表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/20

3 入学しました

 私が前世の記憶を思い出してから月日は流れ、ついに学園に入学するときがやってきた。


 ───フローラ王立学園。


 国中から魔力を持った貴族の子供たちが集められ、正しく魔法を使いこなせるように教育するための学校。

 貴族の子供たちがというのは平民が通ってはいけないというわけではなく、ただ魔力を持っているのはほとんどが貴族だからだ。

 たまに魔力を持った平民が現れることもあるらしいけど、多分貴族の妾の子や孫なんだと思う。

 こういった設定もヒロインのためにあるんじゃないかと思えてくるから不思議だ。

 いや、実際にそうなんだろうけど。


 そしてヒロインは魔力があったために平民として学園に通うことになり、攻略対象や悪役令嬢、つまり私に出会うことになる。

 そして数々の困難(主に私)を攻略対象たちと乗り越えていくのだ。


「うんうん、頑張れヒロイン。」


「他人ごとですね。それよりも早く準備して下さい。」


「あ、はい。」


 セシルの冷ややかな目線に私は慌てて荷物を持って馬車へと向かう。

 侯爵以上の身分の子供は一人だけ世話係の同伴が認められるため、セシルも私の世話係として学園に同行することになっている。

 といっても常に一緒にいるわけではないけど。


「悪役令嬢だけど友達できるといいな。」


 私は学園へと向かう馬車の中でぽつりと呟いた。





 学園に到着すると上級生に案内されセシルと共に入学式がある講堂へと案内された。

 私が王家の次くらいに権力のある公爵家の令嬢だからだろうか?

 廊下を歩いていると多くの視線を感じるし、案内してくれている上級生も緊張しているように見える。

 なんか友達つくるの大変そうだなとか考えていると、講堂に到着したので大人しく席で待つ。

 ちなみにここではセシルは私の側ではなく他の使用人たちもいる講堂の後ろの方にいるため、現在は私は一人だ。

 ヒロインを探してみるけど見当たらない。

 しかし、一人目の攻略対象を見つけることはできた。


 アルフォンス=ローズ=フローランド。

 この国の第二王子であり優しそうな顔をした腹黒王子だ。

 現在私の隣に座っている。

 まだ心の準備ができていないのにいきなり隣にいるとか勘弁してほしい。

 というかどうでもいいかもしれないけど名前長すぎる。

 自己紹介大変そうだ。


 そんなことを考えながら王子を見ているとふいにこちらを見て目が合ってしまった。


「げっ。」


 思わず声に出してしまった私は慌てて口を塞ぐと、王子は一瞬キョトンとした顔をしたけど、すぐに柔らかそうな笑みを浮かべて話しかけてきた。


「はじめまして。私はアルフォンス=ローズ=フローランドと申します。今日から同級生ですね。よろしくお願いします。」


 うん、やっぱり名前長いや。


「お初にお目にかかります。アルフォンス殿下。わたくしはブロッサム公爵家長女、アリシアと申します。お会いできて光栄ですわ。」


 私はにこりと笑ってみせる。


 よし!完璧にできた。

 こんなお嬢様みたいな挨拶私には難易度が高いけど、入学する前にお母様に鍛えられただけのことはあって噛まずに言うことができた。

 話しかけられるとは思っていなかったからちょっとびびったけど、私だってやればできるのさ!


「ああ。ブロッサム公爵家のご令嬢でしたか。お噂通りの美しい方で驚きました。どうぞお見知りおきを。」


 そういってにこりと微笑むアルフォンス殿下はまさに王子のようだった。

 実際に王子だけど。


「ひゃ、ひゃい。こひらこひょよろひくおねまいしましゅ。」


 え?なんでこんなカミカミなのかって?

 そんなの不意討ちでキラキラのイケメンに美しいとか言われたらびっくりするでしょ!私の心はチキンハートなのだ。

 中身はともかく、私も一応公爵令嬢。慣れてきたとはいえ、お父様くらいの大人たちならまだしも同年代の王子、しかもゲームでさんざん甘い言葉を恥じらいもなく吐いていた相手の実物と会うことになるなんて。

 あの言葉の数々をふと思い出して急に恥ずかしくなってしまう。

 その破壊力には凄まじいものがありましてよ!


 王子が私のカミカミに驚いたのかポカーンとしているうちに私は恥ずかしくなってぷいっと反対方向を向いた。

 幸いなことに顔を背けた方向には誰もいなくてほっとする。

 いや、いくら恥ずかしくても王子にその対応は良くないとはわかってはいるんだけども。まだまともに目を合わせられない。

 私は悪役令嬢。ゲームのようにまかり間違って本気で王子に恋をすることになったら大変だもの。

 それにしてもあんな優しい顔して腹黒とか詐欺だわ。

 怖いからあんまり関わらないようにしよう。



 しばらくすると学園長だというおじいさんの長い話を聞き流し、王子の新入生代表の言葉を同じく聞き流すと入学式が終了した。

 日本の入学式より短くて簡単なものだったから居眠りをせずに済んだ。

 さすがに一番前の席だったので居眠りしにくいけど、お母様にバレでもしたら死んでしまうので良かったのかもしれない。

 まあ、話の内容は全然頭に入ってないけど。


 講堂から退室してセシルと一緒にクラス分けが貼られている廊下まで行くと、自分のクラスを確認する。

 まあ大体分かっているけどね。

 ゲーム通りだと私はヒロインと同じクラスのはずだ。

 でも一応見に行かないと「なんでクラス知ってるんだこいつ」みたいなことになるから知らないふりをして確認する。


 すると周りの人たちがこそこそと話を始め、みんなある方向を見ていることに気づく。

 私も気になって見てみるとそこには


 ────エミリー=フランネル。


「フローラ王国物語」のヒロインの登場だった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ