プロローグ 事件の真実
『またしても行方不明者』
その煽り文句の文章が書かれているのは週刊情報誌のとある一ページ。それを見るのは一人の少女であり、そんな彼女を呼ぶのは同い年の少年か。彼が手にしているスマートフォンのネットニュースページにも同様の情報が載っていた。
『平和な花町に一体何が起きたのか』
そろそろ行こう、と促すと、それに少女は頷いた。
『手掛かりは一切掴めず』
二人がいるその場所の少し離れたところに青年は原付バイクに乗っていた。電化製品店のショーウィンドウに飾られ、放送しているニュースを見ているようで停車はしている。彼はさほど関心はない感じではあるが、結構な大問題であると見れるようであった。
『犯人逮捕にご協力ください』
電化製品店のすぐそこを黒い自動車が通る。その車内には小さなテレビが備えつけられており、そのテレビも同じ内容のニュース番組が放送されていた。それを見るのは後部座席に座っている少女だ。
テレビからすぐに視線を逸らす。その眼先には大きな工場団地があった。そこは冬野財閥という企業が運営しているのである。
そんな工業団地の地下はとても薄暗く人の気配はほとんどなかった。そのような場所では実験台の上に一人の男性が手足を固定されている。
「お、俺をど、どうするつもりだっ!?」
悲痛の叫びを傍らにいる白衣の男に向かってする。その怯えようは声を聞かずともその場にいるだけでわかるほどだ。
白衣の男はにやり、と笑う。
「決まっているじゃないか。人類の未来を変えるのさ」
果たして、その野望は誰もが望むものなのか。