あの時「破壊」を選択していたら
選択肢の浮かぶ空間で、ライとレイは互いの瞳を見つめ合った。
静かな空間に漂う重い空気。背後には、かつての平和な未来を示す光も影も、もう存在しなかった。
「これが本当に、俺たちの道なのか」
ライの声はかすれ、迷いと覚悟が入り混ざっていた。
「わからない。でも、もうこれしか……」
レイは短く息を吐き、視線をそらさずに兄を見つめた。
『破壊』
互いに頷いたその瞬間、世界の空気は裂けるような轟音とともに変化した。
光と影が渦を巻き、時空が歪む。その空気は重く燃えるような熱を帯び、すべてを制圧する。
その瞬間、戦いの火蓋は切られていたのであった。
勇者一行は、果敢に攻撃の構えを取る。
勇者と剣士は剣を振り抜き、魔術師は炎と雷を解き放ち、勇気と使命感に満ちた戦いの姿を見せていた。
魔王とその配下の悪魔たちは、悠然とその攻撃を受け流し反撃をする。
ライとレイは先程までの笑みも和解の言葉も、まるで幻であったかのように、この世界に溶け込んでいた。
冷たい瞳、引き締まった表情。二人の間には互いを止めるためではなく、互いに破壊を仕掛ける覚悟だけが残っていたのだ。
「魔王様は何も悪くない、封印していたお前たちのほうが悪だ!」
レイの叫びは怒りに塗れ、強く響き渡る。
そのままライに向けて、全力の攻撃を放つ。
ライもまた息を整え、胸の中に渦巻く理想を信じ、静かに戦闘態勢を取っていた。
「平和のために……、お前を止める!」
その言葉は、決して弟を想う愛の証ではなく、使命と絶望の中で生まれた刃でもあったのだ。
空気が裂けるような衝撃とともに、ライとレイの攻撃は何度も激突する。
火花と魔力の残滓が渦を巻き、戦場は嵐のような光と闇で包まれていた。
周囲の勇者や魔王、悪魔たちも巻き込まれ、混沌の渦はますます深くなっていく。
互いを守りたいと思った感情も、愛情も、すべてが破壊のための力に変わっていたのであった。
「なぜ……、どうして……!」
レイの心に浮かんだ言葉は、すぐに理性と憤怒に押し流されてしまう。
「俺たち、これしか……」
ライもまた、心の奥で痛みを覚えつつ、しかし止まることなどできなかった。
「俺たちの選んだ道だ、この全てを破壊するのみ!」
叫びとともに、二人は互いを全力で攻撃し、力をぶつけ合う。
***
やがて建物は崩れ、石の壁は粉塵となる。
炎と煙、数多の魔力の渦が空を覆い、城は戦いの爪痕で荒れ果てた廃墟と化していた。
魔王と勇者も、悪魔と人間も、もはや誰も立つことはできずにその場に倒れ伏す。
ライとレイも、互いに攻撃を繰り返した末に、静かに地面に倒れていた。
互いの姿を見つめ合う目は、愛も憎しみをも超えて、ただ疲弊と虚無を表すかのようでもあった。
「……おわった、のか……」
レイは、かすれた声で呟いた。
ライもまた、かすかな呼吸を感じながら、目を伏せる。
世界は、静寂に包まれた。
戦いの熱は去り、残ったのは瓦礫と煙、そして双子の存在だけであった。
選択したその道は、未来も希望をもすべて打ち砕き、ただ混沌と絶望を世界に刻み込むだけであったのだ。
もはや互いに触れ合うことも、微笑むこともできはしない。
戦いにのみ存在意義を見出した双子は、最後の瞬間まで、世界の混沌の中に溶けていった。
破壊は、完了した。
しかしその果てに残ったのは、静かで深い絶望だけであったのだ。
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