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プロローグ

妹の叫び声が聞こえる。僕はドラゴンの爪と妹の間に滑り込む。


騎士はまだ来ないのか。僕たち農民が魔物に襲われた時に守ってくれるのが騎士ではないのか。

守ってくれるからいつも僕たちは作物を納めているのではなかったのか。

僕らがいつも自分の食事を減らしてまで作物を納めているのは一体何故だったのだろうか?


でも、そんなことはどうでもいい。今は妹さえ守れれば……

妹さえ生かすことが出来れば僕らを守るために真っ先に飛び出していった父、僕らをかばいながら死んだ母も報われる。妹は僕らの希望なのだから……


ドラゴンの爪が迫ってくる。もう逃げることはできない。

死ぬことは不思議と怖くない。僕の命で妹が助かるなら安いものだ。


輪廻というものがあるならば、来世も妹と巡り会えますように。

そう願いながら僕は妹を守れたことに安堵した。



そう、僕は忘れていたのだ。ドラゴンの攻撃方法は爪だけではないことを。

最も恐ろしい攻撃はその口から吐き出されるブレスであることを。



ドラゴンはその大きな口を開き、息を吸い込む。

一瞬ドラゴンの動きが止まる。

ブレスの前の硬直だ。騎士であればこの間に攻撃を加え、逆転を狙うらしいが僕はただの村の子供。

ドラゴンの目に射すくめられ、僕は一歩も動くことができなかった。



ドラゴンが口から見たこともないような炎を吐き出す。



一瞬、視界が霞む



僕がこの世で最後に見たものはドラゴンの爪に貫かれた自分の体とブレスに焼かれ、泣き叫ぶ妹の姿だった。


僕は命をかけても妹を守ることができなかった……



来世は大切な人を守れる力を得ることが出来ますように。

そう強く願いながら僕の意識は薄れていった。





◆◇◆◇◆




「……」

「…ら……じゃない?」


人の声が聞こえる。

僕は死んだはずなのに……


「ああ、起きたようだね」


今度はちゃんと聞こえた。

目を開けて情報を把握しようと努めて、ふと気付いた。



ドラゴンに貫かれたはずの体がもとどおりになっていることに。

そして、死んだはずの僕が生きていることに。


僕は生き残ってしまったのか……

妹は死んだのに…


「残念だけど、君も君の妹さんも死んでしまったよ」


そう言われても僕は体を持っている。


「ここは神界だからだよ。神界は人の魂が行き着く場所。全ての人はここで次の生を受ける、それまでの間仮初の体を与えられるのさ。人生の最後に完全な体をね」

そう言って僕の目の前に立つ青年は優しく微笑んだ。多分この青年は神なのだろう。一つ一つの仕草が美しい。


「言い忘れていたけど僕は創造神。しばらくの間よろしくね」

創造神様はそういって気障に笑った。

創造神様は全ての人が死ぬたびに会っているのだろうか。


「いや、僕は君が思っているように全ての魂に会っているわけではない。基本は転生神という別の神が仕事をしているのだよ。でも、君のように強い願いとともに死んだ、もしくは志半ばで死んでしまった魂には会うようにしているんだ。」


ああ、そうだ。僕は大切な人を守れる、強い力が欲しいと願ったんだった。


「僕ならば君の願いを叶えることができる。でも、僕にはそこへの道筋を作ることしかできない。実際に努力するのは君だ。どんな辛いことでも乗り越えて、その先へ行ける自信があるのなら、立ち上がり、僕の手を取りなさい。」


そう言って創造神様は僕に手を差し出した。

僕は迷わず立ち上がり、その手を取った。


「さぁ、試練の始まりだ」


創造神様のこの声とともに、僕の力を得るための試練(じごく)は始まったのだった。

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