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幼馴染みと大陸横断鉄道~トキオ国への道~  作者: ルト
第11章 北大陸の大嵐
133/140

第133話 過去の精算

「オーレリアとヘルガね!!」


 ライラが叫んだ。


「ライラね!?」

「そうよ! わたしはライラ。ビートくんの妻よ!」


 ライラ、最後の情報は必要なのか?

 オレが疑問に思っていると、オーレリアが口を開いた。


「あなたとあなたの両親のせいで、私たちは苦しい思いをしたのよ!!」


 オーレリアはそう云うと、これまでの出来事を語り始めた。




 私たち、オーレリアとヘルガは、東大陸で生まれたの。


 両親は銀狼族の村以外で暮らしている銀狼族の夫婦で、その間に生まれた姉妹が、私たちオーレリアとヘルガだった。私オーレリアが姉で、ヘルガが妹よ。

 生まれてから10歳になる頃までは、両親と共に平和に暮らしていたの。両親が読み書きと計算を教えてくれて、10歳を過ぎてからは、両親の仕事の手伝いをしていたわ。


 だけど、奴隷狩りが私たちの家を襲撃したの。

 銀狼族がいるとどこかで知って、奴隷として高く売れると思ったのね。その時は、家族全員が奴隷の身に堕とされると思ったわ。

 だけど、そうじゃなかったの。


 奴隷商人は、両親と取引をしたの。

 私たち姉妹を奴隷として売り飛ばせば、両親のことは奴隷にしないと。

 両親はそれを承諾して、私たちを奴隷商人に売り渡したわ。


 後から分かったんだけど、両親は年を取っていたから、奴隷としての利用価値が低くて商品にならない。だから商品として高値が付く、私たちを仕入れようとしたの。

 それにその時は、私たちの家も貧しかった。だから口減らしと、少しでも自分たちが生き延びるために、私たちを売ったの。


 その後、私たちは奴隷商人によって駅に連れていかれ、そこで輸送列車に載せられたの。奴隷商人がチャーターした列車で、他の多くの奴隷たちと一緒に南へと運ばれたわ。

 これで私たちの人生は終わった。輸送列車に揺られている中で、そう思ったわ。せめての希望は、同じ人に姉妹揃って買ってもらって、共に過ごせることだけだった。


 だけど、神様は私たちを見捨てはしなかった。


 奴隷商人の輸送列車が、盗賊団の襲撃に遭ったの。厳重な警備をしていたから、金目のものが多く積まれていると、盗賊団は考えたのかもしれないわ。

 奴隷商人は殺害され、奴隷たちは次から次へと混乱に乗じて逃げ出した。もちろん、私たちも逃げ出したわ。中には盗賊団に捕まった人も居たけど、奴隷商人でも盗賊団でも、捕まれば同じ運命が待っていると思ったの。

 必死で私たちは、工業都市のギアボックスを目指した。ギアボックスまで行けば、何か仕事があるかもしれない。姉妹で共に暮らしていけるかもしれないと思ったの。


 そんな中で出会ったのが、旅をしていたシャインとシルヴィだった。


 同族ということで、最初は助けようとしてくれた。

 でも、それもすぐに終わったの。


 2人は奴隷商人のアダムに追われていたわ。それに加えて、シルヴィはその時すでに妊娠していたの。

 一緒に逃げることはできないと、2人は持っていた武器とわずかなおカネだけを渡して、去っていった。


 そしてギアボックスで、ついに私たちもアダムに見つかった。

 シャインとシルヴィが置いていった武器があったけど、それはただの古いデリンジャーだった。弾丸も1発しか入っていないし、そもそも私たちは武器なんて扱ったことが無かった。使うとしても、自殺以外にどうやって使えばいいのか、分からなかったわ。

 奴隷になるくらいなら死のうと思ったときに、アダムがこう云ってきたの。


「シャインとシルヴィの追跡に協力してほしい。協力してくれるなら、命と身の安全は保障する。よく働けば、褒美もやろう」


 それに、アダムはこうも云っていたわ。


「武器とわずかなおカネだけを渡して、共に逃げなかった? それは君たちが同族であると知りながら、どうでもいい存在としか考えていなかったということだ。そんな薄情な同族、君たちにとってもどうでもいいのではないか? むしろ、自分たちを見捨てたシャインとシルヴィに復讐する、チャンスだと私は思うがね……」


 その言葉に、私たちは救われたわ。

 生きる希望さえ見失いかけていた私たちに、アダムは希望を与えてくれた。

 そしてシャインとシルヴィを、恨むようにもなったわ。当然のことよね。使えもしない武器と、あっという間に無くなってしまう金額のおカネ。これだけしかくれなかったの。これならまだ、何もくれなかったほうがマシだと何度思ったか分からないわ。


 それから私たちは、アダムの手先となってシャインとシルヴィを追跡した。2人がトキオ国に身柄を保護されたと知ると、アダムはノーゼル侯爵とロストダディ公爵を紹介してくれた。

 自分がトキオ国の貴族と接触すると、敵対しているミーケッド国王に気づかれる可能性があったの。だから間に私たちを挟むことで、気づかれにくくしたの。


 幾度となく情報を流し続けて、やがてトキオ国を攻める時が来たわ。


 導きの使徒と共に武装して、私たちもトキオ国に攻め入ったの。私たちはそこで、シャインとシルヴィ、そして生まれた娘のライラを殺そうとしたわ。

 だけど、それはできなかった。


 ミーケッド国王とコーゴー女王によって、トキオ国を脱出していたの。

 ミーケッド国王とコーゴー女王は、最後まで私たちの邪魔をしてくれたわ。シャインとシルヴィが行ってきたことも知らずに、大切な友人だとぬかしていたわね。さらにライラと同じころに産まれた、たった1人の王子まで託していたのだから、泣かせてくれるじゃないの。


 トキオ国が崩壊した後、私たちはアダムの命令で、シャインとシルヴィの行方を追ったわ。

 目標はシャインとシルヴィ、ライラを殺すこと。

 そしてアダムに、トキオ国王子ビートの首を差し出すことだった。


 でも、シャインとシルヴィもそれくらは対策していたわ。

 あっという間に私たちを巻いて、行方をくらませたの。ライラもビートも行方不明になって、どこにいるのか分からなかった。銀狼族の村に帰ることは間違いなかったけど、私たちは銀狼族の村がどこにあるかなんて、知らなかった。両親は最後まで教えてくれなかったし、北大陸にあるとは分かっていても、正確な場所までは分からなかった。


 そして少し前に、やっとビートとライラの居場所が見つかった。

 それからノーゼル侯爵とロストダディ公爵に連絡して、ビートに近づいたの。ビートを抑えれば、絶対にライラがついてくる。2人が揃ったところで銀狼族の村の場所を聞き出して、殺すつもりだったのよ。




「……時間はかかったけど、やっとライラ……それにビートを見つけたわ」


 話を終えたオーレリアが、オレたちに銃を向けてくる。

 それに同調するように、ヘルガも銃を取り出した。


「やっと恨みを晴らす時が来たわ!!」

「……ライラがいなければ、私たちの運命も変わっていたかもしれない。だから、シャインとシルヴィだけじゃない。ライラ……それにトキオ国の王子、ビートにも恨みがあるのよ。銀狼族の村の場所、教えてもらうわよ!」

「さぁ、云いなさい! 云わなければ、命は無いわよ!?」


 2挺の銃が、オレたちに銃口を向けている。

 だが、オレは全く怖くなかった。


「……ライラ、どうする?」

「答えなんて……最初から決まっているわ」


 ライラの言葉に、オレは頷いた。


「……分かった」


 オレたちの間に、言葉は多くなくてもいい。

 目と目だけで、考えていることは手に取るように分かる。


「「フンッ!!」」


 オレとライラは、同時に足をけり上げた。


「わっ!?」

「あっ!?」


 オーレリアとヘルガの手から、銃が離れる。

 宙に高く舞い上がった銃は、オレたちの背後に落ちていった。


「銀狼族の村の場所なんて、死んでも話すか!!」

「どうせ聞き出した後で、わたしたちを殺す気なんでしょ!? ビートくんもお父さんもお母さんも、誰も死なせないから!!」

「こ……この……!」


 ヘルガが、オレたちを睨みつけた。


「皆殺しにしてやるわ!!」

「「させるかぁ!!」」


 オーレリアの怒号に、オレとライラの叫びが響いた。




 もうここで、こいつらを始末するしかない。

 オレはそう思っていた。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます!

感想、誤字脱字、ご指摘、評価等お待ちしております!

次回更新は、8月21日21時更新予定です!

そして面白いと思いましたら、ページの下の星をクリックして、評価をしていただけますと幸いです!

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