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第4話:銀色の舞とナイトメア攻略

◾️新たな旅の始まり


マードック子爵の屋敷を後にしたレイト、エリアス、アーレイの3人は、街へ続く道を歩いていた。


父親の真意を知ったエリアスは、どこか吹っ切れたような顔をしている。


一方のレイトは、エリアスの新しい表情と、新たに行動を共にするジト目の銀髪美少女メイドのアーレイに緊張していた。


「と、とりあえず、次第クエストに行くぞ!」


そう言って、レイトは二人の先を歩き、冒険者ギルドへ歩き出すと、エリアスは、以前より少し柔らかい表情でレイトの隣に寄ってくる。


その背後を、アーレイが無表情に、まるで影のように追従していた。


「レイト様、お待ち下さい。バラス様から次の行き先を教えてもらっています」


「え? そうなの?」


レイトが振り返ると

アーレイは淡々とした口調で説明を始めた。


「バラス様は既に、隕石の欠片の在処の目星をつけておられました。場所は街の北に、ある古い墓地にそれがあるようです」


レイトとエリアスは驚いて顔を見合わせた。

バラスがすでにそこまで考えていたとは。


「なら話が早い!墓地に直行しよう!」


レイトが元気よく腕を上げると

アーレイが即座にレイトの手を下ろした。


「いえ、まずは冒険者ギルドへ行き『ナイトメア』の討伐クエストを受注しましょう」


エリアスが腕を組み替えして空を仰ぎ、貧乏ゆすりを始めた。


「でも、どうしてそんなに遠回りしなきゃいけないの? レイトの言う通り、まっすぐ墓地に行けばいいじゃない」


エリアスの問いに、アーレイは少しだけ視線を上げた。


「宗教上、隕石の欠片集めを目的とした行動は、メルスマ教会から疑念を持たれるかもしれません。」


「冒険者としてクエストを受注し、それに伴う形で墓地を訪れるのが、最も自然な流れと考えています」


「そして、私はメイドなので冒険者登録は不要です。同行者とさせていただきます。」


エリアスは鋭い目つきでアーレイを見た。


「何がメイドよ、メイド仕事よりずっとパパの同行者をしてたじゃない!」


エリアスの不機嫌な態度に、アーレイは小さく

「任務でしたから」とだけ答えた。


その声にはごくわずかに、上司ではなく、まるで自分の父親へ向けたのような響きが感じられた。


エリアスは、そのアーレイの僅かな表情の変化を見逃さなかった。


幼い頃から、アーレイが完璧に仕事をこなすたび、バラスが褒めるのを見てきた。


魔法が使えない自分と、何でもできるアーレイ。

その差が、エリアスの心に深い影を落としていた。


「ふん、同行者上等だわ!アーレイ、これからもよろしくお願いね」


エリアスはわざと冷たい口調で言い放ち、アーレイを睨んだ。


アーレイはただ無表情にエリアスを見つめ返す。

その視線は、まるで感情のない人形のようだった。


レイトには、二人の間に流れる、張り詰めた空気が理解できなかった。ハーレム系に冷戦ってあるのか?





◾️魔武具屋での銀弾と再会


3人はギルドに到着し、依頼の中から**《討伐依頼:街の北にある墓地に現れた『ナイトメア』の討伐》**を見つけ、エリアスがリーダーとして受注した。


受付嬢は、エリアスがDランクのレイトを連れていることに少し驚いたようだったが、特に何も言わなかった。


その帰り道、アーレイは淡々とした口調で

レイトとエリアスに告げた。


「今回の敵はアンデッド。銀の魔導弾が効果的です。魔道具屋で補充を」


「銀の魔導弾? そんなものあるのか?」


レイトが首をかしげると、エリアスは呆れた顔でレイトを引っ張った。


「あんた、本当に何も知らないのね! 街の魔道具屋に行けば、色々な種類の魔導弾が売ってるわよ、私が最近、炎の魔導弾を買ったところなら案内できるわ」


3人は、冒険者ギルドから少し離れた魔道具店を訪れた。


店の中には、様々な色の光を放つ魔導弾や、奇妙な模様が刻まれた杖が並んでいる。


奥からローブを纏った、鼻の大きい魔女のようなおばあさんが顔を覗かせた。


「お嬢ちゃん、また来たねぇ、炎の魔導弾の焼き加減はいかがだったかな?」


エリアスは魔銃を構えてみせて

バッチリポーズを取った。


ああ、弾代安くしてもらったんだな


「ところでおばあさん、銀の魔導弾ってありますか?」


レイトが尋ねると、魔女系おばあさんは棚の奥から、銀色に輝く弾丸の入った箱を取り出した。


「その娘さんたちのためかい?」


魔女系おばあさんはそう言って、エリアスとアーレイを交互に見る。


レイトはここがイケメンの見せ所と

言わんばかりに腕を上げ、得意げに言う。


「…もちろん! 俺が二人のために買うんです!」


レイトはそう言い放つと、魔女系おばあさんは満足げにうなずき、銀の魔導弾をレイトに手渡した。


「銀の魔導弾、5つセットで……3万メオだよ、払えるのかい?」


魔女系おばあさんの言葉に、レイトは持っていた財布の中身を開いて、固まった。お金の管理はアーレイが今までやっており、レイトには貨幣価値が分からないまま生きていた。


「えーっと、銀貨が3枚、いや4枚くらい…ですか?」


レイトが狼狽していると

アーレイがスっと前に出た。


「レイト様、お気持ちはいただきましたので…」


アーレイはそう告げると、懐からきっちりと整理された小銭入れを取り出し、魔女系おばあさんに代金を支払った。


親父はアーレイの丁寧な所作と、迷いのない態度に感心したように頷く。


エリアスは不満げな態度でアーレイを睨む。


「はぁ? なんであんたに買わせなきゃいけないのよ!私は自分で買えるんだけど!

エリアスが不満そうに口を尖らせる。

アーレイはそんなエリアスを見ても無表情なままだ。


「バラス様から預かった軍資金で、今回の旅の必要経費は全て賄うことになっています。エリアス様の為を思って、バラス様が用意されたお金です。」


エリアスはぷいと顔を背け、腕を組んでそっぽを向いた。


すると、エリアスはふと思い出したかのように

魔銃を撫でた。


「あ、そうだ、私…銀の魔導弾は使えないのよ」


エリアスがそう呟くと

親父は納得したように頷いた。


「そうねぇ、お嬢ちゃんの魔銃は、炎の魔導弾にのみ最適化されているからねぇ」


エリアスは悔しそうに静かに頷いた。





◾️銀と炎の剣


街から外れ、3人は墓地へと向かった。昼過ぎに出たはずなのに、あたりは霧に包まれ夜のような、不気味な雰囲気が漂っている。


「なんか、すごい嫌な予感がするな」


レイトがそう呟くと、霧の中から、朽ちた体を引きずるゾンビが数体現れた。レイトは剣を構え、斬りかかるが、ゾンビは彼の剣をものともせず、ゆっくりと近づいてくる。


「っ! やっぱり俺の剣が効かない…!」


その時、エリアスが魔銃を構えた。彼女は震える手で、炎の魔導弾を魔銃に装填する。


「私のだって、使えないわけじゃないんだから…!」


エリアスはそう呟くと、魔銃の引き金を引いた。轟音と共に炎の弾丸がゾンビに命中し、ジリジリと肉を焼く音が響く。ゾンビは倒れたが、一撃で消滅するような威力はなかった。


「くそっ、やっぱり…!」


エリアスが悔しさからか、歯を食いしばる。その様子を見たアーレイは、銀色の大鎌を構えた。その大鎌には、魔導弾を装填するスロットが5つあり、彼女はそこに銀の魔導弾を装填する。


「私がお守りします、エリアス様」


アーレイがそう呟くと、彼女の瞳に銀色の光が宿った。鎌を振るうと、5つの魔導弾が連続して発射され、ゾンビの群れを瞬時に消滅させた。


「す、すげぇ…」


レイトが唖然としていると

奥から新たに複数のゾンビの群れが現れる。


アーレイは鎌を一度振るい、次いで左手をかざした。すると、彼女の掌から青白い光が放たれ、光の玉が空中で複数の氷柱の形を成す。


「天から降臨せし氷の隕石(メテオ)よ、我が手に力を宿し、闇に彷徨う屍に懺悔の機会を…」


「氷隕石の力を見よ、アイシクレイド!!」


アーレイが手を前にかざすと青白い冷気とオーラを纏った氷柱が風を切るように放たれ、ゾンビの頭に次々に命中し音を立てて砕け散った。


初めて攻撃魔法を見たレイトは

子供のように目をキラキラさせた。


すっご!詠唱もあるし、ここは本当に魔法の世界だったんだ!


エリアスは、その光景を見て息をのんだ。アーレイは魔導弾を使いこなすだけでなく、自分の魔力で魔法を発動させることもできる。それは、エリアスが欲して、しかし手に入れることができなかった力だった。


「なんで、あんたはいつも…! どうしていつも凄いのよ…!」


エリアスは悔しさからか、握りこぶしを震わせ、アーレイを睨みつける。


しかし、アーレイは一切の感情を見せず、ただ淡々とゾンビを片付けていく。


その様子を見たレイトは、二人の間に流れる、張り詰めた空気が理解できなかった。


すると、墓地の奥から、一体の巨大なゾンビが強烈な瘴気を放ちながら現れた。


両手にはまるでサーベルタイガーのような爪が伸びている。


「こ、こいつ、ナイトメア!?」


エリアスが叫ぶ。ナイトメアは、炎魔導弾を浴びても、その巨体はびくともしない。


ナイトメアは嘲笑うかのように被弾した箇所を掻き、エリアスに向かって、鋭い爪を振り下ろす。エリアスは恐怖で身動きが取れない。


「エリアスお嬢様!」


アーレイが呪文詠唱を中断し、ナイトメアの顔に数発、銀魔導弾を発砲、独特な金属音が響く。間一髪だった。


ナイトメアはよろけて大きな尻餅をつき砂埃をあげる。


「エリアス!手を!」


レイトはとっさにエリアスの手を掴んだ。

しかし、剣は炎を帯びない。


「くそ、なんでだ…!」


レイトは焦る。なぜ、エリアスが死の恐怖を感じているのに発動しない?彼の能力は、一体何をトリガーにしているのか、レイトにはわからなかった。


ナイトメアは、ゆっくりと立ち上がると大きな口を開け、黒い瘴気を吐き出した。瘴気に触れた墓石は瞬く間に腐食し、地面は毒々しい色に染まっていく。


「ひっ…!」


エリアスが小さく悲鳴を上げて転んだ。


ナイトメアは再び、その禍々しい目を鳥のようにパチクリさせながら、レイトたちを覗き込むように眺める。


まるで嘲笑ってるかのようだ。


「や、やめろ…くっ、俺が相手だ!」


レイトは剣を構えながら、転んだエリアスのヘイトを自分に向けるようナイトメアににじり寄る。


しかし、勇気を出して斬りつけた彼の剣は、ナイトメアには傷一つ与えられないほど無力である。


レイトは焦燥に駆られる。


んーくっそ、腹立たしいほど無力な俺…何もできない…!


アーレイが必死に躍り出て、大鎌で応戦するが、ナイトメアは構わずレイトに攻撃を仕掛ける。


「くっ、このナイトメアは何かおかしい!異常過ぎます!

一時撤退した方がいいかもしれません!」


アーレイが撤退の提案を言いかける前に、レイトはナイトメアの攻撃の風圧で飛ばされた。


「うわっ!!」


「レイト!!!!!」


エリアスは恐怖に顔を歪ませながらも

地面に転がったレイトを庇うように前に出た。


「あんた、バカなの!? なんで私を庇うのよ!」


レイトはエリアスの言葉にハッとした。彼女の震える手、そして必死に彼を助けようとするその姿。


自分を庇って死んでしまうかもしれない。 その考えが、レイトの脳裏に、強烈な自己への死の恐怖と同期した。


レイトは強くエリアスの腕を掴んだ。

するとエリアスの耳の紋様が赤く光を放ち

剣が炎を帯び、彼の体から力が引き出される。


レイトはゆっくりと立ち上がり、ニヤニヤと首を半回転させて覗き込むナイトメアを睨みつけた。


「これで終わりだ!うっぉぉぉぉ!!!」


レイトが剣を縦に大きく振り下ろすと、炎の刃がナイトメアを両断する。その巨体は、苦しみ悶え燃え尽き、黒い灰へと変わった。


「…やった!…ぞ…あれ…!?」


(動悸が止まらない…!?)


レイトは一瞬よろめき、口を抑えたが

エリアスの方を向いて笑顔でガッツポーズをした。


「すごいわ、レイト……」


エリアスは、驚きと安堵の入り混じった表情で、レイトを見つめた。


ナイトメアが消えた後には、手のひらサイズの小さな紫色の石が残されていた。レイトはそれを拾い上げる。


「…これが、隕石の欠片なのか?」


つづく。


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