表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

作者: 冬影


 教室

 あの頃に戻ったようだ

 机の落書きが懐かしい

 行き届いていない掃除のせいで

 隅に埃がたまっている


 君がいる

 あの穏やかな笑顔で

 僕はゆっくりと歩み寄る


 そしてそっと抱きしめて、静かにささやく


 好きだ




 彼女は僕を軽く突き飛ばし

 そこから去っていく




 教室

 あの頃に戻りたい

 あそこには埃があった

 行き届いていないお陰で

 掃除されてしまわない埃が


 そして君がいた

 サラサラとした茶色がかった髪を揺らしながら

 穏やかに笑う


 愛しい人よ

 僕はあなたを愛しています




 電車

 そうこれは夢


 彼女がいる

 向かいの座席に、光を背にして

 僕は何も言わず

 うつむいて泣いている彼女を見つめる



 彼女の声が聞こえる


 あなたに騙されそうだわ


 僕はこたえる


 ああ、おれは君を騙すかもしれない

 おれはたぶん、おれ自身をも騙しているから

 だが……



 反対方向の電車が通り過ぎる

 彼女はいない

 光の中に、泣き声の余韻だけ



 だが……

 だが、この愛はおそらく嘘ではない



 伝えることができなかった


 そう、あの時も


 愛しい人よ

 僕はあなたを愛しています




 教室

 僕は笑っていた


 いつも


 あの頃に戻ることはない

 全ては思い出で、夢で


 ただもう一度会いたい

 今度は夢の中ではなく

 そして彼女に言いたい


 好きだ、と




 サラサラとした茶色がかった髪を揺らしながら

 遠ざかっていく君の後ろ姿


 彼女は僕を軽く突き飛ばして

 そこから去っていく




はるか昔に書いたものの改稿版。

色々と思う所はあるけれども、自分としては気に入っている作品。


感想等頂けたら嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ