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幼馴染みと大陸横断鉄道~トキオ国への道~  作者: ルト
第2章 ギアボックスへの旅路
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第20話 駅馬車強盗

「駅馬車強盗だ!」


 オレはライラの手を取り、駅馬車の影に身を隠す。

 直後に、弾丸が飛んできた。


「大人しく金庫をよこせ! そうすれば命までは取らない!!」


 ウソつけ!!

 強盗がそう警告してくるが、オレは信じたりしなかった。


 そうやって金庫だけ持っていくように見せかけ、金庫を差し出したら皆殺しにするつもりだろう。

 皆殺しにした後に、持ち物を奪っていく。

 強盗の常套手段だ!


 オレはライラに向き直った。


「ライラ、オレが奴らを引き付ける。その間に、騎士団を呼んできて!」

「うん! ビートくん、気を付けてね!」


 オレは頷くと、御者台にあった旧式ライフルを手にした。

 トリガーガードと一体になったレバーを動かし、弾丸を薬室へと送り込む。

 何発入っているか分からないが、役には立つはずだ。


 ライラに目で合図をすると、ライラは頷く。

 その直後、オレは馬車の影から強盗に向けて引き金を引いた。


 バァン!

 バァン!

 バァン!


 連続して引き金を引きつつ、同時にレバーを動かす。

 新式ライフルよりも、旧式ライフルは連射能力は上回っている。


「うわっ!」

「野郎!!」


 すぐに強盗たちも応戦し、銃を撃ってくる。

 ライラがいた場所を見ると、ライラはすでにいなくなっていた。近くで倒れていたりもしない。


 さすがはライラ。上手いこと、騎士団を呼びに行った。

 よし、オレもできるかぎり、強盗たちの戦力を削いでおくとするか!


 オレは再び、旧式ライフルを構えて引き金を引いた。




 しかし、弾切れは思っていたよりも早くやってきてしまった。


「くそっ、もう切れたのか!」


 オレは旧式ライフルを捨てると、ソードオフに持ち替えた。

 旧式ライフルよりも装填できる弾丸は少ないが、威力は旧式ライフル以上だ。


「いくぞ!!」


 強盗たちのうち何人かが、動き出した。

 バカめ。勝負がついたと思っているな。


 オレは動き出した強盗に、ソードオフを撃った。


「ぎゃあっ!!」

「ぐあっ!!」


 散弾を食らった強盗は、次々に倒れていった。


「ひいいっ!!」


 運よく散弾を食らわなかった強盗は、悲鳴を上げて撤退していく。


「ショットガンメッセンジャーがいるぞ!」

「くそう、どこに隠れていやがった!?」


 強盗たちが動揺し始める。

 やっぱり、強盗に対してソードオフはかなりの抑止力となるようだ。

 この銃を手に入れておいて、本当に良かった。


「違う! さっき獣人女と共に逃げ込んだ、あのガキだ!」


 ダミ声が聞こえ、オレは馬車の影から様子を伺う。

 葉巻を加えた髭面の強盗が、周りにいる強盗たちに云っていた。


「あのガキが、ショットガンを隠し持っていたんだ。おい、何人やられた!?」

「5人です!」

「なかなかやるじゃねぇか、あのガキ。冒険者か傭兵の経験があるようだな」


 どっちの経験もないですよ。

 オレは毒づく。


「あのガキを何が何でも殺せ! 他の奴らは無視して構わん!!」

「親分! なんであんなガキ1人にそんな……!」

「やかましい! あのガキは1人だけで5人分の戦力はある! 旧式ライフルもショットガンも、動きがお前たちとは違う! 本物の戦場をくぐり抜けてきた動きだ! 早く殺さないと、騎士団を呼ばれてこっちがおしまいだ!」


 へぇ、そこは分かるんだ。

 あの親分、そういうところは見る目があるんだな。


「殺すには惜しいが、邪魔するようなら容赦しない。リロードの瞬間がチャンスだ。ぶっ殺せ!!」


 親分が部下たちに、そう命じた。

 本気で、オレを殺すようだ。


 だが、ここで死ぬわけにはいかない。

 オレはライラを1人残して、死ぬわけにはいかないんだ!


「やられて……たまるか!」


 オレはソードオフを再び撃つ。

 強盗とオレの間で、再び銃撃戦が始まった。




 オレはリボルバーの回転式弾倉を取り外し、新しいものに交換した。

 足元には、いくつもの回転式弾倉が落ちている。もう30発は撃っているはずだ。


 そろそろライラが戻ってきてもいい頃だが、何かあったのだろうか。

 ライラのことだから、必ずオレのところに戻ってくるはずだけど……。


 だが、今はライラのことを考えている場合ではない。

 この手強い強盗たちを、なんとかしなければ!

 早くしないと、他の馬車も襲われるかもしれない。


「よし、こうなったら馬を撃つしかない!」


 オレは狙いをそれまで撃ってきた強盗から、強盗たちの馬に切り替えることにした。

 手綱を撃って切り落とせば、強盗たちは馬を制御できなくなって機動力が落ちるはずだ。


 リボルバーで手綱を狙うのは、難しい。

 だが、やるしかない!


 オレは慎重に狙いを定めて、引き金を引いた。


「うわっ!?」

「わあっ!?」


 手綱が切れ、馬が暴れ出して強盗が馬から落ちていく。

 よし、上手くいった!


「ぐあっ!!」

「ぎいっ!!」


 馬から落ちたところを狙おうとしたが、強盗の様子がおかしい。

 腕や足を抑え、苦痛に表情を歪ませている。落ちた程度で、あそこまで痛みを感じるなんて、おかしい。

 もしかしたら、骨を折ったのかもしれない。


 オレのその予想は、当たった。


「お、折れた……!」

「野郎……俺の右腕を……!」


 右腕が変な方向に曲がったり、立てなくなった奴らが居る。

 少し可哀そうだが、もうこれで戦力にはならないはずだ。


 見たところ、残った強盗はあと6人ほど。

 うち1人が親分だ。

 もうほとんど、勝ち目はないだろう。


「動くな!!」


 オレは叫んで、馬車の影から出てきた。

 リボルバーの銃口は、親分に向けたまま動かさない。


 いつでも撃てる。

 オレができる、警告方法だ。


「無駄な抵抗は止めろ!! 大人しく武器を捨てて投降しろ! これ以上、オレは命を奪いたくはない!」


 もうすでに、かなりの数の強盗が撃たれて戦闘不能になっていた。

 できることなら、オレは命を奪うのは避けたい。

 甘い考えであることは十分に分かっている。それでもオレは、血が流れるのをこれ以上見たくはない。


 戦える強盗も、そのほとんどがオレに怯えて戦う気力が無くなっていた。

 ここで死ぬくらいなら、大人しく投降して監獄行きになったほうがマシだ。

 オレは強盗たちが、そう考えてくれるのを願っていた。


 オレと強盗たちの間に、静寂が流れる。

 その静寂を破ったのは、葉巻をくわえた駅馬車強盗のリーダーだった。


「野郎……!!」


 リーダーは足元に葉巻を落とすと、踏みつけて火を消した。

 踏みつけられた葉巻は、原型が無くなるほどグシャグシャになっていた。


「俺の部下をここまで痛めつけるとは、ガキのくせにやるじゃねぇか!!」

「さっさと武器を捨てろ!!」

「フッ……分かったよ」


 リーダーは両手を上げ、リボルバーを足元に落とす。

 よし、どうやら投降してくれるようだ。


「……なんてことがあると、思っていたのか?」

「はっ?」


 リーダーの言葉にオレが首をかしげると、リーダーが袖口から細身のナイフを取り出した。


「とうっ!!」

「うわっ!?」


 そのままオレに向かって、ナイフが飛んでくる。

 ギリギリで避けられたが、これが命中していたら危なかっただろう。


「殺すには惜しいが、生かしておくわけにはいかねぇ! ぶっ殺せ!!」


 くっ、交渉決裂だ!

 オレはリボルバーの銃口をリーダーに向け、撃鉄を下ろして引き金を引いた。


 しかし、撃鉄はカチンという乾いた音を立てただけで、弾丸は発射されなかった。


「くそっ! 弾丸切れだ!!」


 その言葉を、リーダーは聞き逃さなかった。

 目がキラーンと光ったと思うと、オレの足元に弾丸が飛んできた。


「うわっ!!」


 オレは慌てて馬車の影に避難する。

 オレが身を隠した馬車には、次から次へと容赦なく弾丸が撃ち込まれていく。


「野郎共! あのガキの首を持ってきた奴には、大金貨5枚だ!!」

「フーアー!!」


 さっきまで怯えていた部下の強盗たちも、勢いを取り戻したかのように銃を撃ち始める。

 完全に、形勢逆転された。


 オレは慌てて、予備の回転式弾倉を探した。

 しかし、もう1個も残っていなかった。


 ソードオフを使うにしても、ショットシェルも無くなっている。

 ボウイナイフはあるが、とてもこの状況では使えない。


「これまでか……!」


 弾丸は尽きた。

 手持ちの武器はナイフだけ。


 オレは打つ手が無くなり、死を覚悟し始めた。




 そのとき、聞き覚えのある声が聞こえてきた。




「ビートくん!!」


 その声に、オレは立ち上がる。

 強盗たちとは反対の方角から、ライラが戻ってきた。


「これを、受け取って!!」


 ライラは叫ぶと、オレに向かってリボルバーを投げてきた。

 リボルバーは吸い寄せられるように、オレの手元へと落ちてくる。


 オレはそれを受け取り、回転式弾倉を確認する。

 6発全ての薬室に、弾丸が込められていた。


「ありがとう、ライラ!!」


 残っている強盗の数は、リーダーを含めて6人。

 イチかバチか、やってやる!!


 オレは覚悟を決めて、馬車から飛び出した。


 バァン!

 バァン!

 バァン!

 バァン!

 バァン!

 バァン!


 そして転がりながら、連続してリボルバーを撃った。

 最後の弾丸が発射された瞬間は、時が止まったように感じられた。


「ぐ……ぐぐぐ……!!」


 オレが最後の弾丸を撃ったと同時に、銃声が止んだ。

 残っていた強盗たちは、全員が馬から転げ落ち、銃を手放していく。


 最後にリーダーが馬から降りて、持っていたリボルバーが地面に寝転がった。


「やったぁ……!!」


 なんとか、6発の弾丸で仕留められた。

 そこに、ライラが駆けてくる。


「ビートくん! 大丈夫!?」

「ありがとうライラ。投げてくれたリボルバーのおかげで、助かったし強盗も仕留められたよ!」

「ビートくん、回転しながら撃つなんて、すごくカッコよかったよ! まるで映画みたいだった!」


 ライラが尻尾をブンブンと振りながら云い、オレは少しだけ顔を赤らめる。

 そんなに、カッコよかったかな?

 ライラがそう云うなら、きっと間違いではないんだろう……。




 その後、駆けつけてきた騎士団によって、強盗たちは治療を受けてから騎士団詰所へと連行されていった。

 強盗以外にケガをした人が出なかったのは、不幸中の幸いだったと、オレは思った。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます!

感想、誤字脱字、ご指摘、評価等お待ちしております!

次回更新はちょっと先の12月24日の21時となります!


プロットが尽きてしまったのと、執筆が追いつかないため、少しだけお時間をいただきます。

ご理解の程、よろしくお願いいたします。

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