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5 私は悪役令嬢、ですよ?

更新できなくてすみませんでした。

一応、この回は12日分なのでまた今日中には更新する予定です。

「はぁー。疲れたー・・・。」


 無事にトイレまでたどり着き、エミリーが九死に一生を得た後、私は色々な疲労から大きくため息をついた。


 まさか話している間エミリーがずっともじもじしているのはトイレに行きたかったからだとは思わなかった。

 それなら早く言ってくれれば良かったのに、色々セリフを用意して一歩を踏み出したあのときの私の決意を返して欲しいよ、全く。


 それにしてもゲームでのヒロインのエミリーって、もっとおしとやかで微笑んでいるようなイメージだったと思ったんだけど。

 間違ってもあんなトイレに行きたいと凄い形相ですがりついてくるような子ではなかったはず、たぶん。


 それともこれもなんかのイベントだったとか?

 攻略対象が、トイレの場所が分からなくて困っているヒロインをトイレまでエスコートしてあげる。

 ・・・いやいや、エミリーは結構切羽詰まっていたから、二人でトイレまで全力疾走?


「あなたのおかげで恥ずかしい思いをしなくて助かりましたわ!」


「いえいえ。トイレに連れて行くことくらいお安いごようですよ。」キラン!


「あ、ありがとうございます!」ぽっ。


 みたいな感じで二人は出会い、ヒロインは恋に落ちるのだった・・・ってどんな設定だよ!

 出会いのきっかけがトイレってロマンチックの欠片もないし、そんなんで恋に落ちるか!

 そもそもどんなイケメンだったとしても、一緒にトイレに行くのは断固拒否する。

 きっと周りの目も痛いものを見る目になることだろう。

 嫌だなー、そんな乙女ゲーム。


「あ、あの~。」


 私がトイレイベントについて考えていると済ませたらしいエミリーが恐る恐る声をかけてきた。


「本当にありがとうございました。私はエミリー=フランネルといいます。あなたがいなければ本当にどうなっていたことか。」


 うん、きっと乙女ゲームのイメージをぶち壊すヒロインが誕生してしまっていたと思うよ。

 恥ずかしそうにお礼を言うエミリーに私は心の中で突っ込んでおく。


「全く、この私の手を煩わせるなんていい度胸だわ。いったい何様のつもりかしら?」


「ご、ごめんなさい・・・。」


「謝るくらいなら自分の通う学校くらいどこになにがあるのかきちんと把握しておくことね。とにかく、私はあなたなんかにかまっている暇はないのよ。」


 私はふんと冷たく笑う。

 ちょっと想定外のことがあったけど、まだまだ悪役令嬢は健在なのだ。

 ヒロインを助ける結果になってしまったが、ここで突き放すような言葉をぶつけて悪役として挽回しなければ。


 エミリーは私の言葉を聞いて傷ついたのか両手を胸の前で組みプルプルと震え、瞳をキラキラと輝かせた。


 ・・・ん?輝かせた?


「まさかお忙しいのに平民の私のためにここまでしてくださったなんて!本当にお優しいんですね。」


「え?」


「お名前をお聞きしてもよろしいですか?」


「な、名前?アリシア=ブロッサムで」


「アリシア様ですね!たしか同じ一年ですよね?これからよろしくお願いします。」


「あ、あなたによろしくされる覚えは・・・」


「お忙しいところ申し訳ありませんでした。それでは失礼します!」


 エミリーはにこりと笑うと私の話を聞いていないのかさっさと行ってしまった。

 私はエミリーの背中を呆然と見送りながら、なんか嵐のようなヒロインだったなと思った。


 それにしても、ことごとく私のヒロインのイメージをぶっ壊していってくれるな、あのエミリーは。

 私になにか恨みでもあるんだろうか?

 まだ会って1日目なはずだけど。


「お嬢様。お疲れ様でございます。」


「あ、セシルいたんだ。いつの間に。」


 セシルに声をかけられて私は驚いて後ろを振り向く。

 そういえばエミリーの手を引っ張ってトイレまで走ったから、セシルをおいてきてしまっていたんだった。

 すっかり忘れてた。


「いつからここに?」


「「あなたのおかげで恥ずかしい思いをしなくて助かりましたわ!」からでございます。」


「結構前からいた!というか聞かれてた!」


 うぅ~、1人芝居が聞かれていたなんて恥ずかしすぎる。

 頭の中で妄想していたはずなのに声にでていたなんて。

 というか、そんな前からいたなら声をかけてくれれば良いのに。


「それにしてもお嬢様。ヒロインをいじめる悪役になりきるのではなかったのですか?エミリー様を思いっきり助けていらっしゃいましたが。」


「うっ!だ、だってさすがにトイレには行かせてあげようよ。それに、そのあと冷たく当たったし。」


「いえ、もはやそれは、はたから見ればツンデレにしか見えませんでした。」


「なん、だと・・・!」


 セシルの予想外の指摘に私は愕然とする。

 私渾身の演技がツンデレにしか見えないだと!


「私ならわざと会話を長引かせてトイレに行かせないようにしますから。お嬢様は甘いです。」


「鬼だ!ここに鬼がいらっしゃる!」


 セシルの鬼畜っぷりに思わず体が震える。

 ずっと前からセシルってもしかしなくてもSなんじゃないかとは思ってきたけど、まさかここまでだったなんて!


「お嬢様?なにかおっしゃいたいことが?」


「いえ!なんでもございません!」


 今までで一番、セシルの笑顔が恐ろしく見えたのだった。

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