第76話 ミーケッド国王の教え
オレたちはパイラタウンに戻ると、町の人に訊いて、町長の家に向かった。
町長の家に到着したオレたちは、帰ってくる途中でまとめた調査報告書として、町長に手渡した。
そしてオレはその場で、大金貨10枚と、トキオ国の調査報酬である大金貨3枚を受け取った。
「ビート王子、ありがとうございました!」
「では、僕たちは宿に戻ります。何かありましたら、いつでも宿に来てください」
「もったいなきお言葉、ありがとうございます……!」
町長は何度もオレたちに頭を下げ、玄関まで見送りに来てくれた。
「ふぅっ、疲れたぁ……!」
ライラがそう云って、ベッドに寝転がった。
宿屋にある食堂で夕食を食べている時に、オレたちはパイラタウンの人々から、質問を受けた。トキオ国の跡地はどうなっていたのか。何か感じたことはあったか。これからビート王子として、どうしていくのか。
オレは少しだけうっとおしく感じながらも、パイラタウンの人々の問いかけに答えていった。
巨大な廃墟になっていた。
まだ気持ちの整理がついていないから、答えられない。
これからどうするかも決めていない。
そんな当たり障りのないことだけを答えて、オレはライラを連れて、部屋に戻った。
念には念を入れて、ドアは施錠して、旅行カバンを置いて開かないようにした。カーテンも閉めて、オレたちは部屋に閉じこもる。
「ビートくん、今日は疲れたね」
「うん、オレも久々に疲れたよ」
寝転がったライラの隣に、オレは腰掛けた。
「だけど、収穫はすごくあったよ。トキオ国の跡地がどうなっているのか、確認できた。それに、パイラタウンの人々から父さんと母さんが伝えたことを、教えてもらえた」
パイラタウンの人々は、オレたちに質問ばかりしたわけではなかった。
オレに、ミーケッド国王が云っていた言葉を、いくつも教えてくれた。
『常に初心を忘れるな』
『不公平なことはするな』
『誠実であれ』
『弱い立場の者には寄り添え。強い立場の者には語りかけよ』
『食べ物は独り占めせず、平等に分け与えよ』
『いざという時には、戦うことも大切だ』
いくつもの教えを、パイラタウンの人々は口にした。
オレは手帳を開き、それらの言葉をメモしておいた。
なんだか、ミーケッド国王が残した言葉を反すうしていると、説教そのものに思えてきた。
これじゃ国王というよりも、説教師だ。
「オレの父さんは、本当に国民から慕われていたのかな?」
「どうして?」
寝転がっていたライラが、起き上がって訊いた。
「ビートくん、どうしてそう思うの?」
「ミーケッド国王の教えというものを見ていたらさ、まるで説教師みたいな言葉ばかりなんだ」
オレは手帳に記した言葉を、ライラに見せた。
「ビートくん、全部メモしてたの!?」
「せっかく話してくれたからね。聞き流したら申し訳ないし、オレも知りたかったんだ。でも、まさかこんな説教師みたいなことを云っていたなんて……オレの父さんは、説教師なのかな?」
「ビートくん、ミーケッド国王は素晴らしい王様よ!」
ライラは真剣な表情で、そう云った。
「説教師は煙たがられることが多いけど、ミーケッド国王は違うわ。パイラタウンの人々が、いくつもミーケッド国王の言葉を覚えていたことからも、それは明白よ! ビートくん、ミーケッド国王は素晴らしい王様! わたしのお父さんとお母さんも、そう云ってたわ! 間違いないわよ!!」
「……ありがとう、ライラ」
オレは手帳を置き、ライラを抱きしめた。
その翌日から、出発の日まで、オレはパイラタウンの人々と何度も話した。
ミーケッド国王が伝えていた言葉を、オレは1つでも多く収集しておきたかった。
そして、オレたちがパイラタウンを離れる日が、やってきた。
パイラタウン駅に到着した、ブルーホワイト・フライキャッチャー号。
オレとライラは、再び2等車に乗り込むことになった。
ホームでの見送りには、町長とパイラタウンの人々が見送りに来てくれた。
「ビート王子!」
ブルーホワイト・フライキャッチャー号に乗り込もうとしていたオレに、町長が声を掛けた。
オレたちは立ち止まり、振り返る。
「町長さん、色々とお世話になりました」
「こちらこそ、ありがとうございました。それと、次のオリザ国では、お気を付けてください!」
「どういうことですか?」
オレは首を傾げた。
オリザ国で、何かあったのだろうか?
「オリザ国で、白狐族と神官の対立が起きていると、今朝の新聞に出ておりました! 万が一のこともあります。出歩かれる場合は、お気を付けください!」
「わかりました。ありがとうございます!」
最後まで、世話になったなぁ。
オレは一礼してから、ブルーホワイト・フライキャッチャー号に乗り込んだ。
出発時刻になると、機関車が汽笛を鳴らし、ブルーホワイト・フライキャッチャー号がゆっくりと走り出した。
少しずつスピードを上げていき、ブルーホワイト・フライキャッチャー号はパイラタウン駅を離れていく。
パイラタウンの人々に見送られながら、オレたちはオリザ国へと向かった。
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