表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幼馴染みと大陸横断鉄道~トキオ国への道~  作者: ルト
第11章 北大陸の大嵐
132/140

第132話 カリオストロ伯爵

「カリオストロ伯爵、あなたは一体……!?」


 オレがカリオストロ伯爵に尋ねようとした時、ノーゼル侯爵とロストダディ公爵が口を開いた。


「カリオストロ伯爵だと!?」

「なぜ生きている!? トキオ国崩壊の際に、運命を共にしたと聞いていたぞ!? さては偽物か!?」

「黙れ!!」


 ノーゼル侯爵とロストダディ公爵に向かって、カリオストロ伯爵が怒鳴った。


「ビート王子のお言葉を遮るな!! この不届き者が!!」


 カリオストロ伯爵の言葉に、ノーゼル侯爵とロストダディ公爵が怯んだ。

 確かに、すごい声量だ。いつも飄々としていたカリオストロ伯爵からは、想像もつかない怒号だ。鉄道貨物組合でさんざん怒鳴られてきたオレも、この声にはビクっとなってしまった。隣にいるライラに至っては、耳を塞いでいる。


「少しでも動いたら、容赦なく殺す! いいな!!」


 最後にそう怒鳴ると、カリオストロ伯爵はオレたちに向き直った。


「あの、カリオストロ伯爵、あなたは一体何者なんですか?」

「私は、かつて側近としてトキオ国で、ミーケッド国王とコーゴー女王にお仕えしておりました」


 その答えに、オレたちは耳を疑った。

 カリオストロ伯爵が、オレの父さんと母さんに仕えていた。そんな話は、シャインさんからもシルヴィさんからも、聞いたことが無かった。




 カリオストロ伯爵の告白に、オレは驚きのあまり、言葉を失っていた。

 しかし、ライラの言葉でオレは我に返った。


「ビートくん、どういうことか説明してもらおうよ!」

「そっ、そうだな!」


 そうだ。確認するなら今だ。

 ノーゼル侯爵とロストダディ公爵は、先ほどの怒号で怯んでいる。大きく見えた2人が、縮こまっていた。あの怯み方は尋常じゃない。きっと2人は、カリオストロ伯爵にトラウマを持っているに違いない。カリオストロ伯爵の背中を狙って、攻撃を仕掛けてくることはないだろう。オレたちは常に、カリオストロ伯爵の背後に目が向いているし、カリオストロ伯爵がそんなことでやられるようには思えなかった。


「……詳しい話を、聞かせてもらえませんか?」

「かしこまりました」


 カリオストロ伯爵は軽く頭を下げてから、オレたちの前に跪いて、話してくれた。



 カリオストロ伯爵の話によると、カリオストロ伯爵は元々、トキオ国の出身貴族だった。ただの貴族ではない。オレの父さんと母さん……つまりミーケッド国王とコーゴー女王に、代々仕える家柄の貴族だ。最も近い側近として、家令や執事に当たる立ち位置であったらしい。カリオストロ伯爵だけでなく、その親も祖父も曾祖父も……ずっと歴代の国王と女王にお仕えしてきた。

 当然オレが生まれたことも、シャインさんとシルヴィさんを助けたことも、ライラが生まれたことも知っていた。そしてもちろん、トキオ国の崩壊も……。


 カリオストロ伯爵は、そこでミーケッド国王とコーゴー女王と共に敵と戦い、運命を共にする覚悟であった。

 しかしその時、ミーケッド国王とコーゴー女王から最後の命令ともいえることを下された。

 それは『たった1人残していくビートに再会できたら、ビートの力になり、支えてほしい。そのために生き延びて天寿を全うせよ』というものだった。

 最後の命令に戸惑ったが、カリオストロ伯爵は自らの使命を思い出し、崩壊する王宮とトキオ国から脱出した。


 その後、生き延びているはずのオレを探し、グレーザー孤児院にいることを突き止めた。しかし、自分がアダムにマークされていたために、接触することができなかった。

 しかし、かといって何もしていなかったわけではない。カリオストロ伯爵は将来的にオレを支援するために、貴族としての肩書きと経歴、そして学歴をフルに活用した。考古学者として論文を書き、大食漢であることを活かして大食い貴族としても名をはせ、アダムがおいそれと手を出せないまでになった。


 ビートが銀狼族の村にいると知り、すぐに駆け付けようとしたが、カルチェラタンまで来た時にケイロン博士からビートのことを聞いた。

 アダムを倒してくれたビートを一目見ようと、サンタグラードまで赴いた時に、オレを見た。その時にミーケッド国王とコーゴー女王からの命令を思い出し、カリオストロ伯爵はオレたちと共に、アークティク・ターン号に乗り込んだ。

 その後は旅をしながら、オレたちを支えることに決めたのだった……。



「……そうか! だからだったのか!」


 カリオストロ伯爵の話が終わると、オレは声を上げた。


「オレたちが行く先々に、いつもカリオストロ伯爵がいた。神出鬼没な不思議な貴族だと思っていたけど、あれはオレたちを見守ってくれていたんだ!」

「そういうことだったの!?」

「はっ、左様でございます」


 オレの言葉にライラが驚き、カリオストロ伯爵が頷く。

 カリオストロ伯爵が、そんなことを考えながら動いていたなんて……。

 そういうことなら、全て理解できる。どうしてオレたちの行く先々で、カリオストロ伯爵がどこからともなく現れるのか。同じ列車で旅をしているだけではなかった。カリオストロ伯爵は、オレたちに目的をもって、近づいてきていたんだ。


「また、それと並行して、ノーゼル侯爵とロストダディ公爵の捜索と調査を行っておりました」

「あの2人の……?」


 オレは一瞬、ノーゼル侯爵とロストダディ公爵に目を向けた。

 表情に、焦りが浮き出ている。


 カリオストロ伯爵は立ち上がると、ノーゼル侯爵とロストダディ公爵を睨みつけた。


「こいつらは、トキオ国の崩壊に関わっているのです」

「ほっ、本当ですか!?」

「はい。確かでございます」


 オレの問いに頷くと、カリオストロ伯爵はノーゼル侯爵とロストダディ公爵に向けて、怒鳴った。


「我が主君、ミーケッド国王とコーゴー女王に背き、さらにビート王子を路頭に迷わせたこと。アダムと結託してトキオ国を崩壊に導き、多くの人命を奪ったこと。そして近衛兵団団長シャイン殿とその妻、シルヴィ夫人の娘ライラを引き離したこと、万死に値する! 探すのに時間と手間はかかったが、ついに見つけたぞ! 国賊め!!」

「トキオ国を崩壊に導いた……!?」


 アダムと結託して、トキオ国を崩壊に導き、多くの人命を奪った。

 カリオストロ伯爵は、確かにそう云った。


 この2人が、あのアダムと結託していただって!?


「でたらめだ!!」

「なぜ結託していたと分かるんだ!! 我々もあの時、トキオ国に居たんだぞ。お前と同じ、我々もトキオ国の貴族だったのだからな!!」


 ノーゼル侯爵とロストダディ公爵が、反論した。

 この2人も、トキオ国の貴族だったのか。


「銀狼族の2人の女だ!」


 カリオストロ伯爵が叫ぶと、ノーゼル侯爵とロストダディ公爵は、共に冷や汗をかいていく。


 銀狼族の2人の女……もしかして、オーレリアとヘルガのことだろうか?

 オレがそう思っていると、カリオストロ伯爵が続けた。


「オーレリアとヘルガの存在だ!」


 やっぱりだ、当たっていた。


「アダムがなぜ、トキオ国を襲って崩壊に導くことができたのか、私はずっと疑問だった。しかし、オーレリアとヘルガが、その疑問を解く鍵となった。貴様らはミーケッド国王とコーゴー女王が国民から慕われていることに嫉妬して、国を滅ぼしてトキオ国と国民の財産全てを奪おうとしていた。そこでトキオ国の内部情報を、トキオ国と対立していたアダムに、教えることにした。しかし、直接アダムに伝えると目立ってしまう。そこに現れたのが、シャイン殿とシルヴィ夫人を追いかけてきた、オーレリアとヘルガだった。オーレリアとヘルガが伝書鳩の代わりとして、アダムに情報を伝えた。その情報を元に、アダムに有利なようにことを進めていき、最後にはトキオ国を滅亡へと導いた。貴様らを許すことなど、絶対にできん!!」


 カリオストロ伯爵の言葉に、オレの中で怒りが燃え上がっていった。

 あのアダムと、この2人は結託していた。オレを不幸のどん底に叩き落すために、動いていた!!


「くっ……!」

「知っていたのか、カリオストロ伯爵!」


 いや、オレだけじゃない。


 アダムに殺された、父さんと母さん。

 銀狼族として狙われたシャインさんとシルヴィさん、そしてライラ。

 トキオ国で安心して暮らしていた多くの人々。


 これらの人を、不幸のどん底まで叩き落したんだ。

 許すことなど……できるわけがない!!




「許さない!!」


 オレは落としていたソードオフを、拾い上げた。


「よくも……オレの祖国を! そして父さんと母さん……多くの人の命を奪っておいて、のうのうと自分たちは生き残っている……絶対に許さない!!」


 ノーゼル侯爵とロストダディ公爵を、オレは睨みつける。

 アダムと結託していた、敵。

 たとえトキオ国の貴族だった相手だとしても、関係ない。


 アダムと手を組んだ時点で、オレにとって敵でしかないんだ!!


「地獄へ送ってやる!!」

「そうはさせないわ!!」


 オレがソードオフを構えた直後。

 女の声と共に、オレの手が鞭で叩かれた。


「ぐっ……!」


 オレの手からソードオフが離れ、背後に落ちた。


「誰だ!?」

「私たちよ!」


 ノーゼル侯爵とロストダディ公爵の背後から、2人の銀狼族の女性が現れた。

 間違いなく、オーレリアとヘルガだった。

 オーレリアが、鞭を持っている。オレの手を叩いたのは、オーレリアのようだ。


「ビートくん、あの2人がオーレリアとヘルガ!?」

「ああ、間違いないよ」


 ライラの問いかけに、オレは頷いた。

 鞭で打たれた右手が、まだ痛む。


「あなたがライラね!?」


 ヘルガが叫ぶと、ライラは顔を上げた。


「そうよ! よくもビートくんを鞭で叩いたわね!」

「それがどうしたっていうのよ……」


 すると、ヘルガが一歩前に歩み出た。


「あなたの両親のせいで、私たちがどれだけ苦労したと思っているの!!」

「どういうことよ!?」


 ライラがオーレリアとヘルガを睨んだ。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます!

感想、誤字脱字、ご指摘、評価等お待ちしております!

次回更新は、8月20日21時更新予定です!

そして面白いと思いましたら、ページの下の星をクリックして、評価をしていただけますと幸いです!


オーレリアとヘルガの過去には、一体何があったのでしょうか!?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ