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世界史エッセイ

世界恐慌の影響

作者: しゃいん
掲載日:2026/08/11

世界恐慌、人々の飽くなき欲望 ( 経済核爆弾 ) の破裂が世界に波及していく過程を考察してみました

歯車の噛み合い( 産業革命とバブル )


18世紀末にイギリスで上がった蒸気の煙は、150年をかけて世界を一つの巨大な機械へと変え上げていた

大西洋を挟んだアメリカでは、フォードの工場から数分ごとに自動車が生まれ、ラジオからは最新のジャズが流れる

大量生産と大量消費の歯車が完璧に噛み合っていた


「アメリカの繁栄は永遠だ、株を買えば、誰でも金持ちになれる!」


ウォール街にはプロの投資家から靴磨きの少年までが群がり、実体のないバブルが膨れ上がった

産業革命がもたらしたテクノロジーへの過剰な期待は、世界中から資金を呼び込み、熱狂の頂点に達していた


弾けた泡、連鎖する歯車( 世界恐慌 [経済核爆弾の破裂] )


1929年10月24日、ウォール街の株価ボードが真っ赤に染まった

あまりの暴落に、誰もが我が目を疑った、バブルは弾けたのだ

恐るべきは、産業革命によって世界経済がすでに「地続き」になっていたことだった


アメリカの銀行は、第一次世界大戦の復興のためにヨーロッパへ貸し付けていた資金を、生き残るために強引に引き揚げた (信用収縮)

ドミノは一瞬で倒れた

ドイツの銀行が潰れ、イギリスの工場が止まり、海を越えたアジアの港でも輸出貨物が足止めされた

昨日までの豊かさは消え失せ、世界中の都市に失業者があふれ返った


引き裂かれた世界( ブロック化 )


「自国さえ助かればいい」絶望の淵で、大国たちは身勝手な防衛策に走った

イギリスやフランスは、世界中に広がる広大な植民地を身内だけで囲い込み、他国の製品に高い関税をかける「ブロック経済」を開始した


世界市場という一つの大きな円は、排他的な「ブロック」ごとにバラバラに引き裂かれた

この経済の壁は、植民地の乏しい「持たざる国」――ドイツ、イタリア、日本を完全に干上がらせた

彼らは市場から締め出され、飢え、自国の経済を維持するための資源すら手に入らなくなった


最悪の出口( 顛末 )


1939年、世界恐慌の発生から10年が経っても、経済の傷は癒えていなかった

しかし、行き詰まった「持たざる国」たちが、ブロックの壁を力ずくでぶち破ろうと軍隊を動かした

第二次世界大戦の勃発である


皮肉なことに、この最悪の大戦こそが世界恐慌の「本当の出口」となった

各国が戦争に勝つために大量の武器や航空機を発注したことで、工場は再びフル稼働し、失業者は戦場へと消え、皮肉にも景気は完全回復したのだ

産業革命がもたらした世界の繋がりは、富の連鎖ではなく、破滅の連鎖を生み出して幕を閉じた


***


蒸気の恵み、黄金の糸


大正末期、信州の山あいに、ガタゴトと小気味よい音が響いていた

産業革命がもたらした蒸気機関は、日本の伝統的な養蚕ようさんを劇的な近代産業へと変えていた


二十歳の青年・作造の家も、最新の機械式座繰機ざぐりきを借金で導入したばかりだ

「作造、見てみろ、この生糸の輝きを、アメリカの令嬢たちがこぞって欲しがる日本の宝だ」

父親は誇らしげに、白く輝く生糸を掲げた


フォードの自動車が走り、ラジオの音楽が流れる遠い大国アメリカ

そこへ輸出される生糸は、作造たちの農村に空前の豊かさをもたらしていた

誰もが、この繁栄が永遠に続くと信じて疑わなかった


暗黒の木曜日と、沈む村


1929年10月、海の向こうのウォール街で、人々の飽くなき欲望がもたらした実体のない株価のバブルが弾けた――「暗黒の木曜日」である

その余波は、瞬く間に太平洋を渡って作造たちの村を直撃した

アメリカの買い手たちが一瞬で消え、生糸の価格は3分の1以下へと大暴落したのだ


「なぜだ……真面目に良い糸を作ってきただけなのに……」


父親は、買い手のつかない繭の山を前に崩れ落ちた

翌年には米の大凶作も重なり、村は地獄と化した

借金は膨らみ、毎日の食事すら事欠く


作造の幼馴染や近所の娘たちは、わずかな身売り金と引き換えに都市の遊郭や工場へと連れて行かれた

残された子どもたちは飢えに泣いた

産業のグローバル化は、牙を剥いて平穏な日常を食い尽くした


閉ざされた世界、軍靴の足音


1930年代に入ると、事態はさらに悪化した

イギリスやアメリカ、フランスなどの大国は、自国の植民地だけで経済を囲い込む「ブロック経済」を開始

資源や植民地の乏しい日本を世界市場から冷酷に締め出した


「汗水たらして作ったモノを、どこも買ってくれない、世界は俺たちを見捨てたんだ」


娘の身売りなどが横行する農村の絶望と、かつて人種差別撤廃提案を否決し、今回もブロック経済で日本を冷酷に締め出した欧米とそことつながった政治や企業などの支配者層への激しい不信感が渦巻く中、ラジオから勇ましい声が流れた


『我が関東軍、満州の権益を確保!』


資源が豊かで、日本の商品を売る市場にもなる新天地

農村出身の兵士たちを抱える軍部は、「満州こそが、この地獄から脱出する唯一の道だ」と叫び、困窮する国民はそれを熱狂的に支持した、そこに活路を見出そうとしたのである



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