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青春と都市伝説  作者: 池田 ヒロ
◇夏の事変
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31話 洋子の本性

 午前中はあっという間に過ぎ、お昼ご飯を食べた一行。空はお腹いっぱいになったのかパラソルの下でぼんやりと海を見つめていると、玲がやって来た。


「なー、夏斐。ビーチフラッグしよーぜ」


 そう言う玲の手には焼き鳥 (次郎が作ってくれた)の串数本を輪ゴムで束ねた物がある。まさか、それをフラッグに見立てろと?


「だったら、そこら辺の木の棒でもよくね?」


「いーじゃん。結果棒なんだし」


 本当は旗なんだけれどもな、と言いたかったが黙っておいた。


「いーよ。やろーか」


 するメンバーは誰なのだろうか、と思えば八姫農業高校の大地たちは遊びに行ったのか遠くに姿が見えた。この競技をするのは自分たち紅花高校と洋子だけのようだ。


「じゃあ、二チームに別れてやろーぜ」


 ということでくじを引いて決まったのはAチームが空とカンナに洋子。Bチームが玲と明と浩子だった。


「カンナと一緒か」


「なんでイヤそうな顔してんの?」


「どうせカンナの独り勝ちだろ」


 そう、カンナは足が速い。それは体育祭の最後の競技であるチーム対抗リレーに抜擢されるほどだ。これでは力の差が歴然としているな、と思っていると、パラソルの下で呉羽が座っていることに気付いた。そう言えば、彼もカナヅチだとか言っていたなと思い出す。ちなみに同士の大地は美奈に泳ぎを教わっているようである。


 何を思ったのか、空は呉羽のもとへと近付いた。


「桜センパイ、よかったらオレらと一緒にビーチフラッグしませんか?」


「オレ?」


「はい。できたらオレが対戦するチームに入って欲しいんですケド。オレの幼馴染の足が速過ぎて、面白くないと思うから」


 身体能力はそこまで知らない。だとしても、カンナといい勝負なのかもしれない。そう、空は見込んで誘ったのだ。その誘いに呉羽は「いいよ」と承諾する。


「オレでよければ」


 二人がやって来ると、カンナは「おっ」と声を上げる。


八姫農業高校ヤノーのヒト!」


「キミが足の速い子だって? ねー、午前中の秋島みたいにしてなんか賭けない?」


 どうやら呉羽は自信満々のようである。それにカンナも乗る。


「構いませんよ。何を賭けます?」


「そーだね……」


 呉羽は周りを見渡すと――離れたところで美奈と泳ぎの練習をしている大地を指差して、悪企みでもするかのような表情を見せた。


「オレが勝ったら、秋島に告白してきてよ」


 この発言には誰もが目を丸くする。何を考えているのだろうか、と。


「えっ?」


 流石のカンナでさえも動揺は隠せないようで、視線を泳がせる。


「て、てゆーか……秋島センパイにカノジョいるじゃないですか!」


 それも当然だとして、洋子も首を大きく縦に振る。だが、それでも呉羽は周りを掻き乱すようにして「じゃあ」と洋子の方を見てきた。


「冬野さんだっけ? 冬野さんでもいーよ」


「なっ!?」


「んー、それなら」


 今度は空を見てくる。これに嫌な予感しかしないが、呉羽はにこにこと笑顔を絶やさず、「これはオレとキミだけの取引だ」と耳打ちをしてきた。


「オレが勝てば、足が速い子に告ってよ」


 思わず顔を真っ赤にさせた。誰よりも動揺は隠せない。


「なっ、何を考えているんですか!?」


「知ってる? 見えている勝負には理不尽な賭けをすれば、メチャクチャ面白くなるんだぜ? もしかして、勝負降りる? それなら、不戦勝になるケド?」


 さあ、どうすると煽っていると、カンナが「ならば」と腰に手を当てて怪訝そうに見てくる。


「わたしが独り勝ちしたらすべての賭けを取り消した後に、センパイは猿渡センパイに告白してくださいよ」


「いーねぇ。秋島に殺されそうだけど、悪くはない賭けだ。やろーぜ」


 なんとも自信満々に賭け事をしてくるな、と呉羽は小さく笑った。これは面白いころになって来たぞ。


 四人は砂浜に寝そべり、準備をした。絶対に呉羽を勝たせてはならないとして、空とカンナは互いの目を見た。正直言うと、頼りになるのは彼女なのだ。それをわかっているのか、彼女は任せてとアイコンタクトを取ってくる。


「位置について……」


 玲が合図を上げるが、彼もまた空たちの会話を聞いて動揺は隠しきれない。この勝負、どうなってしまうのか。


「用意――ドンッ!」


 直後、カンナと呉羽は砂を撒き散らしてダッシュする。二人の走りは互角のようである。砂にやられて遅れた空も懸命に走った。


 そう言えば、と洋子は後ろの方だろうかと思えば――。


 並走していた二人を追い抜く影があった。それは洋子である。彼女は数十メートルに設置された串の束を手に取った。これには誰もが唖然とする。まさかのダークホークが存在しているとは。


 洋子はそれを手にして呉羽のもとへとやって来た。


「桜さん、私が勝ちました。私の場合は何も賭けていないはずです。なので、賭けすらもなかったことになりますね」


「そ、そーだね……」


 こればかりは想定外だったらしい。苦笑いをしていた。そんな呉羽の横を通るとき、空は洋子の言葉を聞く。


「あまりヘタなことを言っていると、冬野財閥の名にかけて消しますよ」


 普段の温和的な洋子とは違って、冷徹さがあった。それに思わず身震いする空。彼女を困惑した様子で見ていると、次郎が近寄ってきた。


「これでもお嬢様はご友人思いがある方ですよ」


「え?」


 確かにそうではあるが、自分の家の名を使って消すだなんて恐ろしいとしか捉えられない。


「あの春のときがあってから、かなりピリピリしていらっしゃるんですよ」


「そーなんですね……」


 だとしても、これからは洋子には下手なことが言えないな、と空は口に気をつけようと心に誓う。もちろん、それは彼だけはない。呉羽もであった。

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