2粒 Doubt
長い一本道を歩いていると、気がつけば当たりは、一面木で埋め尽くされていた。
いわゆる森だろう。
そんな薄暗い道は、私の不安と恐怖を煽るには、十分すぎるほどだった。
ふと、遠くに小さな小屋を見つけた。小屋の煙突からは煙が上がっていて、あそこには誰か人がいるようだ。
私はゆっくりと小屋に近づいた。
すると、中から一人の女性が出てきた。
私は驚いて、少し後ずさった。
そんな私の姿を見て、女性はクスッと笑うと、ドアのそばで小さく手招きをした。
私は小屋へ向かい、窓から中を覗くと、女性がお茶を淹れているのが見えた。
「お邪魔します…。」
思いきってドアを開けると、中から芳ばしい香りが漂ってきた。
入ってきた私を見て、女性は優しい声色でささやいた。
「いらっしゃい、お嬢さん。」
そんな女性は、近くで見ると20歳前半ほどで、整ったその顔は、いわゆる美人だ。美しい真っ赤なドレスを着ている。
私を席へ勧め、焼きたてであろうパンと紅茶を出してくれた。
私は女性に向かい合わせの席についた。
「どうぞ、召し上がって。」
女性に勧められ、いい香りのする紅茶に手をだした。
「いただきます。」
甘いベリーのような香りがした。
女性はゆったりと、穏やかな表情で紅茶を飲んだ。
「どうして、私を迎え入れてくれるんですか…。」
私は、手に持っていた紅茶を置き、女性の顔をじっと見た。
中にいれてくれたときは、本当に嬉しかった。でも、少しだけ不安もあった。
そんな女性はニッコリ微笑んだ。
「そうね。あなたは、もう少し人を疑うことを覚えたほうがいいわ。」
この人は、一体何を言っているのだろう。
「もし、その紅茶に薬が入っていたらどうするの?もし私がオオカミで、あなたを食べちゃったらどうするの?」
女性は淡々と言い続けた。
怖そうな人には見えない。でも、彼女が言うように、もしものことがあるかもしれない。
そう、全てが私の身方じゃないの。
一切顔色を変えることなく、ニコニコする女性をじっと見て言った。
「それは、あなたもじゃないんですか?」
女性は、少し驚いた表情を見せた。
「あら、どういうことかしら。」
今度は、私のことを試すように言った。
怖い。
不安で仕方ない。
女性は変わらず笑顔で接するけど、私の目にはとてもそんな顔には見えない。
本当に薬が入っていたら、私は今ごろ死んでいるのだろうか。
だからこそ。
「もし、私の手にナイフが握られていたら、私は今すぐにでもあなたを殺すことができます。」
私の言葉に、しばらくの沈黙。
そんな空気を壊すかのように、女性は突然笑いだした。
「ふふふっ、ずいぶんおもしろい子がやって来たわね。」
その表情は、思わず緊張が途切れてしまうような、そんな笑顔だった。
「おもしろいわ、大丈夫。私はあなたを殺したりなんかしないし、薬も入ってない。」
言い終えると、近くの棚から何かを取りだし、私の手の上にのせた。
「これ、あげるわ。何かあったときに食べて。」
小さな袋に入れられたそれは、おそらくクッキーだろう。
「ありがとう…。」
ぎゅうっと胸が苦しくなった。
同時に、クッキーを持つ手の上に、何かがパタリと落ちた。
「あ…。」
目からぼろぼろと涙が零れ落ちる。
「あらあら、どうして泣くの。」
女性はぎょっとして、私の目に優しくハンカチを当てた。
わからない。
でも、涙が溢れて止まらない。
苦しくて、でも、胸がとてもあたたかな気持ち。
「ありがとう…ありがとう…。」
ただその言葉しか出てこなかった。
「泣き止んで、もう。ほら、行きなさい。」
女性は私の涙を拭うと、背中を押してくれた。
「ありがとう。」
「さっきから、それしか言ってないじゃない…。」
今度は呆れ顔で言った。
「えへへ、うん。」
私は、そんな女性の言葉に思わず笑みが零れた。
涙なんかより、あたたかい笑顔だ。
「さ、行ってらっしゃい。」
小屋から出て、私は一歩踏み出した。
振り返ると、女性が手を振っていた。
「行ってきます、さようなら。」
私も手を振り返すと、嬉しそうな顔をした。
その笑顔に、また胸があたたかくなった。
そのまま私は小屋から離れ、森の中へと歩いていった。
気がついたら1ヶ月たとうとしていてビビった。
雫ちゃぁぁぁぁぁぁんんんんん!!!
ちなみに続きは一切書いてません。(キリッ
は、話は考えてあるんだよ!?
ホントなんだよ!?