夢
教室
あの頃に戻ったようだ
机の落書きが懐かしい
行き届いていない掃除のせいで
隅に埃がたまっている
君がいる
あの穏やかな笑顔で
僕はゆっくりと歩み寄る
そしてそっと抱きしめて、静かにささやく
好きだ
彼女は僕を軽く突き飛ばし
そこから去っていく
教室
あの頃に戻りたい
あそこには埃があった
行き届いていないお陰で
掃除されてしまわない埃が
そして君がいた
サラサラとした茶色がかった髪を揺らしながら
穏やかに笑う
愛しい人よ
僕はあなたを愛しています
電車
そうこれは夢
彼女がいる
向かいの座席に、光を背にして
僕は何も言わず
うつむいて泣いている彼女を見つめる
彼女の声が聞こえる
あなたに騙されそうだわ
僕はこたえる
ああ、おれは君を騙すかもしれない
おれはたぶん、おれ自身をも騙しているから
だが……
反対方向の電車が通り過ぎる
彼女はいない
光の中に、泣き声の余韻だけ
だが……
だが、この愛はおそらく嘘ではない
伝えることができなかった
そう、あの時も
愛しい人よ
僕はあなたを愛しています
教室
僕は笑っていた
いつも
あの頃に戻ることはない
全ては思い出で、夢で
ただもう一度会いたい
今度は夢の中ではなく
そして彼女に言いたい
好きだ、と
サラサラとした茶色がかった髪を揺らしながら
遠ざかっていく君の後ろ姿
彼女は僕を軽く突き飛ばして
そこから去っていく
はるか昔に書いたものの改稿版。
色々と思う所はあるけれども、自分としては気に入っている作品。
感想等頂けたら嬉しいです。