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Declaration of war

挿絵(By みてみん)

メルシェーダ-フランシス



 登壇上の袖からフイッと会場を見渡すと、犇めき合う人の群れがメルシャーダの眼に映った。ザワザワとガヤガヤと人の声が聞こえる。

 前列には報道陣関係者とテレビカメラが陣取り浮遊カメラが360度余す所無く今の状況を写し撮っている。ソッと袖から頭を一つ分だし奥の方を見やる。SDC本部前に設置された登壇上から遠く離れた正門入り口まで人の頭しか見えない。否、それ以上に正門を越えても人が溢れかえっている様に見えた。

 ゴクリとメルシェーダは生唾を飲む。

 此の溢れかえる人混みは何処まで続いているのだろうか?ふと、メルシェーダはそんな事を考える。メルシェーダはいつもこんなつまらぬ事を真剣に考える。

 新年の挨拶の時も自分の誕生日の時もー。宮殿に集る国民の群れは何処まで続いているのだろうか?そんな事を考え乍ら言葉を読み上げている。

 然れどどんなに続いていようとも限りが有る。国民の数も然り地球でない事も然りー。

 宇宙の中で地球とはゴミの様に小さな惑星にしか過ぎない。地球よりも大きな惑星は何億と存在する。そして恒星の周りをクルクルと回っている小さな星である。

 其の小さな星よりも遥かに小さなこのライフカプセルは宇宙から見れば目にも映らぬ塵の様な物ー。其の塵の中に幾らの人が収容出来ると言うのだろうか?道を歩けば無限とも思える広大な距離を持つ地球とは違う。何千kも歩きやがて元来た場所に戻ってくる地球とは違い、歩けば突き当たりに辿り着くライフカプセルは矢張り塵なのだ。其の塵の中に何れ程の人がいようとせいぜい突き当たりまでなのだ。

 それでもメルシェーダの興味は其処に有る。

 興味が有りワクワクするのだ。其れが何故なのか?其れは本人も良く分かっていない。メルシェーダはジッと会場を見やりニッと笑みを浮かべる。何が楽しいのか本人にも分からないが、楽しいのだ。逆に言えばそう言った所にしか楽しみを作れないジレンマが有るのかもしれない。だから楽しくなくとも楽しく仕様としているのかもしれない。

 頭の中で何を考えているのか分からないが、歪な笑みを浮かべメルシェーダはフイッと袖の奥を見やった。袖の奥にマイケルと話をしている宇喜多の姿が見えた。

「宇喜多殿下…。」

 宇喜多を見やりメルシェーダが言った。

「どうされました ?」

 マイケルとの会話を中断し宇喜多が答える。

「あの、おトイレに行ってきます。」

「え、ええどうぞ。」

 そう答え宇喜多が壁時計を見やる。時刻は9時10分を指している。其の時刻を見やり9時50分までには戻って来て下さいよ。と言うとメルシェーダは笑顔ではいと答えトイレに駈けて行った。

 然しトイレに40分も時間を使うのか?と言うと然う然う使う事は無い。だが、こう言った時は常にメルシェーダはトイレに行く。そして長い時で小一時間はトイレから出て来ない。トイレで何をしているのかは宇喜多も知らぬが、それが常なので宇喜多は当然の様に受け答え、駈けて行くメルシャーダを暫し見やった。駈け行く姿は女王様と言うよりは、寧ろ小娘と言った言葉が良く似合っている。否、実際まだ小娘なのだ。如何な理由があろうと18才の若さで国を背負って立つ事は容易な事ではないだろう。気丈に振る舞っていても伸し掛かる重圧は計り知れない。それでもよく頑張っている。そんな事を思い乍ら宇喜多は視線をマイケルに戻した。

 袖からSDC本部内に入ると外の状況とは変わり静かなロビーが淋しさを感じさせる。コツンコツンとヒールの音が響く。

 コンコンコンコンと態と音を響かせる。其の音は少し木霊した後スッと其の音を消して行く。そして又静かな空間がメルシェーダを包み込む。

 誰も返事を返しては来ない。召使いも付き人も、SPもつけていない今は誰も此の行動に受け答えする者がいない。

 ジッと其の場所に立ち尽くしフッと息を吐く。徐に右を向きトイレを見やる。来慣れた場所である迷う事は無い。

 メルシェーダはヒールの音を響かせ乍らトイレに向った。

 コツーンコツーンコーツンー。

 コンコンコンコンコンコンー。

 トイレの入り口で悪戯に音を響かせる。そして後ろを振り向きニッと笑みを浮かべる。笑みを浮かべてみせても其処には誰もいない。メルシェーダの浮かべる笑顔を見やる者等誰もいないのだ。

 グッと空しさがこみ上げてくる。馬鹿馬鹿しいー。本当に馬鹿馬鹿しいと思う。それでもメルシェーダは悪戯に音を響かせる。そしてピタッとそれを止め頬を膨らませる。そんな自分を可愛いと思ってみるが、其れを可愛いと言ってくれる友達やメイドは居ない。よしんば居たとしてもそれが、些か信用性に欠ける事もメルシェーダは知っている。

 王家の娘…。

 但、それだけの事で自分の扱いは常に違った。其の昔の言葉で言えば差別だ。但、自分的に其れを分別されていると思っている。

 不愉快だ。

 ボソリと呟く。眉をしかめプイッと後ろを振り返る。

 好きで王家の娘に産まれたわけじゃない。そう言いたかったが、其れが贅沢な悩みである事も理解している。だからメルシェーダは言わない。例本当の友達が居なくともメルシェーダは言わないのだ。

 其れが贅沢な事だと知っているから。

 静と静まり返ったロービーを見やりメルシェーダはトイレに入って行った。

 トイレの鏡の前でメルシェーダは鏡に映る自分をジッと見やる。全身を鏡に映し顔をグッと鏡に近づける。右左と顔を鏡に映し軽く髪に触れる。

 整髪料で固められた髪はおもちゃの様に固く其の形を維持したままブルンと震えた。

 キャバ嬢の様なド派手なその髪型は自分を華かに演出している。そして此の血色の良い化粧は活発な少女を演出している。

 だから、鏡に映る自分はいつも別人である。

 化粧を塗りたくられた其の顔は、自分本来の顔が消されている様に感じ、いつも嫌な気分にさせられる。

 其れはまるで自分の顔が可愛くないと言われている様に感じるからだ。それでもメルシェーダは化粧のできばえをチェックする。口紅はちゃんとぬれているのだろうか?つけまつげはおかしくないかー。

 何のかんの思い乍らも最後は自分で確認している自分がいるのも事実。きっと素顔で人前に立てば誰だか分からないのではないか?と不安になってしまう。

 然れど鏡に映る自分はいつも可愛いとも思っている。此れは素顔の自分も含めてである。

 矛盾してますね。

 そう言い乍ら人差し指で唇を軽く触れる。プルンと唇が震える。

 大きく口を開け、今度は口角を上げ乍ら笑顔を作ってみせる。白く輝く歯が見える。ニッと笑みを浮かべる。きりっとした目を作って見る。此の作業は毎日誰もいない所で行う。メイドの前でもSPの前でも絶対にしない。女王様は産まれた時から女王様なのだ。女王様は産まれた時から笑顔なのだ、天使の様な笑顔を持っているのだ。だから人前では決して練習をしている所を見せないのだ。

 ふうっと軽く吐息を吐きメルシェーダはポケットから挨拶の言葉を書いた四つ折りにされた紙を取り出した。

 紙をペラッと広げる。

「国民の皆様、今日はお集り頂きー。」

 と、軽く読み上げた後、又紙を折り畳み胸元にグイッと押し込んだ。

 トイレに掛けられている時計を見やると9時35分を指している。世紀の発表まで30分を切っている。メルシェーダは慌てて袖に戻って行った。

 袖に戻ると最終チェックを行っているのが見えた。 

「間に合った様だな。」

 朴訥なヤンが言った。

「おかげさまで。」

 おかげさまの意味が良く分からないがメルシェーダが言った。 

「それにしても、想像以上の人だなー。」

 ジャンフェルトが外をチラリと見やり乍ら言った。賑わう人ー。溢れ返るる熱気にシャッターチャンスを伺うカメラマンー。

 時代が移れどカメラマンは永遠の職業らしい。

 そんな溢れ買える群衆を見やり乍ら、さて、そろそろ行こうか。とマイケルが言った。そうだなー。一同似たり寄ったりな言葉を返し、残り6カ国の代表が登壇上に向った。

 彼等の登場を見やるや、カメラマンがシャッターを押す。群衆が歓喜の声を上げ彼等を出迎える。其れに答える様にマイケル達が手を振った。

 沸き上がる国民を其の瞳に映し、メルシェーダは此の群れは何処まで続いているのだろうかと考える。

 国民は歓喜に満ちている。

 歓喜に満ちている国民は、我々に何を求めているのだろう?

 中華連合帝国に対しての宣戦布告。

 そして開戦。

 戦争。

 生々しい現実。

 …。

 違う。

 国民は尊厳を求めているのだ。

 此の狭いカプセルに押し込まれている国民は皆尊厳を求めている。戦争が起こる事で尊厳の無い者も其れを手に入れる事が出来る。

 職のない者は其れを手に入れる事が出来る。

 チャンスの無い者にチャンスが与えられるのだ。

 だから、連合帝国に対して残り6カ国の抵抗等に興味等無い。戦争するか否かに興味等無い。有るのは其れに対して自分達の状況が如何なるかだ。

 そんな事は18才のメルシェーダにも理解出来る。この世界の悲惨さもメルシェーダは知っている。

 世界の果てまで続いている様に思わせる此の国民の群れは私達に其れを訴えている。何もしなければ連合帝国に吸収されるだろう。そうすれば、自ずと自分達の立場は最悪のものとなる。

 だったら戦うしかない。

 戦えば世界は潤う。

 国民は皆此の言葉を待っている。

 其の言葉を聞く為に此処に集っている。

 心配なさらずとも期待に答えます。と胸中で呟き乍らメルシェーダは舞台に儲けられた椅子に腰を下ろし、胸の中に入れた紙を指でグイッと押し込む。横に腰を下ろした宇喜多は不思議な表情を浮かべ其の行動を見やる。

「胸が苦しくて…。」

 つい適当に言ってしまう。

「女性にしか分からない悩みですね。」

「え、まぁー。」

 と、適当に相槌を打つ。そしてフイッと周りを見やる。マイケル以外の者は腰を下ろしマイケルは登壇したままマイクの前に進んだ。

 軽くマイクをポンと叩く。

「皆さん。今日はお集りありがとう御座います。私はSDC最高議長のマイケル-モーガンです。こうしてここから見ると西洋人、東洋人と様々だが、そんな区別も今日で無くなります。」

 間欠的に結果を促すと観衆は大きな声を高らかと響かせた。

「それではまず、重大発表の前にメルシェーダフランス女王陛下から国民の皆様に挨拶をお願いします。」

 マイケルはそう言うとスッと左手を差し出した。メルシェーダはスカートの裾をギュッと掴み。どうしましょ、挨拶の言葉を落としました。と、宇喜多に言った。

「落とした ?」

 宇喜多が聞き返す。

「はいー。恐らくトイレに落としたのかと。」

「成る程、其れで何を落とされたのです ?」

「挨拶の言葉を書いた紙です。」

「紙ですか。此のご時世に紙をお使いですか。」

「はい、為来しきたりですので。」

「そうですか、其れは困りましたな。しかし、此れと言って難しい事を言う必要も有りません。肩の力を抜いて登壇すればいい。」

「ええ、でも不安で。」

「なら、言葉が詰まりましたら私の方を見れば良い。助け舟を出しましょう。」

「本当ですか。其れは心強いです。」

 そう言うとメルシェーダはニコリと笑顔を浮かべて見せる。

「頑張って来て下さい。」

 宇喜多の言葉に、はい。と言葉を返しメルシェーダは登壇した。

 数えきれぬ程の民衆の群れが、瞳に映る。

 恐らくこの日の事は、高校や大学のテストで出題される様になるのだろうとふと思った。そんな事を考えると歴史的瞬間に此の場所に立っている自分は歴史の一部なのだと感慨に耽ってしまう。

 そんな事を考えると緊張した。手が、足が震えている。こんなに緊張したのは久しぶりだ。否、初めて登壇した時以来かもしれない。

 初めて登壇した時は確か7才の時だった。その時も緊張した。緊張し過ぎて自分が何を言ったのか殆ど覚えていない。大失態を仕出かした様な記憶も有るが、其れもうる覚えである。

 恐らく今日の出来事は、人類が初めて宇宙に進出した日よりも大きな出来事の様に思える。後少しの時間で六つの国が一つになり、人類史上初めての宇宙戦争が始まるのだ。歴史的瞬間と言っても大袈裟ではないだろう。だからこそあの時の様な大失態はおかせない。自分の言った事を覚えていないと言う事は絶対にしては行けないのだ。だからメルシェーダは自分の言葉で国民に伝えようと決めたのだ。

 メルシェーダはポンとマイクを叩く。そして軽く息を整え民衆を見やった。

「皆さんお早う御座います。」

 メルシェーダの挨拶に会場から異常とも言える程の声が響き渡る。何処までも広がっている地球とは違い限りある空間の中で其の声は、必要以上に大きく響いていた様に感じた。

「今日は天候にも恵まれ最良の日となりました。あの、すみません少し緊張して。」

 そう言うと、メルシェーダは水を一口飲んだ。そして天候が良いのは偶然ではなく管理されている以上必然である事に気付く。

 まったく歴史的瞬間に大失態である。この一文は後の世にも語り継がれるのであろう。頬を赤らめ乍らおでこをポンポンと叩いてみせる。

「あ、ああ。えっと天候が良いのは当たり前ですね。空には晴天が広がり私達を光が照らしています。今の此の風景だけを見れば、私達は幸せの中にいる様な錯覚を覚えます。しかし、現実は違います。皆様も周知の通り、中華人民圏は此の数世紀で巨大な帝国に成りました。最も昔から国自体は大きかったらしいのですが、決して裕福ではなかったと聞きます。

 そんな国が今は唯一の黒字国家と成っています。そしてあろう事か今では帝国とまで歌っているのです。全ての発端は…。全ての発端は…。」

 とメルシェーダは宇喜多を見やる。宇喜多は小さな声で火星採掘計画と伝える。

「そう、火星採掘計画…。此の計画が提案されたのはいつ頃だったのでしょうか ?

 確か…。私が産まれる遥か昔…。」

 と、又宇喜多を見やる。宇喜多は2167年と伝える。

「そう、2167年前後だったと聞きます。もう、何世紀も昔の話。其の頃の地球は決して穏やかな物ではなく、小さな震災、大きな震災。原子炉の爆発に核廃棄物の処理に頭を悩ませていました。しかし、嫌な事ばかりでもなく。豊かな恩恵も有りました。其れは自然です。あれは人が作りし物ではなく。地球が私達に与えてくれた贈り物だったのです。」

 そう言ってメルシェーダは虚像の空を見やる。

「海があり、山がありーー。

 野には花が咲き、木々が揺れーー。

 鳥は囀りーー。

 其れはーー。

 当たり前の様に存在しーー。

 あっという間に枯れ果ててしまいました。

 人が摘み取る其の残酷さは、利便性と言う大義名分のもと切り捨てられていったのです。 

 そしてやがて来る。

 終焉。

 其れは徐々に。

 そう、徐々に。

 私達に伸し掛かってきました。

 500年前に其の計画が持ちかけられた時、誰がそんな言葉に耳を傾けたのでしょうか ?地球の死滅説を誰が信じたのでしょうか ?

 だけど、今は違います。

 地球の荒れ果てた砂漠を見れば分かります。

 此の枯れた海を見れば分かります。

 地球が死滅するかどうかは知りません。

 しかし、やがて住む事が出来なくなる事は、誰にでも分かると言うもの。

 だからこそ宇宙開発共同体は火星採掘計画を実行する事にしたのです。

 各国の技術を投入し、宇宙ステーションを作り、宇宙コロニーを建造し。其れを中継地点として火星に辿り着きー。そして火星ステーションを建造しました。

 其れを手がけたのがワーカードールと呼ばれる人形達です。

 人形は火星の上から見下げる人々に操られ意のままに動きました。

 人形は空気の無い火星でも問題なく稼働し、ステーションの修理や、採掘作業にも勤しんでくれました。


 それから1世紀。


 気が付けば、宇宙には無数の宇宙コロニーが建造され、宇宙ステーションが我が物顔で存在する世界になっておりました。

 そう、地球には最早住む場所が限られて来ていたのです。

 そして何よりも世界の流通は宇宙が中心と成りつつもあり。

 しかし、不安は消えません。

 人々の心の中から核の恐怖を拭い去る事が出来ないでいたのです。周知の通り初期の宇宙コロニーの原動力は原子炉ー。

 そう、原子炉で電力を作っていたのです。

 だからこそ人々は火星に期待した。

 新たな鉱物。

 新たな物質。

 そして、期待する火星の進化。

 本物の空気を思いっきり吸いたいと思う欲求。

 地球の思いが。

 今更肥大する。

 そして、来る。

 結果。

 地球を離れた人類は其の寿命を大幅に伸ばし。80歳とされていた寿命は180歳に迄伸びました。太陽光を直接浴びなくなった人類の成長は大幅に遅れをきたす様になったのです。

 地球に住む人々と宇宙に住む人々、そして火星に住む人々の間で大きな隔たりを生む結果と成り。其れを回避する為に人は7才から18才迄の11年間は地球で過ごす事が、義務づけられました。しかし、其れは容易な事ではなく、莫大な費用を国民が負担する事になりました。

 其れの打開策として、高校卒業後の3年間は軍隊に入隊する事で、国が其の資金を提供するようにした。

 それでも増え続ける人々をカバーできるだけの財力は国には無く。

 結局此の打開策は人身売買や、奴隷を生む結果に繋がりました。

 そんな時代の中、中華人民圏が火星で鉱物を発見したのが2347年の5月29日。

 この日全世界は喜び。

 歓喜しました。

 此れで核の恐怖から救われる。

 経済が発展し雇用が増える。

 新たな希望がー。

 人類を包みました。

 しかし中華人民圏は其れを我が国の所有物としたのです。

 でも、此れは規約違反。

 宇宙開発共同体。

 其れは各国が一丸と成って新たな鉱物を採掘し新たな世界を創造する為に、力を合わせて行っていた事。

 決して見つけた者勝ちではありません。

 しかし、其れに耳を傾ける彼等でもありませんでした。

 彼等は軍隊を大量投入し其の場所を陣取り。其の所為で小さな戦争が起こりましたが、結局鉱物は中華人民圏から譲られる形で話が纏まったのです。其の結果採掘現場の雇用は中華人が独占してしまい、貧富の差は縮まる事は有りませんでした。


 それから又1世紀。


 宇宙コロニーの原動力は全てリアクターに変更され、名称をライフカプセルに変更し、其れに伴い安全性は格段に飛躍しました。

 地球に対しての環境汚染も改善され、環境は少しづつではありますが良き方向に進み始めたのです。

 しかし、世界は其れで満足はしない。

 各国々には其れなりの為来りがあります。

 軍隊がある以上冷戦状態は続く。話が纏まっても許してはいない。

 軍隊は強化され、宇宙専用にワーカードールを元にしたウェポンズ-ドールが作られました。

 ワーカードールの様に外部から操るのではなく人が直接乗り込み稼働できる様になっているのです。

 そして中華人民圏も鉱物を餌にロシア、台湾、シンガポール、カナダ、イタリア、等主要国を飲み込み。

 そして後の1世紀をかけ彼等は、自らの血を敵の杯に持った。

 血は繋がり。

 固い結束力を持つ。

 中華人の血を受け継ぐ国々はその後、中華人の大統領を選任しー。やがて中華人民圏に吸収された。

 

 中華連合帝国の始まりです。


 それから5年。


 力を蓄えた中華連合帝国は、私達SDC加盟国に新たな技術の提供を求めてきました。其れは次世代型無線供給システムEolと光学迷彩技術、そしてWOMの技術提供です。

 此れ等の技術提供を拒めば、火星鉱物の提供を中止すると彼等は通達してきました。勿論、鉱物の提供が無くなれば、依存のライフカプセルは機能しなくなる。持って1年。しかし我々の技術を提供すれば、鉱物の提供は今まで通り行われる。

 しかし、其れを信用出来るのでしょうか?

 彼等は其の技術を持って我々の国を吸収しようとするのではないでしょうか?

 だからと言って抗った所で此の1年で中華連合帝国の持つ鉱物を奪えなければ、全てが終わります。

 よしんば、火星から鉱物が発見されれば問題は無いのですが、危険な掛けである事に変わりません。

 ライフカプセルを捨てて地球に帰還させる事も出来ますが、全ての国民を地球に帰還させる事は出来ません。

 何より今大量の人が地球に帰郷すれば、地球死滅説は現実の物と成るでしょう。

 そう考えれば、彼等に属する事も別にかまわないとさへ思ってしまう。

 ただ、過程が悪すぎました。

 彼等の取る手段は結果的には正しいのかもしれない。世界の国々を一つにまとめ。一丸と成って地球の環境改善に努める。

 本心は知りもしませんが、理屈はそうらしいです。

 でも、矢張りやり方が汚すぎました。

 此れでは。


 信用しようにも。

 信用できません。


 仮に従い、生きながらえたとしても、其れを良しと思わぬ国民が、海賊として国を失うかもしれません。


 ですから色々な事を思案した結果、我々は、彼等に技術提供をしないと言う結論に至りました。。此の判断を国民の皆様は無益な選択と思うやも知れません。

 しかし、よく考えて下さい。

 今の我々の状態は飼い犬と同じであると言う事を。

 鎖に繋がれた奴隷と同じであると言う事を。

 だからきっと、長い目で見れば、何れ此の選択が正しいと思える日がやってくるでしょう。

 其の時、国民の皆様は声を張り上げてこう言うのです。

 今日。

 今日この日が、私達が自由を手に入れる為に、初めて一つになった記念すべき日だと。」

 語尾を強め力強くメルシェーダが言った。其の言葉に民衆は声を高らかに張り上げメルシェーダを讃えた。

 マイケルはチラリと宇喜多を見やる。

 宇喜多もマイケルを見やる。

 ヤンがジャンフェルトがヒィレッツが各々を見やった。

 まったく、自信が無いと言っていたわりにペラペラと良く喋る。結局マイケルの仕事が無くなってしまった。

 マイケルはヤレヤレと言った感じで胸元から煙草を取り出し一服点ける。不謹慎と思うかもしれないが此の時代では普通である。禁煙、喫煙等と言う隔たりは存在しない。マイケルは煙を吐き出し乍ら群衆を見やった。

 まさに女王様万歳と言った感じである。そして当のメルシェーダも満更ではない感じである。メルシェーダは両手を前に出し国民の声を鎮めた。

 そして頃合いを見計らいニコリと万遍の笑みを浮かべ。

「SDCはこの瞬間を持って。宇宙政府統一連合。SuAgに名称を変更する事にしました。此れは残り六カ国が一つの国家となった証でもあります。

 そして2492年7月5日、宇宙政府統一連合は中華連合帝国に宣戦布告を申し付けると同時に、世界協定第13項の3を適用し此処に奴隷の解放を宣言します。」

 そう言ってメルシェーダは右手を高らかと上げ、国民に手を振った。此の瞬間歴史は新たな幕を開ける事となったのだが…。

 成る程やらなければ行けないと思ったのではなく、メルシェーダは宣戦布告と言うやつをやってみたかったのか。と終わってみて初めて宇喜多は其れに気が付いた。

 確かに幾ら人の寿命が延びたとはいえ早々経験出来る事ではない。と、宇喜多はジッとメルシェーダを見やる。

 18才の無拓なメルシェーダは、フイッと振り返り宇喜多にニッと笑みを浮かべてみせた。

 紙を忘れたねぇ…。

 と、胸元からチラリと出ている紙を見乍ら宇喜多は笑みを返した。


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