第56話 ホープでの準備
オレとライラは翌日から、買い出しに出かけた。
「ビートくん、まず食べ物だよね?」
「うん。だけど、今度はアークティク・ターン号よりも個室が狭いから、あまり多くは持ちこめない。日持ちがして、なるべく小さなものを探そう」
「例えば?」
「ポムパンとか、ジャーキーのようなものがいいな」
「ジャーキー!?」
ジャーキーと聞いたライラが、目をキラキラさせながら、尻尾を振った。
「じゃあ、早く行こうよ!!」
「わっ、ちょっと!」
ライラがオレの手を引いて、走り出した。
相変わらず、ライラは食べ物……特に肉類のことになると、こうなってしまう。
オレはライラに手を引かれながら、ホープの商店街へと向かって行った。
買い物を終えたライラは、ご機嫌だった。
思っていたよりも安く、たくさんのジャーキーを仕入れることができたためだろう。その証拠に、ライラがジャーキーを入れた袋を、独占するように持っていた。
「ビートくん、ホテルの部屋でちょっとだけ味見しようよ!」
「いいけど、食べすぎると無くなっちゃうから、ほどほどにね?」
「もちろん!」
そんな会話をしながらホテルへ向かっていた時だった。
「やあ、旅の少年少女ビートとライラ!」
聞き覚えのある声。
間違いなく、カリオストロ伯爵だ。
そう思ったオレたちが振り返ると、そこにはカリオストロ伯爵がいた。
「カリオストロ伯爵!」
「ついにホープに到着したみたいだね。今は、買い出し中かな?」
「はい! いっぱいジャーキーが買えました!」
ライラが満面の笑みで、カリオストロ伯爵に云う。
わざわざ、そんなことを報告しなくても……。
「そうか、ブルーホワイト・フライキャッチャー号に乗るための準備だね」
「カリオストロ伯爵は、どうしてここに?」
オレが尋ねると、カリオストロ伯爵は答えてくれた。
「いい質問だね。実は私は、あちこちに仕事場となる事務所を構えているんだ。そのうちの1つが、ここホープにあるんだよ」
「仕事場が……?」
「あちこちにあってね。今回はホープに用事があったから、そこで仕事をすることにしたんだ」
そういえば、カリオストロ伯爵は何の仕事をしているのだろう?
爵位持ちだから、もしかしたら土地とかを持っていて、労働しなくても十分すぎるほどの収入があるのかもしれない。だけど、仕事をするということは、何かをやっていることは確かだ。
こんな旅をしながらできる仕事って、なんだろう?
オレが不思議に思っていると、カリオストロ伯爵はポケットから小袋を取り出した。
「ビートとライラに、これをあげよう。受け取っておくれ」
「は、はい……」
カリオストロ伯爵が差し出した小袋を、オレたちは受け取った。
中には何か、粒状のものが入っているようだ。
「これは、何ですか?」
「お守りのようなものだ。中には米が入っているよ」
ライラの問いに、カリオストロ伯爵がそう答える。
なるほど、粒状のものが入っていると思ったら、米が入っていたのか。
もしかして、これを非常食に当てろという、カリオストロ伯爵からの気遣いなのだろうか?
「トキオ国へ向かうには、ここから南に向かう。その途中に、オリザ山という場所がある。そこに行くといい」
「オリザ山……?」
聞いたことが無い地名だった。
「そこには、何があるんですか?」
「迷わず云ったほうがいい。私が口で説明するよりも、自分の目で見たほうが、より理解できるはず。行けば、分かるよ」
カリオストロ伯爵はそう云うと、オレが持っている小袋を指し示した。
「オリザ山で、その小袋を渡すんだ。すぐに通してもらえる。そしてきっと、力になってくれるはずだ」
「わかりました」
何だかよく分からないが、とりあえず持っていて損は無いはずだ。
ここはありがたく、受け取っておいたほうがいい。いざという時には、中の米を取り出してかじれば、空腹をしのぐために役立つはずだ。
「カリオストロ伯爵、ありがとうございます!」
「どういたしまして。きっとまた、会う時が来るだろう。それでは!」
カリオストロ伯爵はオレたちに背を向けると、人混みの中に消えていった。
どこからともなく現れては、風のように去っていく。
本当に不思議な貴族だ。
「ねぇビートくん、これどうする?」
ライラが受け取った小袋を見て、云った。
「中に入っているのって、お米でしょ? お米を調理する道具なんて、わたしたち持っていないよ?」
「カリオストロ伯爵から貰ったものだから、とりあえず持っておこうよ」
オレは小袋を、ポケットに入れた。
「それにカリオストロ伯爵が云っていたように、オリザ山というところで渡せば、何かあるみたいだから。少なくとも、悪いものじゃないと、オレは思うよ」
「もし何もなかったら、どうするの?」
「その時は、中身の米をかじればいいよ。お米はすぐには腐らないし、生のままでも食べられないことはないから、いざという時の非常食にもなるよ」
オレは何度か、生米をかじったことがあった。
あんまり美味しくは無かったが、それでも少しだけお腹を満たすことはできた。
きっとこれも、何かの役には立つはずだ。
「じゃあ……わたしも持っておこうっと」
ライラはそう云って、小袋をジャーキーが入った袋の中に入れた。
「ビートくん、ホテルに戻ろうよ! もうすぐお昼だし、それに早くジャーキーを食べたいよ!」
「よし、それなら戻ろう」
オレはライラの手を取り、ホテルへと向かって歩きだした。
この時、オレたちはまだ知る由も無かった。
カリオストロ伯爵から貰った小袋に、命を救われることになるなんて……。
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