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エンドレスウォー【終わりのない戦争】  作者: ヒナギ【AbsoluteShadow】
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1.回想にふけて、目覚めた朝

ローゼンクラウディアの話をしよう。

太古、私が思うにそれほど昔ではない時のことだ。

【ローゼンクラウディア】という一つの国があったそうだ。

【ローゼンクラウディア】を統べる王は、国民から選ばれる代理王と共に政権を担い、国に安寧と秩序をもたらしていた。誰もがその両王を信頼し、そして両王に忠実であり続けていた。

だが、喜劇は突如悲劇へと謎の変貌を遂げる。

両王が座に就いて凡そ五年が経った辺りから、農作物の不作が始まった。当時はよくある不作だということで特段気にしていなかったが、その半年後の二毛作でも同じ結末が待っていた。

あまりにも不振に思った王は代理王と共に国の畑という畑を片っ端から見て回った。しかし、そのどれにも異常は見受けられなかったのである。国民は王に問いを投げた。

「この不作はどうすれば元のように戻りますか」と。

それに両王は答えることができずに、「すまない」とだけ答えた。王は涙で頬を濡らしながら無念の心情をその民に述べ、必ず不作の要因を突き止めると全国民の前で宣言した。

両王は来る日もその要因についてあらゆる方向から憶測や意見を出し合い、検査と調査や聞き込みなどを続けたが大した情報を得ることができなかった。

だが不作より二年後、諦めかけた王はうなだれながら帰る調査の帰り道に人でない何かを目撃する。

王は臣下を万全の状態で送り出し、もう一度調査に赴かせたが、その臣下たちが帰ってくることはなかった。

翌朝、その付近の農民が臣下たちの無惨に四肢を引き千切られ、臓物の掻き出された原型を留めていない遺体を発見したと直接王の元を訪ねてきた。

両王は臣下を失った悲しみを押さえながら全兵力を率いて直々に調査に赴いた。だがそこで見たのは想像を超える残酷な殺され方をした臣下の姿があった。

それを見た兵たちは精神的に不安定すぎる状態になり、隊列がバラバラになったところを()は襲ってきた。前列の前衛隊を一瞬のうちに切り捨て、異変に気付き前進してきた後列隊の首を一つ残らず落として消え去った。

あとに残されたのは、血に染まった畑と左右守護隊と両王だけであった。

国民たちはあまりに絶望的な状況に恐怖した。私たちは知らないなにかに淘汰されるのかと。

国の中には二つの意思を持った集団ができあがっていた。

人外であるなにかを【駆逐】することを主義とする派、

人外であるなにかから【退く】ことを主義とする派。

その実態を目にした両王は涙を流しながらあることを決めた。それは、国を解体することだ。王は「これ以上私が治めてもこの状態は変わらない」と言い、両派リーダーに国の主権を渡し、両王は国を解体したのちにこの地を去った。

それから幾年もの月日が流れた。両派は国を立ち上げ、それぞれ【ローゼン】【クラウディア】と国を二つに分けたという単純な意味合いで、戦いが終わればまたもとの【ローゼンクラウディア】に戻れるようにという意味合いを込めて両国王によって決められた。

そのうち【ローゼン】は唯一、人外に立ち向かう集団であるという意味を込めて【唯一のローゼン】と呼ばれるようになり、

【クラウディア】は戦争と安全を天秤に計り、その意思決定を行ったという意味から【天秤のクラウディア】と呼ばれるようになった。

こうして【ローゼンクラウディア】は

【唯一のローゼン】と【天秤のクラウディア】の二つに二分されたのだ。



少し長すぎたようだ。

過去を振り返っていても今をどうにかしなければ結局過去と同じ轍を踏む事になる。人外であるなにかはほぼ不死身であり、首を切り落とすより他に生命活動を止める術はない。

だが人外の速さを誇る彼らの首を切り落とす事は至難すぎるのだ。

そこで人類は魔法を思い付いた。だが魔法を使えるわけがないと多くの民衆が諦めた。だがそれを実現させようとする人はいた。長きにわたる実験の末、彼らは一定の精神力と集中力、強い意志を明確に持つことで魔法を使えるという事を実証した。

研究者たちは今までの富を捨て、全力で魔法の研究に当たった。その結果、研究者たちは魔法を見つけ、人類の活路を拓くという強い意志により、ある時、魔法を発見した。それは情報であった。


どうすれば魔法が使えるのか?


その答えは、知らずのうちに頭の中に展開されていたのである。魔法を使う方法が彼らには分かってしまったのだ。だが、まだこれが証明できる訳ではないと踏んだ彼らは次に、火を灯すことを研究の目標にした。すると目標にしたのにも関わらず、わずか数分でそれを行ってしまったのだ。

これにより人類は魔法を発見し、それを活用して人外を退ける術を獲得した。だが相変わらず人外に有効な攻撃方法は存在しない。



朝日が照らす小部屋の中で虚ろな意識をハッキリさせるように頬を二度叩いて起き上がる。

カーテン越しにさしこむ朝日を浴びるのには正直飽き飽きしていたところだ。そろそろカーテンを変えようかなと欲をだして考えていると、ある記憶が脳裏をよぎった。いや、フラッシュバックだ。

血に染まった自分の服と辺りに散らばる肉片が見える。その向こうには……()がいる。

そこで急に現実に引き戻される。あの日から決意は揺らがなくなった。大切な人を殺した人外を、この世から駆逐する意志が。

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