プロローグ
念願のお店のオープン日は朝早くから快晴だった。大して宣伝したわけではなかったが、開店1時間前から列ができるほどだった。
お店の名前は【レリーフ・アポセカリー】
セーヌ様が決めてくれた名前で、安らぎの薬店という名前らしい。
お店に来てくれた人の心が、そして薬を必要としている人の気持ちが少しでも楽になりますように。
私の願いにも沿っていて、とても素敵な店名だと思っている。
「すごい人だな」
二階の窓のカーテンを少しだけ開けて、リディアスが整った顔を険しくして呟いた。
今日はオープン記念として、薬を定価の1割引にしている。だから、普段取引をしている貴族の遣いだけでなく、平民らしき人も多く並んでいる。
万が一トラブルになった時のために、今日は家から兵士とリディアスが応援に頼んでいるが、お願いしておいて本当に良かった。
『みせがはんじょうするのはいいことだけど、へんなやつもふえるとおもう。ミリルはきをひきしめていかなきゃね』
「変な奴ってどういうこと?」
カーテンを閉めたリディアスの横に立ち、薄暗い部屋の中で、手のひらに載っているシイちゃんに尋ねた。
『いままでのしょうばいは、パパたちがやってくれていたけど、これからはミリル。おんなのひとだからって、なめてかかるきぞくもいるかも』
「そうか。そう言われればそうね」
部屋を明るくするためか、キラキラ光っているシイちゃんの話に納得してうなずく。
「俺もずっと一緒にいられるわけじゃない。守衛はいるが油断はするなよ」
「心配してくれてありがとう! でも大丈夫! 負けたりしないわ!」
「負ける負けないの話じゃないんだが……」
宣言した私を見つめ、リディアスは苦笑した。
リディアスが心配する気持ちは理解しているし、軽んじているつもりはない。だけど、不安ばかりをクローズアップしていても良くない気がした。
「時には慎重に。時には豪快に進まないと駄目かと思うのよ」
「……わかった。だけど無理はすんなよ」
リディアスはそう言って、私の頭を優しく撫でた。
店が軌道に乗れば、私とリディアスは結婚する。リディアスは待つと言ってくれているが、そう長く待たせるわけにはいかない。
2年以内にはと思いつつ、少しでも早まればというのが私の希望だ。
「ミリル、リディアス、もう時間になるわよ」
階下からコニファー先生の声が聞こえた。部屋にある壁時計を見ると、オープン時間5分前を切っている。
「今行きます!」
元気に返事をして、リディアスとシイちゃんに宣言する。
「少しでも多くの人を笑顔にできるように頑張るわ!」
『シイもがんばる! とくとうせきで、くすりがきくように、ねんをこめるね!』
そう意気込んでくれたシイちゃんの居場所は、お会計のカウンターの上と決まっている。
シイちゃんを優しく握りしめ、リディアスと顔を見合わせ、私たちはコニファー先生が待つ一階の店舗へと急いだ。
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