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凹の水平線〜ララバイゼロ〜  作者: テルマエ出前
第1章:最強と呪い
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第8話:再生の元凶と雷鳴の魔法使い

◾️変人兄弟と調査依頼


「さて、どうじゃろうな?」


白衣の老人はニヤリと笑った。その胡散臭くもどこか親しみのある顔に、レイトは既視感を覚える。


「もしかして…本当に、ペンデンテスの魔銃店の店長と兄弟、なんですか?」


レイトの問いかけに、老人は縦に長く白い髭を扱きながら嬉しそうに頷く。


「そうじゃよ。あれはわしの弟でな、小さい頃から魔道具を爆発させては、わしに修理を押し付ける困った奴じゃった。今でも変わっておらんじゃろ」


男は懐かしむように遠い目をする。そして、レイトの耳に視線を移すと、眉間に深い皺を寄せた。


「ふむ…やはり、魔力加護の模様がないな。弟も同じような反応じゃったろな?」


レイトは、戸惑いながらも自分の身の上を話した。ペンデンテスで魔力がない自分に合った武器を探していたこと、そこで勧められたクロスボウのこと、そしてシュイレーンまでの道中で、再生能力を持つ魔物に襲われたことを。


「その魔物がいる洞窟へ、これから行こうと思っているんです」


レイトは懐から魔封じの矢の残りを取り出し

老人に差し出す。


「これしか残ってないんです…」


老人は、レイトの話を聞きながら、特に「魔封じの矢」の話になったとき、その表情を一変させる。


「ふむ…これは、聖水を媒体に、魔物の魔力を乱す術式を刻んでおる。効果は高いが、複数に敵に対処するのは厳しい。特に、洞窟のような場所ではな…。拡散型の方もオススメされたかの?」


レイトは首を横に振る。老人は深くため息をついた。


「やはりそうか。あいつも心配じゃのう…先のことをあまり考えない性格じゃ。しかし、お主が手にしたその矢は、残りわずかじゃろう。わしが、もっと良いものを作ってやろう」


老人は、レイトの話を遮り、店の奥から特別な矢を数本取り出した。矢の先端には、青白い光を放つ小さな結晶がついていた。


「この矢は**『拡散型魔力飽和の矢』**じゃ。放つと対象に反応して頭上で炸裂、周囲の敵の魔力をも一時的に飽和させ、再生能力を鈍らせる効果がある。洞窟の奥にいるという、異常な再生能力を持つ魔物には効果覿面じゃろう」


老人は、ニヤリと笑った。


「それと、これを…。お主のクロスボウはなかなか良い造りをしておる。洞窟に行くのじゃろう?ならば、これを持っていくが良い。**『錬金術式照明』**じゃ。こっちが本業なのじゃよ、ホッホ」


老人は、クロスボウに装着できる小さな器具をレイトに手渡した。それは、手のひらサイズのガラス管で、中には金色の液体が満たされている。


「これをクロスボウに装着すれば、暗闇でも強力な光を放つ。よく見えるじゃろうて。わしの弟が作った武器じゃからのう、機構は同じじゃ」


なぜ親切にしてくれるのかレイトが尋ねると

老人は笑って言った


「わしが謎の老人に見えてるのじゃな、ホッホ。危険なところに集まる冒険者が、ワシの装備を見てどう思うかな?ただで生活しているわけではないのじゃよ」


レイトは、感謝の言葉を伝え、研究所を後にした。





◾️パーティー共同戦線


研究所を出ると、レイトはエリアスとアーレイが待つ宿屋へと向かった。宿のロビーには、すでに二人の姿があった。


「お待たせ、二人とも」


「レイト、遅いじゃない。どこで道草食ってたのよ?」


エリアスが不機嫌そうに問いかける。レイトは気にせず、錬金術師の老人の話と、もらった新しい矢と照明器具のことを話した。


「ふぅん、面白そうな変人兄弟ね」

エリアスはそう言って、わずかに興味を示した。


「それで、これからどうするんだ? まさかこのまま洞窟へ突っ込むんじゃないでしょうね?」


「ああ、もちろん。その前に、ギルドで正式に依頼を受けておこうと思って」


レイトがそう言うと、アーレイが静かに答える。

「私も賛成です。他のパーティーが受注しているか確認してみましょう。」


三人は宿を出て、冒険者ギルドへと向かった。

ギルドの受付で、レイトは洞窟の調査依頼について尋ねた。受付の女性は、レイトの顔を見て少し驚いた表情を見せる。


「ああ、あなた方!先ほど洞窟の不穏な噂を気にされていた方ですね。やはり、その調査を?」


レイトが頷くと、彼女は少し心配そうに顔を曇らせた。


「その依頼でしたら、少し前に別のパーティーが受注していきましたよ。ただ、調査依頼は複数のパーティーが同時に受けることができるので、問題ありません。でも…どうぞ、ご武運を。無事でいてくださいね」


受付の女性はにこやかに答えた。レイトは、正式に依頼を受注すると、二人に振り返る。


「よし、行こう!洞窟へ!」


「ふん、その老人の矢とやらで、さっさと片付けちゃいましょ」


エリアスはぶっきらぼうにそう言い、アーレイは無言で頷いた。三人は街の東にある洞窟へと向かった。


洞窟の入り口は、不気味な瘴気に包まれ、嫌な予感がする。その時、洞窟の中から、一人の少女が現れた。


「ひっ…うう、やっぱり、怖くて入れません…」


少女は黒髪で、ふわっとした髪の間から、黄色のインナーカラーが見えている。手に持つ金色の杖を震わせながら、泣き出しそうな顔でレイトたちを見上げた。


「あ!あなたは、ギルドの人ですか…?私、パーティーメンバーが怖がって逃げちゃって…一人じゃ行けなくて…」


エリアスは少し呆れたような顔をする。

「違うけど、あんた一人で依頼に来たの?」


「うぅ…ごめんなさい…。でも、私、雷魔法が使えるので…」


「そっか、雷魔法が使えるんだね。僕たちと一緒に行かないか?」


レイトは優しく声をかけた。少女は顔を上げ、涙を拭くと、少しだけ微笑んだ。


「はい…!ありがとうございます…!私、ミナリーン、ミナリーン・クワバランって言います…」


ミナリーンと名乗った少女は、まだ少し震えているが、その目には強い意志が見て取れた。





◾️洞窟での共闘と新たな最強


洞窟の奥へと進むにつれて、再生能力を持つ魚やカエルのような魔物たちが次々と現れた。レイトはクロスボウに錬金術式の照明を装着し、道を照らす。


カチッ、という音と共に、矢を放つ筒の先端に淡い光が灯った。


ミナリーンは泣きそうな顔をしながらも、手のひらを前にかざした。震える声で詠唱を始める。


「て…、天から降臨せし雷の隕石メテオよ、わ、我が手に力を宿し、水に纏し邪悪な魔物に怒りの鉄槌を…」


「雷隕石の力を見よ!、『サンダーボルト!』」


ミナリーンの詠唱と共に、手のひらから眩い雷光が放たれた。青白い稲妻が、洞窟内の湿った空気を切り裂く。雷を受けた魔物たちは、ピクリと痙攣し、その場で動きを止めた。


レイトはすかさず、改良されたクロスボウを構える。彼の放った**『拡散型魔力飽和』**の矢は、魔物の頭上で炸裂し、再生しようとする肉体を一時的に鈍らせた。


「あんた、すごいじゃない!その魔法、効いてるわ!」


エリアスが叫び、腰から下げた魔銃を引き抜く。銃口から放たれた炎の魔導弾が、雷に痺れて動きの鈍った魔物の急所を的確に貫いた。アーレイも大鎌を振り回し、魔物たちを次々と切り裂いていく。


天から降臨せし氷の隕石メテオよ、我が手に力を宿し、水に纏し邪悪な魔物に懺悔の機会を…」


「氷隕石の力を見よ、『アイスレインガ』!」


アーレイが静かに呟くと、大鎌の刃に青白い光が宿り、洞窟の天井から鋭い氷柱が降り注いだ。再生しようとしていた魔物たちは、次々と氷柱に貫かれ、動きを完全に止める。


「えっ…氷魔法…!?初めて見ました…!」


ミナリーンが驚きの声を漏らす。アーレイは、ミナリーンを一瞥すると、再び大鎌を構え、淡々と戦いを続けた。


四人はそれぞれの能力を最大限に活かし、どんどん奥へと進んでいく。しかし、数が減らない魔物に、ミナリーンの顔から徐々に余裕が消えていく。


「こんなにたくさん…もう、杖だけじゃ…」


彼女はそう呟くと、腰から下げていたリボルバー式の魔銃を引き抜いた。銃口に雷が宿り、雷光をまとった魔導弾が放たれる。その魔導弾は、杖の魔法に劣らない速さで魔物たちを貫き、次々と倒していく。


ミナリーンは表情を固くしながらも、装填を繰り返し必死に銃を撃ち続けた。


そして、なんとか最奥まで辿り着いた。最奥には、巨大な地下湖があった。湖の中央には、リヴァイアサンが鎮座している。その頭は不気味に光っている。


エリアスがフンと鼻を鳴らし腕を組んで得意げに指差した。

「こんな化け物、さっさと片付けるわよ!」


「あれが…この異変の原因…!」


ミナリーンが震える声で呟いた。リヴァイアサンは、ゆっくりと目を開き、四人を睨みつける。その目には、憎悪と狂気の色が浮かんでいた。





◾️リヴァイアサンとの死闘、そして新たな覚醒


リヴァイアサンが咆哮を上げると、周囲の水たまりが沸き立ち、新たな魔物たちが次々と再生し始める。


「嘘…こんなに…!」

ミナリーンが絶望の声を漏らす。


「ミナリーン、下がってろ!」


レイトは叫びながら、クロスボウで**『拡散型魔力飽和』**の矢を放つ。矢はリヴァイアサンの頭上で炸裂し、その再生能力をわずかに鈍らせる。


エリアスが間髪入れず炎の魔導弾を撃ち込み、アーレイも大鎌から銀弾、氷魔法を飛ばして応戦した。


しかし、リヴァイアサンの圧倒的な力の前では、どれも決定打にならない。巨体が繰り出す攻撃に、一行は防戦一方となる。エリアスの魔銃が火花を散らしてオーバーヒートし、アーレイの魔力も底をつき始めているようだった。


「くそっ…!」


レイトは歯を食いしばり、最後の矢を構える。その時、リヴァイアサンが巨大な尾を振り上げ、ミナリーンめがけて振り下ろした。


「ひっ…!」


ニアミスで避けたミナリーンは悲鳴を上げて、その場に立ちすくむ。彼女は決意に満ちた顔で、震える手で杖を強く握りしめ、覚悟を決めるように声を張り上げた。


「天から降臨せし雷の隕石メテオよ!我が手に力を宿し、水に纏し邪悪な魔物に怒りの鉄槌を!」


「雷隕石の力を見よ、『ブラック・サンダーガ!』」


ミナリーンが詠唱を終えると、杖から放たれた雷は、洞窟内に轟くほどの音と共に、広範囲に稲妻を撒き散らした。それはまるで雷雲が洞窟内に現れたかのように、無数の稲妻が魔物たちに降り注ぐ。


リヴァイアサンは身をよじって苦しんだが

その巨体はビクともしない。


ミナリーンは激しい魔力消費に顔を青ざめさせ、その場に膝をついた。


「…嘘…」


その隙を突き、リヴァイアサンが再び巨大な尾を振り上げ、ミナリーンに迫る。


「ミナリーン!」


レイトが叫び、反射的にミナリーンの手を掴んで引き寄せた。直後、尾が地面を叩きつけ、凄まじい衝撃と土煙が舞い上がる。レイトはミナリーンを抱きしめ、自分の体が引き裂かれるような死の恐怖を味わう。


「……もう、ダメだ…」


その時、レイトが握りしめたミナリーンの手から、強く、そして痺れるような魔力が流れ込んできた。それは、ミナリーンの黒髪のインナーカラーと同じ、稲妻のような金色の光を放っている。


その光は、レイトの右腕を駆け上がり、彼が持つ剣に宿った。ミナリーンを庇いながらも、剣を振り上げる。


「うおおおおお!」


彼の叫びと共に、剣から金色の雷光を帯びた斬撃が放たれる。その斬撃は、リヴァイアサンの尾をまっぷたつに切り裂いた。


リヴァイアサンが苦悶の声を上げ、バランスを崩してよろめく。その瞬間、レイトは再び剣を構え、残った力をすべて込めて、隕石のかけらが刺さったリヴァイアサンの頭部めがけて渾身の一撃を放った。


「これで…終わりだぁぁぁ!」


雷をまとった剣が、リヴァイアサンの頭部を目掛けて轟と共にその雷の斬撃をくらわす。


リヴァイアサン頭部は砕け散り、胴体はもんどりうってゆっくりと湖に沈み、周囲の瘴気は薄れていった。


「やった…!」


顔から血の気が引いていくミナリーンは安堵の声をもらし、レイトにもたれかかる。


つづく。


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