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青春と都市伝説  作者: 池田 ヒロ
◇冬の事変
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72話 メリークリスマス・ビンゴゲーム! ①

 空は怪訝そうな顔をしていた。いや、何もそういう表情をしているのは彼だけではない。カンナや大地、洋子も同様である。大地の場合は不審というよりも、不機嫌が正しいだろう。その理由は洋子の自宅の部屋にある。


「なんで桜がいるんだよ」


 そう、この場に私服姿の呉羽がいたのだ。今日は前から計画をしていたクリスマスパーティー。自分たちが幾人か友人たちを誘って――のはずだったのだが。四人は彼を誘ってはいない。八姫農業高校の文化祭での件があるから。夏祭りやビーチフラッグ対決でもそうだったから。


 大地の機嫌悪い言葉を投げつけられても、呉羽は飄々とした態度を取る。いかにも自分はここにいても問題のない人間だ、と断言したような面持ちだ。


「なんでって、児玉に呼ばれた。来ちゃ悪いか?」


 悪い理由はある。呉羽に言いたいことは山ほどある。だが、それを口にすれば、周りの者たちに都市伝説の件が漏れてしまいかねない。それが故に、大地は少し離れたところで玲たちと会話をしている誠一を恨む。彼の視線に気付いたのか、誠一はこちらの方へとやって来た。


「何、怖い顔をしてるんだよ」


「オマエがネクラを呼んだせいで気分はタダ下がりよ」


「桜って別にネクラでもねーだろ。学級委員長だし、ワリと人望あるぜ」


「なんでぇ!?」


「センパイ、そのツッコミはどこかオカシイ」


 呉羽が呼ばれた理由と彼が学級委員長であることに理解できない大地に違和感を覚える空であった。それにこの場で出ていけなんてひどいことは言えやしない。言ってしまえば、周りの者たちから顰蹙を買うだろう。もう黙っておく以外はどうしようもない。


 それに今日から冬休みみたいなものである。こういうときぐらい、はっちゃけたりすることもできないから、大いに楽しもう。仮に呉羽が都市伝説の件について口に出してくることもないはず。ほら、こんなにたくさんの人たちが集まっているのだから。


《はいはーい! みんなが集まったところでビンゴゲームしましょー!》


 別にクリスマスパーティーを提案したわけでもないが、こういうパーティーはテンションが上がるのか。玲がマイクを片手に進行していく。そして、なぜか彼の胸には『司会』と書かれた名札が。


「高崎って、仕切りたがり屋だよな?」


「イベントは好きと言っていましたからね」


 しかし、こんな頼もしい友人がいるのは悪くない、と空は自分が持ってきていた鞄を開けた。近くでケーキを選んでいるカンナにバースデープレゼントを渡すためである。別に他のタイミングでも構わないのだが、これだけみんなが集まったのだ。大勢の前でプレゼントを渡すのは恥ずかしい。だから、誰もいないときを狙ったのである。


 鞄の中に入れていたオレンジ色調の袋を出そうとするのだが――。


「アレ?」


 思わず声が漏れた。見かねた大地が「どうしたか?」と声をかける。


「もしかして、ビンゴのプレゼント忘れてきた?」


「い、いえ、そーではなく……」


 言うのが恥ずかしいのか、顔を真っ赤にさせて空は「カンナに渡すプレゼントがない」と言う。


「ビンゴの分はすでに出したから……」


 おかしいな、とビンゴゲームのプレゼントが置かれたテーブルを見れば――。


《はい、みんなのプレゼントはここにあります! 今からカードを配りまーす》


 見慣れたオレンジ色のラッピングプレゼント。それを見た空が「あった!」と安心した。これには大地も少しばかり安堵する。彼は「よかったな」と小さく笑う。


「早く取ってこいよ。ゲームが始まらない内に」


「ですね」


 空がプレゼント置き場へと行こうとするが、カンナが呼びかけた。それに立ち止まる。


「ほら、空の分。一緒にしよ」


「お、おうっ」


 ビンゴゲーム用のカードを受け取った。なんだか、取り戻しに行きづらくなってしまったではないか。それでも、回収したいという気持ちが大きい空は「ちょっと」とプレゼントのもとへと行こうとするのだが――。


「なあ、夏斐」


 邪魔が現れた。呉羽がカードを片手にしている。ああ、もう。回収しに行きたいのに。


「あれだけのプレゼントじゃつまらないから、オレとキミで賭けようぜ。今回は完全なる運試しだからよ」


「やらないです」


 それよりもカンナのプレゼントが優先である。即座にそう答えるが、呉羽は通せんぼをしてくる。


「先に上がったら、この場でわがままが通せるっていうのはどーだ?」


「文化祭のときに懲りませんでした? いー加減にしてください」


「ああ、そーだったな。悪い、悪い」


 相手にしている暇なんてない。空が呉羽を押し退けて行こうとするも――「じゃ、そーゆーのはしないけどさ」と耳打ちをしてくる。


「いーのか? プレゼント回収をするの。高崎、ハイになってるみたいだぜ? アレ、あの子に渡すプレゼントだろ?」


 なんと呉羽にカンナのバースデープレゼントのことがバレてしまったではないか。どこから漏れた!


「多分、マイクで『勝手に触らない』とか言ってきそうだな。それに答えるか? 好きな子のプレゼントと間違えましたって。『全員』の目の前で」


 そのようなことを言われてしまえば、間違えてしまったという羞恥心に加えて、カンナにプレゼントを渡すという恥ずかしさが混ざり襲いかかってくる。これに動くことができなくなってしまった。取りに行けなくなってしまった。そうしていると――。


《じゃあ、早速いってみましょー!》


「中身は何だろうな?」


 呉羽の言い分はこうであろう。空は間違えてビンゴゲームのプレゼントにされたカンナのバースデープレゼントを、このゲームで回収しろ。一方で、呉羽もそのプレゼントを狙おうという魂胆である。自分を貶めるためにしようとするその精神。本当に彼は何が狙いなのか。


《最初は『7』でーす》


 ちっともメリークリスマスでもない最悪なビンゴゲームが開幕した、と空は受け取ったカードに書かれた数字を見るしかできなかった。

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