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幼馴染みと大陸横断鉄道~トキオ国への道~  作者: ルト
第2章 ギアボックスへの旅路
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第30話 ギアボックスへの到着

 ポォーッ、ポォーッ、ポォーッ!!


 センチュリーボーイの汽笛が、複数回鳴り響いた。

 食堂車で朝食を食べていたオレとライラは、その音に気づいて前方を見た。


 前方に、大きな街が見えてくる。

 ギアボックスだと、オレはすぐに分かった。



 東大陸最大の街、ギアボックス。

 街のほぼ中心部に空いた大きな竪穴のエンジン鉱山からは、多種多様なエンジンが発掘されている。エンジンの他に使えるものを掘り出し、それを工場で加工して作り直すことにより、ギアボックスは東大陸の工業の中心となっていった。現在の東大陸の経済の半分近くが、ギアボックスによって支えられている。

 住んでいる人の半分は労働者で、残りは労働者を雇う雇用者や商人、それらの家族で構成されている。大きな大学や図書館もあり、文化的にも進んでいる。

 交通の要衝でもあることから、鉄道以外に船や駅馬車もギアボックスに立ち寄る。



 ギアボックスに初めてやってきたのは、ライラの両親を探している途中だった。

 以前からギアボックスについては新聞や人の話で聞いてはいたが、実際に訪れるのは初めてのことだった。そこでオレとライラはスパナという友達に出会い、レイラの就職が決まり、オールとも再会した。

 思い出すだけで、1日を使ってしまいそうなほどに濃厚な時間を、ギアボックスで過ごした。


「ビートくん、ギアボックスに着いたら、何をする?」

「スパナとレイラに会いに行こうと思うけど、どう?」


 オレがそう提案したのには、理由があった。

 銀狼族の村に居た時に、スパナとレイラからそれぞれ手紙が来た。スパナからの手紙には、念願の整備士になってギアボックス駅の整備工場で働いていることが書かれていた。そしてレイラからの手紙には、クラウド茶会のギアボックス支店で今も経理の仕事を続けていると、書かれていた。

 スパナとレイラは、共にギアボックスに居る。せっかくギアボックスまで来たのだから、2人に会いに行くのがいいだろうと、オレは考えていた。


「スパナくんとレイラちゃんに!? 会いたい!!」


 ライラが尻尾を振りながら、同意する。


「ビートくん、ギアボックスに到着したら、すぐに会いに行こうよ!!」

「まぁ、待って待って。スパナとレイラの予定が、まだ分からないよ」


 スパナとレイラも、仕事をしている。

 出勤していて家にはいないかもしれないし、もしかしたら会うのが難しいかもしれない。

 どうなのかは、ギアボックスに到着してからでないと、分からないことだ。


「まずはギアボックスで一時下車してから、スパナとレイラの予定を確認しに行こう」


 オレはそう云って、トーストを口に運んだ。


 アークティク・ターン号は朝日の中を、ギアボックスに向けて走り抜けていった。




 アークティク・ターン号が市街地に入ると、スピードを落とし始めた。そしてそれまでは一線しか敷かれていなかった線路が、2線3線と増えていき、多くの列車が行き交うようになってくる。すれ違う列車は貨物列車か、街のあちこちに人を運ぶ通勤列車のどちらかが多い。

 ちょうど今は、通勤ラッシュの時間帯だ。道路も今は、仕事場に向かう労働者たちが行き交い、どこを見ても人だらけだ。


「これからみんな、お仕事なのかしら?」

「仕事の人もいるし、夜勤で帰る人もいると思うよ。パン屋でパンを買って行く人は仕事じゃないかな?」

「子供は学校に行くのかしら?」

「きっとそうじゃないかな。中には働きに出る子供もいるみたいだ。あの子は、工具箱を持っているから仕事かもしれないな」

「あの子、お弁当を持って走ってる! お父さんに持っていくのかしら?」


 オレたちは窓から沿線の景色を見て、他愛のない会話を繰り返した。

 そんなことをしているうちに、前方にギアボックス駅が見えてきた。




 ギアボックス駅にアークティク・ターン号が入っていくと、さらにスピードが落ちていく。

 大陸横断鉄道専用ホームに、ゆっくりとアークティク・ターン号は入っていき、速度はいよいよ停止寸前にまでなり、人が歩くよりも遅い速度まで落ちていった。


 そしてその場に置かれるかのように、静かにアークティク・ターン号が停車した。


「ギアボックス、ギアボックスに到着いたしました!!」


 駅員や車掌が停車駅の名前を告げ、乗っていた人々の多くが流れるようにホームへと飛び出していく。

 オレたちは人でごった返すホームを見て、人が少なくなってきてから、少しの荷物を手に列車から降りた。


「あっ、ビートくん!」


 ライラがオレの名前を叫び、ホームの奥を指し示す。


「カリオストロ伯爵だ!」


 そこに居たのは、カリオストロ伯爵だった。

 付き添いの人などは見当たらない。どうやら1人のようだ。今日も貴族が着る高そうな服に身を包み、剣を腰に差してホームを進んでいく。どこへ行くのかは、分からない。

 ちょっと、声をかけてみようか。


「あ、あの、伯爵――」


 オレは声をかけるが、カリオストロ伯爵はこちらに気づくことなく、改札の方へと歩いていった。歩くのはとても早くて、追いかけようとしてもすぐに離されてしまうと思って、オレは追いかけなかった。


「行っちゃったね……」


 ライラの言葉に、オレは頷く。


「カリオストロ伯爵には、お世話になりっぱなしだったなぁ……」

「なんだか、カリオストロ伯爵って不思議な人よね」

「うん。神出鬼没っていうんだっけ? 一体、何者なんだろう……?」


 カリオストロ伯爵。

 掴みどころがなく、考古学に詳しくて、様々なことを知っている大食漢の貴族。


 どことなく飄々としていて、まるで風のような人だ。

 どこから来て、どこへ行くのか。

 それを知っているのは、カリオストロ伯爵本人だけなのだろう。


 またどこかで、会えるような気がした。




「さて、これからスパナに会いに行こうか? それともレイラに会いに行こうか?」


 オレはライラに向き直り、問いかける。


「ライラは、どっちがいい?」

「そうねぇ……」


 ライラとオレが考えていると、懐かしい声が飛んできた。


「よぉ、ビートにライラじゃねぇか!!」


 その声に振り返ったオレたちは、あっと息を飲んだ。




 作業服に身を包んだ、獣人族黒狼族の少年、スパナが立っていた。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます!

感想、誤字脱字、ご指摘、評価等お待ちしております!

次回更新は1月8日の21時となります!


明日からは第3章に突入します!

ビートとライラのギアボックスでの日々は、どうなるのでしょうか?

乞うご期待!

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