言葉に、ライラは頷いた。


「昼寝したけど、なんだかあんまり疲れが取れていないような気がするの。わたしも、今夜はゆっくりと寝たい!」

「それじゃあ、夕食を食べた後は、眠くなったらそのまま寝ちゃおうか。満腹になっているときのほうが、よく眠れるからね」

「うん! ビートくんと一緒に寝たい!」

「ちょっ、ライラ……!」


 ライラの言葉に、オレは辺りを見回した。

 幸いにも、オレたち意外には誰も居なかった。


「恥ずかしいから、個室以外でそういうことを云うのは、止めて!」

「えへへ……」


 緊張で身体が熱くなっているオレの隣で、ライラは嬉しそうに笑った。




 食堂車に入ると、まだお客さんは少なかった。

 懐中時計を見ると、まだ18時だ。ピークがやってくるのは、あと1時間後だろう。今なら、好きな席に座って、好きな料理を注文できる。


 空いている席に座り、オレたちはメニューを開いた。


「ライラ、何を食べようか?」


 そう云ってメニューを見たオレは、目を丸くした。

 メニューに載っている料理の品数が、明らかに少なかった。


 ・サーロインステーキ

 ・ステーキ

 ・フリーランチ各種

 ・豆スープ

 ・煮豆

 ・ペペロンチーノ

 ・グリルチキン

 ・お酒とソフトドリンク


 これくらいしかなかった。

 昼はあまり注意深く見ていなかったため、気がつかなかった。


 アークティク・ターン号の食堂車に比べて、そのメニューの差は大きかった。しかもメニューには『ランチ&ディナーメニュー』と書かれている。どうやらこれとは別で、朝食用のメニューもあるみたいだ。

 しかし、朝食用メニューもあまり期待はできそうにないな。


「……オレは、グリルチキンにするよ」

「わたしも!」


 オレがメニューを選ぶと、ライラも同じものを頼むことになった。

 オレは卓上の呼び鈴を鳴らして、ウエイターを呼んだ。




 食事を終えると、オレとライラは紅茶を飲んだ。

 グリルチキンやステーキなどは、セットメニューになっていて、全てに紅茶かコーヒーのどちらかがついていた。夜遅くまで起きているつもりは無かったため、オレたちはコーヒーではなく、紅茶を選んだ。


「ビートくん、すごい夕陽ね」


 ライラが、窓の外を見て云った。

 太陽はそろそろ、地平線に到達するところだ。西日は勢いを増し、多くの人はブラインドを閉めて食事をしていた。そんな中、オレたちはもうすぐ個室に戻ることもあり、夕陽を眺めながら紅茶を楽しんでいた。

 外の世界が、太陽の光で赤く染まっていく。まるでオレたちが飲んでいる紅茶のような色になっていくのが、なんだかおもしろく感じられた。


「やぁ、旅の少年少女、ビートにライラじゃないか!」


 聞き覚えのある声。

 もうその声が誰なのか、オレたちは知っていた。


「「カリオストロ伯爵!?」」


 オレたちは、同時に相手の名前を呼んだ。

 振り返ると、そこにはカリオストロ伯爵がいた。


「どっ、どうしてまた!?」

「実はこれから、北大陸のサンタグラードに向かわなくちゃいけないんだ。仕事が入ってしまってね」


 カリオストロ伯爵は、ころころと笑う。

 北大陸のサンタグラード。そこを目指しているのは、オレたちも同じだ。


「この前までいたサンタグラードに、また行かなくちゃいけないんだ」

「そうなんですか。実は、僕たちもサンタグラードに向かっているんです」

「ほう!」


 オレの言葉に、カリオストロ伯爵は目を丸くした。


「それはそれは、なんという偶然だろう! そういえば、ビートとライラはトキオ国の跡地を目指していたんだな。だけど北大陸のサンタグラードに向かっているということは……トキオ国の跡地を、訪ねたということか!」

「えぇ、その通りです」


 オレが頷く。

 カリオストロ伯爵は、うんうんと頷いた。


「そうかそうか。また機会があったら、是非旅の話を伺わせてほしいな。……それにしても、すごい夕陽だな」


 オレたちが掛けている座席の窓から、カリオストロ伯爵は外を見て云った。


「すごいですよね。わたしもこんな夕陽を見たのは、久しぶりです」

「そうだ! いいことを教えよう」


 ライラの言葉の後に、カリオストロ伯爵は手を叩いてそう云った。

 いいことっていうのは、どんなことだろう?


「夕陽の中で、告白するというシチュエーションがあるだろう? あれはロマンチックだから行われるというものもあるけど、実はもう1つの意味もあるんだ」

「もう1つの意味、ですか?」

「そうだ」


 頷くカリオストロ伯爵の前で、オレたちは顔を見合わせる。

 夕陽の中で告白することで、ロマンチック以外にどんな効果があるのか。


「実はね……夕陽が訪れる時間帯というのは、夕方だ。夕方には、その日の仕事で疲れ切っている人が多い。そんな時は、相手の意見に流されやすいんだ。思考や判断能力が、弱くなる時間帯だからね。だから夕方に行うと、告白の成功率が上がるともいわれているんだ。演説が夕方に行われるのも、同じことだ」


 へぇ、そんな効果があったなんて。

 オレとライラは、カリオストロ伯爵の博識さに、またしても驚かされた。


「さて、私はこれから1等車の個室に戻る。ここの個室に居るから、何かあったらいつでも訪ねてきておくれ」


 カリオストロ伯爵は、そう云って、オレに1枚の紙を手渡した。

 そこには、部屋番号が記されていた。


「それでは、さらばだ!」


 カリオストロ伯爵は、そのまま食堂車を後にしていった。

 どうやらオレたちよりも先に、食事を済ませていたらしい。


 その後、オレたちも紅茶を飲み終えると、支払いをして食堂車を後にした。




 1等車の個室に戻ってくる頃には、太陽は半分が地平線に沈み、夕陽もピークを迎えていた。

 個室の中にまで差し込んでくる夕陽がまぶしくて、オレはブラインドを下げた。


「ねぇ、ビートくん……」


 オレがベッドに腰掛けて休んでいると、ライラが隣に座った。


「ライラ、どうかした?」

「……尻尾、触りたい?」


 ライラの言葉に、オレは驚いた。

 尻尾をライラの方から触ってもいいと云ってくるなんて、オレウジュを出発した後以来だ。


「いっ……いいの!?」

「うん……!」


 オレが問うと、ライラは尻尾をオレの前に差し出した。


「いいよ、いっぱい触って」

「それじゃあ……!」


 オレはそっと、ライラの尻尾に触った。

 尻尾がピクンと動き、ライラの表情も変化する。


「んうっ……!」


 ライラが喘ぎ声に似た声を放つ中、オレはライラの尻尾を触り続ける。

 あぁ、ライラの尻尾はモフモフしていて気持ちがいい……!


「あんっ……気持ちいいよぉ……」

「意外だね、ライラ」


 尻尾を触られて、気持ちいいとライラがいうなんて……!

 オレは嬉しくなって、さらに触っていく。


「尻尾を触られるのが、ライラは気持ちいいんだ?」

「うん……ビートくんに、すっかり変えられちゃったぁ……!」


 恥ずかしそうに、ライラが云う。

 あぁ、なんて可愛いんだろう。


 オレはいつしか、思考停止したように、ライラの尻尾をモフるマシーンと化していた。

 結局その後、オレはライラと共に眠くなるまで、ライラの尻尾をモフり続けた。




 バーン・スワロー号は、オレたちを乗せて、さらに西大陸の開拓地を進んでいった。



 第6章 帰り道のはじまり~完~



 第7章へつづく

ここまで読んでいただき、ありがとうございます!

感想、誤字脱字、ご指摘、評価等お待ちしております!

次回更新は、4月上旬の21時更新予定です!

そして面白いと思いましたら、ページの下の星をクリックして、評価をしていただけますと幸いです!


年度末で決算が重なって忙しくなってしまうため、また少しの間休載します。

楽しみにして頂いている方には申し訳ありませんが、更新再開まで今しばらくお待ちください。

再開が決定しましたら、Twitterにてお知らせいたします。

ルトくんのTwitterはこちらです→https://twitter.com/@ruto_kun


次回からは、第7章へと突入いたします!

開拓地でビートとライラはどんな事件に巻き込まれていくのでしょうか!?

乞うご期待ください!


それと、幼馴染みと大陸横断鉄道の主人公、ビートとライラの姿は、漫画家の山田牛午先生(@ymd95)に依頼して描いていただいております!!

Skebにて、ビートとライラの姿が見れます!!

とっても可愛くてカッコいい、ビートとライラです!!

山田牛午先生のSkebは、こちらです→https://skeb.jp/@ymd95

山田牛午先生、ありがとうございます!!


ちなみにファンアートは大歓迎です。

ビートとライラの姿を描いていただけますと、ルトくんもとっても喜びます!!


今後も頑張って更新していきますので、どうぞよろしくお願いします!

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