表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/20

6 目撃者

 休憩の時間が終わり、私たち新入生はそれぞれの教室へと集められた。

 私とヒロインは同じ1クラス。

 そして何故かあのアルフォンス殿下まで同じクラスだったりする。

 クラスの人数はおよそ20人。

 席は爵位が高いほど前の席になっているので、もちろんアルフォンス殿下は一番前の席。

 ヒロインは一番後ろの席だ。

 ちなみに私は王家に次ぐ公爵家の令嬢なので一番前、そして王子の隣だ。


 一番前の席で腹黒王子の隣とかいったいなんのいじめだろうか?



「はーい!みんな注目!今日からこのクラスの担任になったルシール=クロッカスだよー!ルシール先生って呼んでね。みんなよっろしくー!」


 可愛い見た目だけど無駄にテンションの高いこの先生が私たちのクラスの担任だ。

 たしか木属性の魔力だったと思う。

 ゲームでルシール先生のことは知ってはいたけど、この人はずっとこのテンションなのだろうか?


「自己紹介をしてもらいところだけど、めんど・・・時間がもったいないから省略するね。」


 今絶対面倒って言おうとしたよね。

 それでいいのかルシール先生!


「早速だけど、ここにいるみんなはそれぞれ魔力を持っているからこの学園に入学してきたと思います。この学園は主に魔法について勉強して、みんなに正しく安全に魔力を扱えるようになってもらうのが目的です!座学もあるけど、実践が多いからみんな頑張ってね!もちろんテストもありまーす!行事もいーっぱいあるからきっと楽しいよ~。みんな、この学園生活を楽しみましょう!」


 ルシール先生の元気な学園紹介が終わると授業は明日からということで、今日は午前中で終わりのようだ。


「みんな明日から頑張ろうね~!」


 ルシール先生はにこにこと挨拶をしてさっさとクラスを出ていってしまった。

 それを見て生徒もパラパラと帰り始める。


 それにしても今日はほとんど話を聞くだけだったとはいえとても疲れた。

 あ、そういえば廊下を走り回ったんだった。

 忘れてた、忘れてた。

 しかも、学園では人目もあるから公爵令嬢らしくふるまわなければと気が張っているんだよね。

 本当に疲れる・・・。


「お疲れ様です。アリシア嬢。」


「お、お疲れ様ですわ。アルフォンス殿下。」


 終わったと思って気を抜いていたところに隣からアルフォンス殿下がいきなり話しかけてきて、ビクッと驚いてしまった。


「ふふ。そんなに構えないでください。とって食ったりしませんから。」


「おほほ。なんのことでしょう?」


 王子の言葉に私は令嬢らしく笑いながら言葉を返す。

 どうでもいいけど、令嬢に生まれ変わって初めて「おほほ。」なんて使ったな。


「そうでしたか。それならいいのですが。それではアリシア嬢、私はこれで失礼しますね。」


「はい。ごきげんよう。」


 私は笑顔がひきつらないようになるべくにこやかに挨拶をする。

「ごきげんよう」は家で何回も練習させられたから完璧のはずだ。

 ああ、表情筋が痛い。


「あ、そういえばアリシア嬢。」


「な、なんでしょう?」


 王子はこちらを向いたと思ったら、ぐっと顔を近づけると耳元でそっとささやいた。


「危険ですので廊下はあまり走らないようにしてくださいね。」


「へ?」


 王子はにこりと笑うと「それでは。」と言って教室を出ていった。


 ・・・。!


 み、みみみみみ、見られてたあぁぁぁぁ!


 私は心の中で絶叫する。

 せめて声に出して叫ばなかったことを誉めてもらいたいぐらいだけども。


 でもまさかあの場面を見られていたなんて。

 あれだけ誰にも目撃されないように祈っていたというのに、よりにもよって攻略対象のアルフォンス殿下に。

 ヒロインをいじめる私を見せつけなければならない相手に、非常事態だったとはいえヒロインと手を繋いで走っているところを目撃されてしまったとは、悪役令嬢としてなんたる不覚。

 事情を知らなければ、まるで私とヒロインが手を繋ぐほど仲良しみたいではないか。


 しかもわざわざ小学生の低学年に言うような注意をされたし。

 さすがにこの年になってそれは恥ずかしすぎるんですが。

 これでも前世の年齢プラス今世の年齢で、私の精神年齢は30歳は超えてるんですよ?

 12歳のガキンチョに廊下を走らないよう注意されるなんて、一体なんの罰ゲームだろうか。


 ああ!こんなことならいっそあの時エミリーと出会ったのが攻略対象ならよかったのに。

 例えヒロインと攻略対象の出会いがトイレイベントという残念なものになってしまったとしても、悪役令嬢がヒロインと仲が良いと攻略対象に思われるより断然ましだ。


 ヒロインと仲のいい悪役令嬢なんて、もはやそれは悪役令嬢じゃない。

 悪役令嬢(笑)だ!


 初日から悪役令嬢道(?)で躓いてしまった私は、意気消沈しながら帰宅するのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ