第37話 記念写真
ギアボックスに来て3日目の朝。
オレたちはギアボックス駅の掲示板を見て、目を見開いた。
『大陸横断鉄道アークティク・ターン号についてのお知らせ。列車のメンテナンス作業が終了しました。本日夕方5時に、ギアボックスを出発予定となります。ご乗車になられますお客様は、夕方4時までに列車までお戻りください』
アークティク・ターン号の、出発が決まった。
「ビートくん!」
「ライラ、ちょうど今日ホテルをチェックアウトするから、2等車の個室に戻ろう。午後になると、戻ってきた人で混み合うかもしれない。それとスパナとレイラ、ミッシェル・クラウド家の人々にも挨拶に行かなくちゃ!」
「うん!」
オレたちはホテルに戻ると、さっそく動き出した。
チェックアウトを済ませて料金を支払い、荷物を持って2等車の個室へと戻る。
それほど荷物を持ち出していなかったこともあって、移動に時間は掛からなかった。
「荷物は、全部ある?」
「確認したわ! 全部あるわよ!」
ライラが確認すると、オレは頷く。
「さて、後はスパナとレイラ、ミッシェル・クラウド家の人々に挨拶をしに行かなくちゃ」
「ビートくん、レイラちゃんとミッシェル・クラウド家の人々はともかく、スパナくんは仕事に行っているんじゃないかしら?」
「そうだな……整備工場には入れないから……」
どうやったら、スパナにお礼と挨拶ができるのだろう?
スパナは整備士として、オレたちが乗るアークティク・ターン号を牽引する、センチュリーボーイのメンテナンスをしてくれた。オレたちのために、3日間も働いてくれたんだ。
そんなスパナに、一言も告げずにギアボックスを離れるのは、後ろ髪を引かれる思いだ。
オレが頭を悩ませていると、子供たちの声がホームから聞こえてきた。
「センチュリーボーイの連結作業があるって!!」
「すごい! 見に行こうぜ!!」
「最終点検もやるんだってさ!!」
子供が走っていく足音と声が、ホームからオレの耳に届く。
子供はいつでも、無邪気に走り回っていて、楽しそうだなぁ……。
……ん?
最終点検……?
「……そうか!!」
もしかしたら、これはチャンスかもしれない!
オレは、ライラの手を握った。
「ライラ、オレたちもセンチュリーボーイの連結作業を見に行こう!」
「えっ、どうして!?」
「いいから、急ごう!!」
オレはライラの手を引いて2等車から降りると、駆け足で先頭車両へと向かう。
そんなオレに、ライラは慌ててついてきてくれた。
「び、ビートくん! 待ってよぉ!!」
整備を終えたセンチュリーボーイが、ゆっくりと後進しながら、アークティク・ターン号が停車しているホームへと入ってくる。
いつ聞いても力強い蒸気の音が、頼もしく感じられた。
そしてホームには見物に来た乗客の他に、駅員や整備士たちが待機していた。
連結作業を行った後、出発前の最後の点検を、このホームで行うためだ。
この点検は、必ずホームで整備士たちが行うことになっている。整備士たちの作業を間近で見せることで、乗客たちに安心してもらえるためだ。また、もし万が一異常が見つかったとしても、その場で交換や修理ができる。
鉄道貨物組合で、オレはこの場面を何度も見てきた。
整備士がいるということは、もしかしたら……!
そしてそのオレの予想は、当たった。
「ライラ、あそこ!」
オレが指し示した先に、スパナがいた。
スパナはセンチュリーボーイの運転席から身を乗り出し、後方を確認している。赤と白の信号旗を手に、ホームにいる駅員と連絡を取っていた。
「スパナくん!!」
「思った通りだ。最後の点検にも、来てくれたんだ!」
センチュリーボーイが連結前に停車すると、スパナはセンチュリーボーイからホームに降り立った。そして何かを話しながら、再びセンチュリーボーイに信号旗で合図をする。センチュリーボーイが再び動き出し、ゆっくりとアークティク・ターン号に連結された。
センチュリーボーイが再び停車すると、蒸気が抜ける音がする。それを合図とするかのように、整備士たちが動き出した。スパナも信号旗を駅員に手渡し、整備士たちに混じって整備を開始する。
最終点検の、始まりだった。
ほとんどの乗客は、連結作業だけが目的だったらしい。
連結作業が完了すると、次々に列車へ戻っていった。
だが、オレたちの目的は、まだ終わっていない。
オレたちは整備士たちの作業が終わるのを、その場で最終点検を見守りながら待ち続けた。
最終点検が終わると、次々に整備士たちがホームに出てきた。
そして、機関士と機関助士そして車掌に完了の報告をしていく。機関士や機関助士、車掌から書類にサインをもらうと、整備士たちは整備工場の方角に向けて歩き出す。
オレたちも、動き出した。
「スパナ!」
「スパナくん!」
オレたちが声をかけると、スパナは振り返った。
工具箱を手に、右手には重そうなモンキーレンチを手にしている。
「よぉ! ビートにライラ!!」
スパナは工具箱とモンキーレンチを置くと、満面の笑みで、オレたちの名前を呼んでくれる。
オレたちは、スパナに駆け寄った。
「仕事中なのにゴメン! どうしても伝えておかなくちゃいけなくって――!」
「分かってるよ。今日の夕方5時に、アークティク・ターン号で旅立つんだろ?」
「そうなの! だから、出発前にお礼を云いたくって!」
ライラの言葉に、スパナはころころと笑った。
「お礼なんて、これが俺の仕事だからな……」
「スパナ、整備してくれてありがとう!!」
「ありがとう、スパナくん!!」
オレたちがお礼を告げると、スパナは少しだけ顔を紅くする。
「あ、ありがとよ! なかなか直接お礼を云われるなんて無いから、こっちとしても……頑張った甲斐があったぜ!」
スパナがそう云って、鼻の下を指ですすった。
「ビートとライラは、これから行かなくちゃいけない場所がある。整備士として、2人の手助けができたのなら、嬉しいぜ!」
「スパナくん……」
すると、ライラがスパナの前に立った。
そしてライラは、スパナの手を両手で握った。
「本当に、ありがとう。またギアボックスに来た時は、よろしくね」
「……!?」
スパナの顔は真っ赤になり、頭からセンチュリーボーイのように蒸気が出そうにまでなっていた。
こりゃ、オーバーヒートしていても、おかしくなさそうだな。
そう考えて、オレは笑いそうになった。
ライラが手を離すと、スパナは思い出したように、置いていた工具箱とモンキーレンチを手にした。
「じゃ、じゃあ俺は仕事がまだ残っているから、行くぜ!! また、手紙送ってくれよ!! じゃあな!!」
スパナは早口でそう告げ、整備工場の方に向かってホームを走っていく。
尻尾が左右にブンブンと振られていて、とても喜んでいることが分かった。
確かに、ライラのような美少女から両手で手を握られてお礼の言葉を掛けられたら、ほとんどの男は喜ぶよなぁ。
オレも未だに、ライラから当然両手で手を握られたら、ドキドキしてしまう。
そんなことを考えていると、今度はライラがオレの手を握ってきた。
「ビートくん、次はレイラちゃんとナッツさんとココさんのところに行かなくちゃ!!」
「わっ、待って!!」
ライラが駆け出し、オレは慌ててライラについていった。
ミッシェル・クラウド家の人々が滞在しているタウンハウスの住所は、昨夜訊いておいた。
住所さえ分かれば、後は道が分からなくても、人に訊けば教えてもらえる。
こうやってオレたちは、ミッシェル・クラウド家のタウンハウスまでやってきた。
「ここが……」
「タウンハウス……」
オレたちの前に現れたのは、真っ白な邸宅であった。立派な門の向こう側には、庭を挟んで真っ白な邸宅が建っている。庭はスポーツができそうなほど広く、一面芝生だった。
立派な甲鉄の門も、鍵が掛けられているかもしれない。
そう思って手を掛けてみたが、あっけなく開いた。
エントランスに続くであろう正面玄関の前まで移動すると、見計らっていたかのようにドアが開いた。
ドアの内側に、2名の従僕とセバスチャンが立っていた。ドアを開けたのは従僕らしく、従僕がドアの取っ手を握り締めていた。
「おや、ビート氏にライラ夫人ではございませんか」
「突然申し訳ありません。ナッツ氏とココ夫人にお会いしたいのですが……ご迷惑ですか?」
「今は来客対応中ですが、その後でしたら大丈夫ですよ。お2人については、忙しくても訪ねてきたら必ず通すように、旦那様から伺っております。どうぞ」
セバスチャンが、オレたちをタウンハウスの中に案内してくれた。
忙しくても、訪ねてきたら必ず通してもらえるなんて、オレたちはかなり優遇されている。
セバスチャンによって、オレたちは応接室の1つへと案内された。
そこでは、レイラが待っていた。
「ライラさんに、ビートさん!」
「レイラちゃん!!」
ライラは駆け出し、レイラに抱き着いた。
レイラもライラの動きを予測していたらしく、受け止めるようにしてライラを抱きしめた。
「旦那様にはお伝えしておきます。今しばらく、こちらにてお待ちください」
「ありがとうございます!」
セバスチャンが応接室を後にしてから、ライラが抱きしめていたレイラから離れた。
「今日はまたどうしたのですか?」
レイラが問う。
「実は、今日の夕方にギアボックスを旅立つことになったの」
ライラが答えると、レイラは一瞬だけ驚いた表情をしたが、すぐに元の表情に戻った。
「……そうでしたね。お2人は今、トキオ国を目指して旅をしている真っ只中。アークティク・ターン号の出発に合わせて動いていることを、すっかり失念していました」
「せっかく会えたばかりなのに、ごめんね……」
「気にしないでください。また会える日は来ます。それに、また銀狼族の村に手紙を送りますから」
レイラの言葉に、ライラは尻尾をブンブンと振る。
しばしの間、オレはソファーに掛けて、ライラとレイラのガールズトークに耳を傾けていた。
ナッツ氏とココ夫人がやってくると、オレたちはソファーから立ち上がった。
「やぁ、ビート氏にライラ夫人!」
「ナッツさんにココさん!」
ライラが駆け寄り、オレも後に続いて近づいた。
「突然訪ねてすみません。それと、昨日はご馳走様でした」
「いやいや、こちらこそ楽しいディナーを過ごせたよ、ありがとう!」
「今日はまた、一体どうしたの?」
ココ夫人から問われて、オレは目的を思い出す。
「実はですね……」
オレはアークティク・ターン号の修理が終わったこと。
トキオ国を目指すために、夕方5時にギアボックスを旅立つこと。
そのために、別れを告げに来たこと。
それらを、ナッツ氏とココ夫人に話した。
「そうか……また旅に出ることになったのか」
「それで挨拶に来たなんて、律儀なのね」
「いやぁ、それほどでも……」
オレが答えると、ナッツ氏が口を開いた。
「そうだ! この後、記念撮影をしていくことになっているんだが、ビート氏にライラ夫人も、共にいかがかね!?」
「記念撮影……?」
「素敵!!」
ナッツ氏の提案に驚くオレの隣で、ライラが叫んだ。
「ビートくん、写真を撮ってもらえるなんて、滅多にないことじゃない!!」
「それはそうだけど、写真は現像に時間が掛かるんじゃ……」
詳しいことまでは知らないが、写真の現像に時間が掛かることは、オレも知っていた。
グレーザー孤児院で集合写真を撮影した時、写真屋さんが出来上がった写真を持って来たのは、数日後だった。今のオレたちには、その数日間を待っているような余裕はない。夕方5時には、もうギアボックスを旅立つことが決まっているためだ。
「大丈夫だ、心配することはない!」
ナッツ氏は自信満々に告げる。
「ひいきにしている写真館があるんだ。そこなら撮影してから1時間で現像して、手渡ししてくれる。とても腕のいい写真技師が居るから、安心して撮影できるぞ! もちろん写真代はこちらで持とう!!」
「ビートくんにライラちゃん、きっといい写真が撮れるわ。それに、いつでも私たちの姿が見れるし、いいお守りにもなるはずよ」
写真代を出してくれる。
それに1時間で、写真を現像して渡してくれる。
こんな機会は、滅多にない。そもそも写真を撮影することさえ、今までオレたちにはほとんど無かったのだから。
「そ……それじゃあ、お願いします!!」
オレはナッツ氏とココ夫人に、頭を下げた。
オレたちは、ミッシェル・クラウド家の人々と共に、ギアボックスにある写真館へと足を踏み入れた。
実用一辺倒な造りと見た目の建物が多いギアボックスの中でも、写真館は優雅さや見た目の美しさを重視する西大陸のような造りになっている。
「ここが、ギアボックスで最も腕のいい写真技師がいる写真館、レイコ写真館だ」
ナッツ氏から云われ、オレとライラは生まれて初めて、写真館に足を踏み入れた。
写真館という名の通り、壁にはいくつもの写真が額縁に入れて飾られている。壁だけでなく、肖像画のように撮影された大きな写真が、ソファーに置かれたりもしていた。
「ビートくん、色々な写真があるね」
「うん。まるで美術館みたいだ……」
ナッツ氏の後に続きながら、オレたちはいくつもの写真を見て行く。
夫婦らしき男女を写したもの。家族を写したもの。子供ひとりだけを写したもの。何かの集合写真……。
多種多様な人々を撮影した写真を見ながら進んでいくと、獣人族栗鼠族の男性が待っていた。
「いらっしゃいませ。ミッシェル・クラウド家の方々でございますね?」
「そうだ。今回もよろしく頼む」
「かしこまりました。……ところで、そちらの少年と少女は……?」
栗鼠族の男性が、オレたちに視線を向けた。
「私の友人たちだ。ビート氏にライラ夫人だ。今回は集合写真と共に、ビート氏とライラ夫人のツーショットもお願いしたい」
「かしこまりました」
ナッツ氏の言葉に、栗鼠族の男性は頷いた。
「レイコ写真館へようこそ。私が写真技師のクリールです。これから写真撮影に入りますので、どうぞよろしくお願いいたします。必要なことは全て、こちらで指示しますので、安心してくださいね」
「は、はい……」
「よろしくお願いします!」
オレはまだ緊張が抜けなかったが、ライラはすでに緊張はなくなっているようだった。
その後、オレたちは写真撮影をすることになった。
最初にナッツ氏を始めとしたミッシェル・クラウド家の人々と、レイラを交えての集合写真を撮影した。集合写真の後に、今度はオレとライラのツーショット写真を撮影した。
クリールからは衣装を着ての撮影も勧められたが、オレたちは衣装を着るという考えがそもそも無かったため、丁重に断った。写真を撮影してもらえるだけで、十分だった。
「お疲れ様でした。それでは、これから現像に取り掛かりますので、今しばらくお待ちください」
写真撮影が終わると、クリールはカメラから筒状のものを取り出した。
あれがきっと、フイルムというものだろう。あの中に、撮影したオレたちの写真の元となるものが入っている。
クリールはフイルムを手に、写真館の奥へと消えていった。
そして現像が終わるまで、オレたちは控室で待つことになった。
「ビート氏にライラ夫人、写真撮影はどうだったかね?」
ナッツ氏の問いに、オレたちは答えた。
「少し緊張しました」
「楽しかったです!」
オレとライラが答えると、ナッツ氏は満足げに頷いた。
「それは良かった! こちらとしても誘って本当に良かった!! 後は写真が仕上がるのを待つだけだ!!」
「いい写真に仕上がっていると、いいですね」
「ビートくん、きっといい写真に間違いないわよ! だって、わたしが写っているんだから!」
ライラの言葉に、ナッツ氏とココ夫人が笑った。
「うむ、それは間違いなさそうだ!」
「そうね。ライラちゃんが写っている写真なら、間違いなくいい写真になるわ」
「えへへ……ありがとうございます!」
ライラが嬉しそうに尻尾を振り、オレはライラが褒められたのに、まるで自分が褒められたような気分になった。
「お待たせいたしました」
1時間後。
クリールが仕上がった写真の入った封筒を手に、やってきた。
「こちらが、集合写真です。そしてこちらが、ツーショット写真になります」
「確認しよう」
ナッツ氏が封筒を受け取ると、封筒を開けてその場で中身を取り出した。
何枚かの写真を取り出して、じっくりと見つめていく。
全ての写真に目を通した後、ナッツ氏は満面の笑みになった。
「ビート氏にライラ夫人、君たちも確認しておくれ」
ナッツ氏はそう云って、オレたちに手にしていた写真を手渡してくれた。
「「!!」」
写真を見たオレたちは、目を見張った。
ライラと一緒に写された、ツーショット写真。
そしてミッシェル・クラウド家の人々とレイラと共に写された、集合写真。
その2種類の写真は、ぼやけたりすることなく、綺麗にその瞬間を記録していた。
写真って、ここまで綺麗にその時々を残せるものだなんて、本当にすごい。久しぶりに見たせいだろうか、まるで魔法のようだ。
こんなに綺麗に、ライラを撮影できるなんて……。
オレも、カメラが欲しくなってきた。
「いかがかね?」
「すごいです! わたしとビートくんが、こんなにも綺麗に!!」
「素晴らしい出来栄えです! ありがとうございます!!」
オレたちが答えると、ナッツ氏は満足げに頷いた。
そしてオレたちに、ツーショット写真と集合写真を、それぞれ2枚ずつ手渡してくれた。
「1枚はお守りとして、もう1枚は帰ってから、アルバムに入れたり額縁に入れて飾ったりすると良いだろう。私たちも、ミッシェル・クラウド家のアルバムにそれぞれ1枚ずつ、入れさせてもらうよ」
「これで私たちに会いたくなった時は、いつでも写真を通して会うことができるわ」
ナッツ氏とココ夫人の言葉に、オレとライラは笑顔になった。
これで写真代までミッシェル・クラウド家が負担してくれるのだから、本当に感謝しかない。
「ナッツさん、ココさん……本当にありがとうございました!」
「ありがとうございました!!」
「いやいや、君たちはもう我々の家族のような存在だ。いつでも、力になろう!」
ナッツ氏の言葉に、オレとライラは再び頭を下げた。
そして夕方5時。
ギアボックスの駅で、センチュリーボーイが汽笛を鳴らした。
出発時刻の到来を告げる汽笛の後、車輪が空転してから、線路をガッチリと掴んで動き出した。
アークティク・ターン号が、オレたちを乗せてギアボックスを出発し、次の停車駅であるアンプに向かって走り出す。
その様子を、オレたちは2等車の個室から眺めていた。
「ギアボックスとも、またお別れだな……」
「うん。でも、スパナくんにもレイラちゃんにも、ナッツさんとココさんにも会えたね」
ライラがオレの隣で云う。
「そういえば、貰った写真は?」
「あれは大切なものだから、封筒に入れて旅行カバンの隠しポケットに入れておいたわ」
ライラはそう答えた。
オレはツーショット写真だけ手帳に挟んでおき、集合写真は旅行カバンに封筒ごと入れておいた。しかしライラは、どっちも旅行カバンに入れてしまったらしい。
「良かったの? せっかく貰った写真なのに、しまっておいて……」
「うん。いつでも取り出せば見れるから! それに……」
むにゅん。
ライラがオレの腕に抱き着き、その豊満な胸がオレの腕に食い込んできた。
「いつでも隣にビートくんが居るから、写真はビートくんが居ないときに見ることにするの!」
「あうう……」
ライラの言葉は、半分くらいオレの耳に届かなかった。
食い込んできた胸に、オレの意識は持っていかれてしまったためだ。
そんなオレたちを乗せて、アークティク・ターン号は夜の闇を駆け抜けていく。
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