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箱庭生活  作者: 暁月
3/4

 下町とは違う賑わいのある大通り。

 大通りに繋がる道に並ぶ露店から少し歩くと、今度は石壁の店を構えた商人達の集う広場へと出る。

 エミリアの住む下町から真っ直ぐ北へ向かえば学園のある通りへ、東側へ行けば交易の盛んな商業地区へと続く。ルイーザの住む住宅街は商業地区の南側の外れにある。

 エミリアとルイーザは広場の中央にある可愛らしいパラソルが数本立っている移動式のカフェへと足を運んだ。小さな移動式の車の先頭には車よりも大きな猫が眠そうに欠伸しながら繋がれている。この国では移動に使う車や荷台などは人力、馬、猫(大)であるが猫車は意外と珍しい。人や馬と違って気紛れな気質なので扱いが難しいのだ。

 けど、ここの店の子は大人しくて人が好きなのか子供たちが寄って来ても怒らない。むしろ好きなようにさせ、時々あの大きな尻尾で遊んでいたりする。

(遊んでる子供達が子猫みたいに見える)

 クスリとエミリアは笑みを浮かべながら見ていると、可愛らしいカフェには似つかわしくない野太い声がエミリアに話しかけてきた。

「やぁ、エミリアちゃん。この間はどうも。お陰様で女性のお客が増えておじさん嬉しいよ、また何かあったら手伝うからその時は宣伝込みで宜しく」

「こちらこそ、急なお願いを聞いてくれてありがとうございます」

 すっ、とエミリアは椅子から立ち上がりお辞儀をする。店主の大きな手が肩に置かれ直ぐに椅子に戻される。

「良いんだよ、おじさんこんなだからね。女性のお客が増えて本当に助かってるんだ、これはサービス」

 色黒でガタイの良いここの店主が真っ白な白い歯をキラリとさせテーブルに置くのは透明なガラスに注がれた冷たい紅茶と、薔薇の花のアップルパイが二皿。

 ごゆっくり~と、言いながら去る店主のガタイの良すぎる後ろ姿と可愛らしいエプロンがこの小さなカフェに似合わない。が、そのギャップが良いのかこの辺では密かな人気のお店だったりする。

「まぁ、本当。可愛らしわ」

 テーブルに置かれたパイをキラキラした瞳で見るのは向かいに座るルイーザ。

 いつもの不思議な模様の入った仮面はテーブルの上に置かれている。

「これが、さっきのお話に出てきた“薔薇の花のアップルパイ“なのね」

 ワクワクしながら小さなホークを手に取り、小さなパイをさらに小さくし口に運ぶ。

 その様子を見た周りの男性陣達は生唾を飲む様に凝視し顔を赤らめ、時に隣にいる女性から殴られたりしている。

(……あぁ~、失敗したかも)

 エミリアはポリポリと頬を掻きながら目の前で美味しそうに食べるルイーザを眺める。

 食べる為に外した仮面の下からは鬼神族独特の少し青白の肌でスッとした細い顔に、ふっくらした唇と垂れた大きな瞳と眉。

 額には小さな白い角が二本。

 黒い艶やかな長い髪がサラサラと大きな胸の上に落ちてくるのを、白い指で耳にかける仕草が男性心を刺激する。

 世に言う『ロリ巨乳』って、やつだろう。

 これで息子がいるのだから凄いと思う、ちなみにアランは母親のルイーザに似ている。特にタレ目な所とか。

「ふふふ、とっても美味しい。こんなに直ぐに食べれるとは思わなかったわ。このお店に卸しているのかしら?」

「はい、普段からここの店主さんには贔屓にしてもらっているので。最初はサービスだったんですが思いの外売れ行きが良かったみたいで今は期間限定で追加で卸しているんです」

「あら、期間限定なの?こんなに素敵なのに勿体ないわね」

 そう言ってルイーザはパイをパクりと頬張る。アランが大量に送ってきたリンゴはこの時季には珍しいリンゴだった。今は厳しい夏が終わりそろそろ秋になる。リンゴの旬は秋から冬、特に蜜の入った物は冬頃に店に並びだすが、今回のはたっぷりの蜜入りリンゴ。味も良いのでどこか特別な農園で作られていると思う。

 試しに普段見かけるリンゴで作ってみたが、美味しいのだけど何か物足りなかった。

 だからと言ってこれを定期的に売るとなると、売値が高くなってしまうので今回無料で手に入ったリンゴが終わる迄の期間限定なのだ。

「………ははは、そうですね」

 エミリアはコクリと紅茶を飲む。渇いた口の中に仄かな甘味と苦味を感じながら、彼女が食べ終わるのを静かに待つことにした。


 大量のリンゴのお礼として後日、ルイーザの家に訪問する約束をし2人は広場で別れた後エミリアは産業地区から南。東の森付近にあるヤマダさんの家に向かった。

 ヤマダさん家は木工店、先日借りた荷台のお礼へと足を運んだわけだけど………。

「ど、ど、ど、どどどどうしたら!!」

 店先で店主のヤマダさんは真っ青な顔をしなが出たり入ったりしながらオロオロしていた。

「…………こんにちは、ヤマダさん。先日のお礼にと伺ったんですが、…どうしたんですか?」

 エミリアがそう声をかけた瞬間。

「エ、エ、エミリアちゃ~~ん!!た、助けてくれ!妻がぁぁぁ!!」

 必死な形相で助けを求めるヤマダさんと共に店の上の居住空間へと急ぐ。


「………………!?」

 部屋の中心にあるソファーの上でヤマダさんの奥さんが苦しそうに大きなお腹を押さえていた。

 両の足の間からは大量の水が流れ出ている。

「もしかして破水してる!?」

 ヤマダさんの奥さんは臨月で初産だと言っていた。

「ぼ、僕はどうしたら!!?」

「………っ!ヤマダさんはとりあえず、熱い湯と清潔なタオルをいっぱい用意しておいて!私はお母さんを呼んで来るから!!」

 エミリアは即座そう判断し家に向かう。

 この国の人種は様々だ、獣人や鬼神、天使や魔族等が住んでいる。もちろん人間も。

 種族によって身体的に特徴が現れる種もいれば(鬼神族みたいに角や肌の色などね)部分的に現れる者もいる。

 中にはエミリアの様に人間とかわらず、ほんの少し力や匂いに敏感だったりするくらい。

 前者は種の血が濃く、後者は血が薄い。

 それは色々な種族同士で婚姻をする事が許されたこの国だから。子は両親のどちらかの遺伝子を受け継いで産まれてくるため一つの種としての血が薄くなっていくのだと言う。

 エミリアの場合、獣人族の父と人間族の母の間に産まれた。その為、嗅覚と筋力が普通の人間よりある方だと言える。

 ヤマダさん夫婦は二人とも人間族、それならば適任は母アンナしかいない。人間族であり何より、5人の子を持つベテラン母さんだから。

 問題なのは………。



「パン種なくなった!今すぐ追加で!」

「いやいや先ず先にこっちのペーストを……!」

「違う!違う!今足りないのは……」

「誰か買い出し行って来てくれないか!!」

 エミリアが店に戻ると地獄のような忙しさに更に拍車がかかって、灼熱地獄のようになった店がエミリアを待っていた。

 人数不足の厨房からエミリアの次兄が疲れた顔で出てきた。帰ってきたエミリアに気づくと小走りで近づき小声で聞いてくる。

「……母さんは?」

「ヤマダさんの奥さん、難産になるかもしれないって。2、3日は戻れないって言ってた」

 あの後、エミリアは店に戻り母アンナを連れてヤマダさん宅に着くとそのままルイーザの家へと向かった。母からのメモを受け取ったルイーザと共にまたヤマダさん宅へと向かってから戻ってきたところだ。

 兄は大きくため息を吐き、真剣な眼差しでエミリアを見つめる。

「オレはこのまま厨房内をまとめる、お前は母さんの代わりに店子を頼む!」

「えっ!?でも私一人じゃ……」

 兄の大きな手ががっしりとエミリアの肩に置かれた。

「大丈夫!お前は一人じゃない!あのロイドと言う良く分からん奴を上手く使え!!

 そして、アンちゃんにも宜しく!!」

「上手く使えって……ちょっ!」

 そう言って、次兄はさっさと厨房へ戻って行く。

 母が抜けた穴をまさかの妹に丸投げとはと思いながら店内へと足を向けた。

 厨房にいる兄は2番の兄。現在店長代理としてこの店を任されてはいるが実質、母であるアンナが全てを管理している。

 次兄は少し考えるのが苦手なので、作るのが専門。それでもこの店の次期店長としているのは次兄の奥さんが経営向きだからだと思う。

 本当ならここに居るはずなのだが今は子育てで忙しい。こちらの奥様も最近産まれたばかりの赤ちゃんとエミリア達の弟を見てくれている。

 なので、次兄は母アンナをヤマダさん宅に快く送り出した。父親になって何か思う事があったのだろうか?普段だったら反対していたと思う。

 でも、大人になるのは今じゃなくても良いと思うのは私だけだろうか?厨房横を通りすぎる時、悲痛な叫び声が中から聞こえたのはたぶん気のせい。

 エミリアは乱れた髪を整えてロイドともう1人、助っ人で急遽店子をやってくれている2人に声をかける。

「ただいま戻りました。ロイドさんアンジー」

 エミリアはアンジーに向けて微笑み、更に労いの言葉をかける。

「アンジー本当にありがとう。すごい助かるよこのお礼は後で絶対するから!!」

「良いのよ気にしないでエリー、友人が困っていたら手を貸すのが当たり前でしょ?」

 相変わらずのふわふわオレンジの髪を今日はひとつにまとめて、可憐な笑顔で周りの男達を虜にしているのは学友のアンジェリカ。

 ここ連日の忙しさのあまり、午前の図書館での勉強が出来なくなったことを伝えたら心配してわざわざ手伝いに来てくれた。

「まぁ!?白騎士様も?それはなんだか面白い展開に……」

 そんな台詞も聞こえなくはなかったが、2、3日前から手伝いに貴族街からきてくれている。

 そしてロイドさんはと言うと、店内でピンクオーラを出しながら今日も変わらず甘い文句を垂れ流し状態だ。

「あれ?奥さん今日も買いに来てくれたんですね。この新作が余程気に入って頂けたのでしょうか?それとも、この僕に会いに来てくれたのかな?」

 目をハートにさせた奥様は今日も更に追加で買っていく。

(お買い上げありがとうございます。もし良かったらそちらの殿方も一緒にお買い上げして下さい)

 エミリアは心の中で満面の笑みで勧める。

「おや?こちらのトレーが空になってしまったようだね?次を持って来るから待っててねお花ちゃん達」

 ロイドは空トレーを素早く集め奥に引っ込むと奥様方の黄色い声が大人しくなる。すると、すかさず次は野太い声の男性客達がカウンターへと殺到しだした。

「はぁ~い♪皆、順番に並ぼうね~。私の言う事聞かない人はお仕置きしちゃうよ~」

 その言葉に男性客達は綺麗に整列して行く。中にはお仕置きされ待ちもいるようでわざと列から外れている者もいる。

 ロイドのファンに加え、アンジェリカのファンも話を聞きつけ買いに来てくれている。

「…………ここパン屋さんなんだけどね」

 エミリアは乾いた笑いと共に温い目でそれを見ていた。


 連日の忙しさは変わらず数日が過ぎ。最初はロイド目当てのお客様が増え、次にアンジー目当てのお客様が増えた。

 二人の美男美少女の人気店員の噂は下町どころか貴族街にも届いていたそうでおかげで店の回転率が倍どころか倍々になり、大量のリンゴ達も破棄することなく消費出来そうで何よりである。

 ヤマダさん宅に行っていた母が戻ってくる2、3日後には完売するゴールが見えてきて本当良かった。

 ヤマダさんの奥さんは難産で予定より日がかかり、ルイーザとアンナが立ち会い無事に産まれた事をヤマダさんが昨日伝えに訪れてくれた。

 先が見えてきたことにやっと緊張の糸が少し緩み肩の力が抜ける。

 エミリアは他の商品を並べ直し空トレーを持って奥へ行くと店先と厨房のちょうど死角になった場所でロイドが仁王立ちで立っていた。さすが高身長、迫力が凄い。本当にどこかの門の両脇に建っていそうだ。

 どうやら休憩していたらしい……。

 最近、外だとロイドとアンジェリカのファンが待ち構えているそうでこの間ひと悶着があったとアンジェリカが言っていた。

 エミリアは気づかい振りをしながら通り過ぎようとしたが。

「おいぃぃ~チビッ子~」

 ガシッとエミリアの頭をロイドの大きな手に捕まれる。

「はヒィ!」

(ああ~忙しさに便乗して関わらないようにしてたのに)

 ロイドの顔は接客中の時の様に笑っているが目が怖い。余りの怖さに視線を避ければ「目玉固定すんぞ!」と脅された。

「このオレ様に労いの言葉が無いとは良い度胸だなぁ~。毎日毎日、こんなに貢献してるのに何もないとは………疲れたな~腹が減ったな~」

 怪しく光る瞳が怖い!

「うっ!……毎日ゴクロウ様です。で、でも、ロイドさんは好きでやってるから疲れないのかと思ってました…………」

「はっ?オレが好きでこんな事するように見えんのか?」

「えっ?違うんですか?」

「………………違うに決まってんだろ」

「えっ?じゃぁ何で?」

「……………………」

 エミリアは考える。

(まぁ、……ルイーザさん宅でもお店でもたまたま居合わせただけでリンゴ運ぶ時は確かに手伝ってとは言ったけど……お店の方は何だかんだで毎日来て手伝ってたから母さんに頼まれたか、好きでやってるのかと思ってたけど)

 チラッとロイドを見上げる。接客中のエセ笑顔は消えいつもの凶悪そうな切れ長の瞳がエミリアを見ていた。

 けれどいつものキレのある瞳は少しばかり疲れているように見える。

「あの、じゃぁ自己犠牲の精し……ぇぇィぃだぁ!!」

 ロイドの指がギリギリと音を絶てて頭にめり込む!

「そんなもんは持ってない!良いからオレ様を労え~」

「痛ぃぃ~離して下さい~!!」

「俺が満足するまで離さん!」

「酷い!!痛い!!」

 何がしたいのか良く分からない。満足したのか頭が解放され血の巡りが良くなった。

「酷すぎる………」

「ふん!」

(まったく……子供か!!)

 そう言えば……と、エミリアはエプロンのポケットに手を入れ探し物を見つける。

(子供にはこれよね)

「ロイドさん、ちょっと屈んで下さい」

「んぁ?」

「はい!口を大きく開けて~」

 エミリアはいつも弟達にするようにポイっと飴玉を一つロイドの口の中に放り込んだ。

「……………………」

「……………………」

 エミリアの行き場のなくなった右手がガシッと掴まれる。

 目の前にはガリガリと飴玉を食べる半眼のロイドの顔。

「………ごめんなさい」

「……その広いデコ出せ」

 恐る恐る、前髪をあげる。

 直後『ドゴッ!!』と、凄い音の後におデコに痛みが走る。

「いっ……!!?」

「次はもっと上手いもん寄越せチビッ子」

 頭突きをされたデコをさすりながら、店先に戻るロイドの背中を見送った。

「………だからって暴力は反対だよ!!!」

 エミリアは新しい弟達用の飴をポケットに忍ばせまた仕事にもどる。

 残り、後3日。



◇◇◇




 夏が過ぎ、これから秋の夜長がやってくる。ジリジリと肌を焼く暑さも流れる汗の鬱陶しさからもやっと解放されるそんな季節の到来を待ち望む王宮の東側。

 色々な芸術家達の卵が住む宿舎の食堂で最近ある噂が飛んでいる。


 “カプノスナイト(灰色の騎士)“達が動き出した。と。



 ◇◇◇



「カプノスナイト?」

 アランは本日の夕食、野菜のカレースープとモッチリとしチーズの入ったナンを食べながら隣に座る同僚へと聞き返す。

「そうだよ!お前知らないのか?カプノスナイトの事。王宮内じゃ結構有名だぞ?」

「俺……ここに来てまだ半年くらいだから」

「ああ、そう言えばそうか!じゃぁ先輩のドミニク様が教えてやるよ」

 ニカッと笑う青年ドミニクは赤茶色の少し長めの髪に薄い緑色の瞳を持ち。少し人懐っこい笑顔が先輩らしさを相殺させてしまっている。

 一緒にいるとアランのが先輩に見えることはしばしばあったりするがそれはさておき、ドミニクによるカプノスナイトによる話ははっきり言って何もなかった。

「………それは何もわからないと同じでは?」

「チッチッチッ、アラン君。そんなつまらない事を言ってはいけないな~。彼らは謎の集団何だから分からなくて当たり前なんだよ」

 人差し指を顔の前で振りながら何やらしたり顔で言っている。

「はぁあ、それでそのカプノスナイトが動くと何かあるんですか?」

 アランは食べ終わった食器を食堂の奥にいるおばさん達に預け三階の自分の部屋へと向かう。

「俺も聞いた噂だけど、カプノスナイトは軍や騎士団とは違った別の組織で王族からの命令で要人の暗殺や諜報活動をしてるとか!表には出せない汚い仕事してるとか、騎士の一人一人が軍一個隊の戦力だとか……今動いているのが“鮮血の白狼“だとかだなって、聞いてんのかアラン?」

 アランは自室に入ると数種類の色の付いた粉を棚から取り出し手袋とマスクをしガラス板の上で混ぜ始めた。

「聞いてますよ先輩。鮮血の白狼でしょ?」

「そう!その白狼が今下町に居るって噂何だってさ」

 ドミニクはアランの部屋のたった一つしかない椅子を占領すると、アランの手元にある色の着いた粉の小瓶で遊び始めた。

「下町に?また何でそんなところに噂の白狼が?」

「さぁ?なんでも商業地区の南東部にある森で不審な舟が見つかったらしくてそれがどうやら北の国の物じゃないかって噂」

 アランの手は幾つかの粉を混ぜ合わせ、不思議な色合いの油絵の具を作っていく。

 ヘラでテラテラと光る油を少しずつ足して程よい固さに仕上げていくのをドミニクはつまらなさそうに見ている。

「北の国?それは少し物騒ですね?」

「だろ?だから情報収集で白狼が動いているんじゃないかって噂が宮殿内に広がってるらしいよ?」

 アランは空のチューブに出来たばかりの油絵の具を詰めて、他に足りない色はないかと確認ししていく。

「はい、緑」

 ドミニクが渡してきた緑の粉の入った小瓶は中身が少し少なくなっていた。

「?」

「じゃ、俺は風呂に行くけどアランはどうする?」

「いえ、俺はもう少し作ってから行きます」

「そう?じゃあ足元に気をつけろよ。それと、またあの子の作ったパンも宜しく」

 ドミニクはそう言っていつもの様にアランの部屋から出ていく。

(足元?)

 ふと、足元を見れば緑の粉で地図がかかれていた。その地図には所々“דが書いてある。

 東の商業地区に幾つかあり、学園の周り、貴族街までその×は付いていた。

 普通ならそのまま中央の王宮を目指しているようににも見えるその×は外れの南東部にある森にもついている。

「あの人が動いているなら大丈夫だと思うけど……」

 アランは残った小瓶を棚にもどし、代わりに一枚の封書を開く。

 中にはカプノスナイト……灰色騎士の紋章の入ったカードが一枚。

 中の内容を確認するとカードは煙のように夜の闇の中へと消えていった。

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