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第6話:不穏な黒い霧

◾️新たな武器と戦術


旅立ちの朝。レイト、エリアス、アーレイの三人は、昨日のうちに調べておいた魔銃店へと向かった。


店の前には、いかにも高級そうな木材でできた看板が掲げられており景気が良いことが伺える。ガラス張りの窓から、様々な形をした杖や魔銃が陳列されているのが見える。


「わぁ…!すごい!ここ、パパのコレクションを思い出すわ!」


目を輝かせてはしゃぐエリアスを横目に、レイトは不安な顔で店内を覗き込んだ。


「なぁ、俺、魔力がないのに、ここで何を買えばいいんだ?」


レイトの言葉に、エリアスはぷいとそっぽを向いた。


「知らないわよ。でも、あんたの能力には何か秘密があるんでしょ?もしかしたら、この店ならそれに合うものが見つかるかもしれないじゃない」


そんな二人のやり取りを無視するように、アーレイは淡々と店内へ足を踏み入れた。


店内には、壁一面に並べられた魔銃や杖が並んでいる。店の奥から、白衣を着た老人がゆっくりと姿を現した。


「いらっしゃい。旅のお方かな?この店は、古都ザフィアに次ぐ品揃えを誇る。何かお探しかな?」


レイトは、自分の事情を老人に説明した。


「俺、魔法が使えないんです。でも、何か他にも使える武器はありませんか?」


老人は、レイトの耳元を見て、眉間に深い皺を寄せた。


「ふむ……確かに、魔力加護の模様がないな。この店にある武器は、すべて魔力に反応するよう作られている。残念だが、君が使えるものはないじゃろう」


レイトは、がっかりして肩を落とした。すると、老人はレイトの肩に手を置き、静かに店の奥へと彼を誘う。


「しかし、魔銃を買う金がない冒険者が、代わりに使う道具ならある。魔力とは無縁の、物理で戦う武器なのじゃ」


老人が指差した先には、木製の棚にずらりと並んだクロスボウがあった。それはクロスボウというより大弓の付いたハンドガンのような見た目に近い。レイトは驚き、目を丸くする。


「これは…クロスボウ?」


老人はニヤリと笑った。 「そうじゃとも。魔力が使えない者、あるいは、魔力を使わない者たちのための武器だ。これは、弾倉で矢の補充をし連続で矢を放つことができる。威力は魔銃には到底及ばないのじゃが、鏃のカスタマイズは無限で戦略の幅が広がるのじゃ」


レイトは、そのクロスボウに興味を引かれた。

(ああ、そうだ…前世でエアガンで遊んでいた感覚に近いのかもしれない)


レイトは、クロスボウを手に取り、その重みと手触りを確かめた。


魔力がない自分でも、これなら戦える。そんな確信が、胸の中に湧き上がった。


「これを買います!それと、この矢も…」 レイトは、通常の矢に加えて、特殊な矢を数本購入した。一つは、先端に特殊な魔力結晶が鏃の**「閃光」の矢**。


そしてもう一つは老人店長オススメの、魔物の魔力を封じ込める効果を持つ、先端が鋭く尖った**「魔封じの矢」**だ。 高級な聖水に三日三晩漬けて祈りが込められているという…独自に開発したという。胡散臭い。


レイトは矢とクロスボウ、そして食料品や長旅に必要な水筒、寝袋などを揃えた。エリアスとアーレイも、それぞれ旅の準備を整え、三人は街を出発した。


道中での戦い 街を出ると、目の前にはどこまでも続く一本道が広がっていた。遠くには、古都ザフィアへと続く街道が見える。レイトたちは馬車に乗り込み、西へと進路を取った。


馬車は、揺れが穏やかで、相変わらず乗り心地が良い。窓の外には、見慣れない色合いの木々が流れ、時折、耳慣れない鳥の鳴き声が聞こえてくる。


「ねえ、見て!あの花、初めて見たわ!」

エリアスは窓の外を指さして興奮気味に言った。


レイトは手綱を握りながら微笑む。アーレイは静かに窓の外の景色を眺め、その表情からは何も読み取れなかった。


数日後、一行は街道から外れ、森の中で野営をすることにした。火を起こし、簡単な食事を済ませると、交代で夜の見張りについた。


その日の見張りは、レイトの番だった。彼は焚き火の火を熾しながら、じっと耳を澄ます。森の奥からは、獣の鳴き声や、風が木々を揺らす音が聞こえてくる。


その時、遠くから、何かを引きずるような音が聞こえてきた。レイトは、懐からクロスボウと矢弾倉を取り出し、エリアスとアーレイに危機を知らせる。


(来たか…!)


レイトが息を潜めていると、森の茂みから、三つの影が現れた。それは、巨大な狼の姿をした魔物、**『シャドウウルフ』**だった。その瞳は赤く光り、口からは黒い吐息を漏らしている。


「レイト!シャドウウルフよ!」


エリアスが叫ぶと、アーレイが素早く大鎌を構えた。


「何か様子がおかしい…私は右のニ匹を引きつけます。エリアス様とレイト様は左の一匹を狙ってください」


アーレイが指示を出すと、彼女は迷うことなく、右の二匹のシャドウウルフに向かって駆け出した。その動きは、まるで風のようだ。


アーレイは、軽やかな身のこなしでシャドウウルフの攻撃をかわしながら、銀色の大鎌を振るう。一閃、二閃。鋭い鎌の軌跡が、シャドウウルフの体を切り裂き、同時に放たれれた銀弾の金属音が鋭く響く。


しかし、シャドウウルフは、その傷口から黒い煙を吐き出し、瞬く間に傷を再生させていく。


「シャドウルフが!?この再生能力…!」


アーレイは、顔を歪ませた。その間に、レイトの目の前には、一体のシャドウウルフが迫っていた。


「よしっ、今度は俺の番だ!かかってこい…!」


レイトは、クロスボウに閃光の矢を装填し

迷うことなく引き金を引いた。


矢は、シャドウウルフの目を貫き、爆発した。強烈な閃光が真夜中の森を昼のように照らし、直撃したシャドウウルフは悲鳴をあげて目を押さえる。再生能力を持ったシャドウウルフも、さすがに失った視力までは回復できない。


「今だ!エリアス!」


レイトが叫ぶと、エリアスは魔銃の引き金を引いた。炎の魔導弾は、目を潰されて怯むシャドウウルフに命中し、ジリジリと肉を焼く音が響く。しかし、一撃で倒すには至らない。


「私の魔銃で…殺しきれないっ…!」


エリアスは苛立ちを露わにし、奥歯を噛み締める。その時、アーレイが、エリアスに迫るもう一匹のシャドウウルフの攻撃を、自らの身を盾にして受け止めた。


「アーレイ!?」


レイトが叫ぶ。シャドウウルフは、体制を崩し倒れたアーレイに、その巨大な口を開け、襲いかかろうとしていた。


レイトは考えるより早く、体が動いていた。懐から剣を抜き、迫りくる牙を辛うじて受け止める。


体勢を崩しながらも、その反動を利用して大きく後ろに飛び退き、シャドウウルフとの距離をとった。


もしかしたらと、腰に下げた矢弾倉に手を伸ばした。カチャリと小気味よい金属音を立てて弾倉を抜き、クロスボウの弾倉を装填する部分に差し込む。そして、素早く弾倉のレバーを押し込み、**「魔封じの矢」**へと切り替えた。


「爺さんのオススメをくらえ!!!」


矢は、1体のシャドウウルフの脚の付け根に深々と刺さる。

その瞬間、傷口を回復していた黒い煙も止まりシャドウウルフの悲痛な鳴き声が森の暗闇に響く。

レイトは悟った。


「やった!エリアス!今だ!こいつはもう、ただの獣だ!」


レイトが叫ぶと、エリアスの目に強い光が宿った。

彼女は魔銃を構え、狙いを定めた。


「…舐めないでよね!」


炎の魔導弾が、魔力を失い動けなくなったシャドウウルフの頭部に正確に命中し、一瞬で消滅させた。


その様子を見た残りの2匹は、尻尾を巻いて森の影に消えた。


「はぁ…はぁ…やった…!」


レイトは息を荒げながら、倒れたアーレイに駆け寄った。

「アーレイ、大丈夫か!?」


「はい、レイト様。助けていただきありがとうございます。」


三人は、武器を下ろし息を荒げていた。

レイトは、手にしたクロスボウを見つめ、静かに呟いた。


「あの爺さんに勧められて、買っておいてよかった…」


エリアスとアーレイは、互いの顔を見つめ、静かに頷き合った。三人は、それぞれの武器と能力を最大限に活かし、なんとかシャドウウルフを討伐したのだった。


「ふん、遅いわよ!最初から早く打ちなさいよね!」


「わかんないよ!途中でもしかしたらって、思ったんだって!」


エリアスは逃げようとするレイトの肩をバンと叩いて戯れあった。アーレイは、そんなお気楽な二人を静かに見つめ、シャドウウルフの異常な再生能力に危機感を感じていた。


つづく。


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