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幼馴染みと大陸横断鉄道~トキオ国への道~  作者: ルト
第6章 帰り道の始まり
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第76話 ミーケッド国王の教え

 オレたちはパイラタウンに戻ると、町の人に訊いて、町長の家に向かった。


 町長の家に到着したオレたちは、帰ってくる途中でまとめた調査報告書として、町長に手渡した。

 そしてオレはその場で、大金貨10枚と、トキオ国の調査報酬である大金貨3枚を受け取った。


「ビート王子、ありがとうございました!」

「では、僕たちは宿に戻ります。何かありましたら、いつでも宿に来てください」

「もったいなきお言葉、ありがとうございます……!」


 町長は何度もオレたちに頭を下げ、玄関まで見送りに来てくれた。




「ふぅっ、疲れたぁ……!」


 ライラがそう云って、ベッドに寝転がった。

 宿屋にある食堂で夕食を食べている時に、オレたちはパイラタウンの人々から、質問を受けた。トキオ国の跡地はどうなっていたのか。何か感じたことはあったか。これからビート王子として、どうしていくのか。

 オレは少しだけうっとおしく感じながらも、パイラタウンの人々の問いかけに答えていった。


 巨大な廃墟になっていた。

 まだ気持ちの整理がついていないから、答えられない。

 これからどうするかも決めていない。


 そんな当たり障りのないことだけを答えて、オレはライラを連れて、部屋に戻った。

 念には念を入れて、ドアは施錠して、旅行カバンを置いて開かないようにした。カーテンも閉めて、オレたちは部屋に閉じこもる。


「ビートくん、今日は疲れたね」

「うん、オレも久々に疲れたよ」


 寝転がったライラの隣に、オレは腰掛けた。


「だけど、収穫はすごくあったよ。トキオ国の跡地がどうなっているのか、確認できた。それに、パイラタウンの人々から父さんと母さんが伝えたことを、教えてもらえた」


 パイラタウンの人々は、オレたちに質問ばかりしたわけではなかった。

 オレに、ミーケッド国王が云っていた言葉を、いくつも教えてくれた。


『常に初心を忘れるな』

『不公平なことはするな』

『誠実であれ』

『弱い立場の者には寄り添え。強い立場の者には語りかけよ』

『食べ物は独り占めせず、平等に分け与えよ』

『いざという時には、戦うことも大切だ』


 いくつもの教えを、パイラタウンの人々は口にした。

 オレは手帳を開き、それらの言葉をメモしておいた。


 なんだか、ミーケッド国王が残した言葉を反すうしていると、説教そのものに思えてきた。

 これじゃ国王というよりも、説教師だ。


「オレの父さんは、本当に国民から慕われていたのかな?」

「どうして?」


 寝転がっていたライラが、起き上がって訊いた。


「ビートくん、どうしてそう思うの?」

「ミーケッド国王の教えというものを見ていたらさ、まるで説教師みたいな言葉ばかりなんだ」


 オレは手帳に記した言葉を、ライラに見せた。


「ビートくん、全部メモしてたの!?」

「せっかく話してくれたからね。聞き流したら申し訳ないし、オレも知りたかったんだ。でも、まさかこんな説教師みたいなことを云っていたなんて……オレの父さんは、説教師なのかな?」

「ビートくん、ミーケッド国王は素晴らしい王様よ!」


 ライラは真剣な表情で、そう云った。


「説教師は煙たがられることが多いけど、ミーケッド国王は違うわ。パイラタウンの人々が、いくつもミーケッド国王の言葉を覚えていたことからも、それは明白よ! ビートくん、ミーケッド国王は素晴らしい王様! わたしのお父さんとお母さんも、そう云ってたわ! 間違いないわよ!!」

「……ありがとう、ライラ」


 オレは手帳を置き、ライラを抱きしめた。


 その翌日から、出発の日まで、オレはパイラタウンの人々と何度も話した。

 ミーケッド国王が伝えていた言葉を、オレは1つでも多く収集しておきたかった。


 そして、オレたちがパイラタウンを離れる日が、やってきた。




 パイラタウン駅に到着した、ブルーホワイト・フライキャッチャー号。

 オレとライラは、再び2等車に乗り込むことになった。


 ホームでの見送りには、町長とパイラタウンの人々が見送りに来てくれた。


「ビート王子!」


 ブルーホワイト・フライキャッチャー号に乗り込もうとしていたオレに、町長が声を掛けた。

 オレたちは立ち止まり、振り返る。


「町長さん、色々とお世話になりました」

「こちらこそ、ありがとうございました。それと、次のオリザ国では、お気を付けてください!」

「どういうことですか?」


 オレは首を傾げた。

 オリザ国で、何かあったのだろうか?


「オリザ国で、白狐族と神官の対立が起きていると、今朝の新聞に出ておりました! 万が一のこともあります。出歩かれる場合は、お気を付けください!」

「わかりました。ありがとうございます!」


 最後まで、世話になったなぁ。

 オレは一礼してから、ブルーホワイト・フライキャッチャー号に乗り込んだ。




 出発時刻になると、機関車が汽笛を鳴らし、ブルーホワイト・フライキャッチャー号がゆっくりと走り出した。

 少しずつスピードを上げていき、ブルーホワイト・フライキャッチャー号はパイラタウン駅を離れていく。


 パイラタウンの人々に見送られながら、オレたちはオリザ国へと向かった。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます!

感想、誤字脱字、ご指摘、評価等お待ちしております!

次回更新は、3月22日の21時更新予定です!

そして面白いと思いましたら、ページの下の星をクリックして、評価をしていただけますと幸いです!

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