結末やいかに(完)
時の流れは戻り、勇者一行や悪魔たちは互いに対峙していた。
そして互いに、ライとレイというよく似た存在を見つめ目を丸くしていたのであった。
しかし双子だけは、以前とは異なる想いを抱えて一歩前へと強く踏み出した。
そして、互いの仲間を振り返りこう声を上げていた。
「実は俺たちは……、生き別れた双子の兄弟だったんだ」
「もうこれ以上、争わないでほしいんです」
その言葉に力を込めるものの、勇者一行は身構えることを辞めなかった。
そして、事態は容易に収まることはなかった。
「レイ、何を腑抜けたことをぬかすか。我は勇者の手によって封印され、多くの仲間を失ったのだぞ?」
魔王のその怒りは衰えておらず、放たれた一撃はライに向けて襲いかかる。
咄嗟に、レイはライの前に飛び出した。
その衝撃は、全てレイの身へと降り注ぐ。
「ううっ……!」
「レイ!」
ムウが駆け寄ろうとするものの、魔王の攻撃によって阻まれてしまう。
そして勇者一行もまた、その攻撃に向けて新たな攻撃をぶつけていた。
「レイ、……」
ライはレイの身を支え、クリスに回復を願った。
しかし、クリスは静かに首を振った。
「魔物には、俺の聖なる力は毒になるんだ」
その言葉を耳に入れたムウは、思わずその力を振り払い颯爽とレイのもとへと翼を広げた。
「やめろ!……これ以上、レイに触らないでくれ!」
そうレイの身を抱き上げ、ムウは魔王に向けて攻撃を放つ。
「魔王様、よくもレイを!」
次第にそれは、内輪の争いへと発展していく。
魔王とレイを抱えたムウが、衝突していたのだ。
「皆、引き上げよう!これ以上ここにいたら、無駄に怪我を負うだけだ!」
勇者一行も安全を確保しながら逃げるものの、混乱を極めた悪魔たちの戦闘に巻き込まれることもあった。
それでもなお、一行は城門に向けて引き返す。
やがてレイは、ムウの腕の中で意識を取り戻していた。
だが目の前には、なおも自らを取り合う魔王とムウの姿があったのだ。
「レイを寄越せ、さもなくばお前まで消し炭にしてみせようぞ」
「俺は、レイを守ると誓った!」
その姿に、レイの涙は自然と頬を伝っていた。
「……やめてよ、……もう、これ以上争いたくはないんだ」
その涙が魔王の腕へと触れると、そこから強い光が溢れ出す。
「ぐあああっ!」
その聖なる涙によって、魔王の輪郭は徐々に消えはじめていく。
「……レイ……なぜだ……」
「争いのない世界を……、俺は望む……」
そのような言葉に、その泣き顔に。
魔王は最後の力を振り絞り、黒い霧と共に静かにレイの頬に触れた。
「……我は、破壊の中でしか生きられぬ……。ならばせめて、お前の腕の中で果てたい……」
大粒の涙が頬からこぼれ落ち、魔王は静かに消滅した。
ムウは静かに、レイの肩を抱き寄せていた。
「……もう、大丈夫だ。レイ、誰もお前に触れさせはしないよ」
魔王消滅により、城内の悪魔たちは力を失ったように大人しくなる。
そしてそのことを嘆き、静まり返った。
***
魔王消滅の気配は、庭で束の間の休息をとる勇者一行にも強く伝わった。
「気配が、消えた」
「そうみたいだな」
「しかし、油断をしてはいけませんよ」
「ライ……、大丈夫か?」
「……レイは、レイは……」
弟の身に何かあったのではないかと、ライは静かに身震いをした。
レイはムウとともに、双子の兄ライの姿を探していた。
そして庭で、その姿を見つけていた。
ライはムウに抱き上げられるレイの姿を見て、ほっと息をつく。
「……全て、終わったんだな?」
「魔王は、消え去ったよ……」
その言葉に、勇者一行はざわめいた。
そしてレイをはじめ、城内の悪魔たちは皆頭を下げていた。
「俺たちはもうこれ以上、無駄な争いをしたくないと思っています。ですから……、このままお引き取り願えませんか?」
ムウもまた、静かに告げた。
「俺たちは……。レイと共にいることができれば、それで充分です」
そのような言葉に対し、ライは寂しげに問いかけた。
「せっかくまた会うことができたのに。……レイは、これでいいのか?」
レイは微笑み、手を伸ばしてライの手を強く握った。
「うん。ライ兄さんも……、これからも元気で。そして、幸せにね」
双子は手を取り合い、互いの手をそっと離した。
「望み通り、私たちは引き上げることとしよう」
勇者一行も静かに礼をして、その場に背を向けた。
もう二度と、誰も振り返ることはない。
ライは道中背後を気にしてしまうものの、クリスがそっとその背を支えた。
「大丈夫だ。きっと、向こうも幸せになるはずだ」
「……そうだね」
こうして勇者一行の旅は、思わぬ形で終わりを迎えることとなったのである。
***
その後、レイはカイラスと共に主を失った城で穏やかな日々を過ごすこととなった。
ライは勇者一行と国へと戻り、魔王消滅の報を伝えていた。
国王は驚くものの、何も言うことはなく、ただ静かに平穏な未来を信じて頷いた。
「ご苦労であった」
ライはクリスと共に、教会へと戻り平和な日々を過ごしていた。
時折遠く離れた弟のことを思うものの、レイが元気で幸せに生きているということを信じ、まっすぐ前を見つめていた。
魔王消滅後、世界は再び穏やかになり、悪魔たちもそれぞれの役目を終え、互いに平和の中で日常を取り戻しつつあった。
双子の絆は時空を超えて、世界の秩序の中で静かに息づき、そして新たな物語の幕を開けるのであった。
それは永遠に続く、幸せの物語でもあったのだ。
END
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
この後は、いくつか番外編が続きます。




