第36話:朽ち果てた遺跡
■ 巨龍の胎内
「……なんだ、この場所は。よく見る遺跡の壁じゃねぇな。床も壁も、全部が金属みたいな陶器か何かでできてやがる」
内部の天井の鉄骨は鍾乳洞のように垂れており
隙間から強風が抜けて女性の叫び声のように響く。
バクロがダンケスを横たえ、肩で息をしながら周囲を睨む。入り口の狭さからは想像もつかないほど、内部は広大で、複雑な空洞が奥へと続いていた。
外では砂嵐が猛威を振るい、外壁に叩きつけられる灰の音が、巨大な鐘の中にいるような低い唸りとなって響いている。
ミナリーンが心配そうにダンケスの顔元にしゃがんだ。
「ダンケスさんの呼吸が荒くなってます!早く何か処置をしないと…」
「ああ、出血はなんとか布で抑えてきたが、傷口が塞がってないし…かなりヤバい状況だ」
バクロが首を横にやるせなく振る。ダンケスに悟られまとしてきてたその仏頂面が少し歪んだ。
その姿を見たレイトは思い立ってこう言った。
「ダンケスの傷口を塞ぐもの探してくる!」
「…わかった……俺はここでダンケスの面倒を見る」
「レイトさん…ひとりじゃ死んじゃうかもしれないので一緒に行きます!」
「だ、大丈夫さ………」
ミナリーンが目を細めてレイトにグイと顔を近づけた。
「私たち、仲間ですからねーって」
レイトは仰け反りつつ、恥ずかしそうに言ったこと
「…やっぱり頼む」
バクロが呆れた顔で叫ぶ。
「ああ!もういいから早く行って来い!ダンケスがもたねぇんだ」
レイトとミナリーンは薄暗い内部の奥に進んでいく。遺跡の内部へ進んでいくと、長い廊下にいくつも部屋がある場所へ出た。
「ここって変な部屋ばかりですねーって。ドアがスライド式になってますし、ドアノブもないなんて…昔の人はどうやって出入りしてたんですかね」
「自動ドアだったんじゃないかな、ほらコンビ!…いや、どうだろうねハハハ」
ミナリーンは不思議そうにレイトの顔を覗いた。
「…レイトさん転移してきたって言ってたと思うんですけど、転移前の土地はどんな感じだったんですか?」
「…転移魔法とかじゃない、全く別の世界から来たって言ったら驚く…?」
ミナリーンはキョトンとしてレイトを見る。
「へへ、今さら驚かないですよーって。白い見慣れない服も着てますし、ドアノブもいらないハイテクな町来たんですよねーって」
「そう、日本に住んでたんだ」
「ニホン…?やっぱり聞いたこと無いです。たぶんすっごく遠いところから飛ばされてきちゃったんですね」
「ああ、トラック…馬車みたいなのに轢かれて死んだんだと思う。目覚めたらこの土地に来てた。そしてペンデンテスでエリアスやアーレイと出会ったんだ」
レイトの顔が曇り始める。
ミナリーンが前に躍り出て指を立てた。
「あ!またレイトさん自分のせいでとか思ってますよね?」
「…」
「私がレイトさんのパーティに入った時、みんなイキイキとした表情で活気がありました。エリアスさんもアーレイさんもきっと大丈夫です!」
レイトは顔を上げてミナリーンを見た
「ああ、もうウジウジするつもりはないよ。また一から助けに行く方法を考えよう」
レイトがそう返答したと同時に奥の部屋から物音がした。何か水に濡れたものが引きずる音が微かに聞こえる。
「なんだこの音…どこかで聞いたことあるような…」
すると部屋のドアから黒いタコのような職種が伸び、閉まっていた扉が勢いよく破壊されて土煙がのぼる。
「魔物!?」
「ミナリーン!隠れよう!」
レイトとミナリーンは咄嗟に通路の角に隠れた。
魔物は複数の目をあらゆる方向に向けてびっしりと付いており、触手が無数に身体中から生えている。
「あれ…私の国で見たことない魔物です」
「俺はペンデンテスの洞窟で見たことある、炎に弱いはずなんだ」
コケだらけの冷たい通路に黒い粘液で覆われた壁に触手を這わせて何かを求めるかのようにキョロキョロとあたりを見回している。
ミナリーンはリボルバーを構えてレイトを見る。
「私、が引き付けますよーって!レイトさんは私の後ろにいてください」
レイトは首を振った。
「ダメだ、あいつは炎じゃないと全然効かないんだ。いったんこっちに逃げよう!」
レイトはミナリーンの手を引っ張り、別の通路の小部屋に隠れた。
「やれますよーって!私、でっかいトカゲみたいなの一人で倒したんですもん!」
ムゥー顔のミナリーンを横目に、レイトは部屋の隅の箱から異様な色の白い紐が垂れているのを見つけた。
「これ…なんだ?包帯かな?」
レイトはしゃがみ白い紐のようなものを掴むと、激しく苦しみ始めた。
「ううううううっあ!」
「っ、レイトさん!!!」
ミナリーンは驚き、レイトを紐から引き剥がそうとするが手が離れず突っ張る。
すると突然、紫色の閃光が部屋を貫き
箱から何かが飛び出た。
「キューーーーーー!!!!」
つづく。




