第33話:背負う者たち
レイトは土煙が立ち込める中、呆然と瓦礫の向こうを見つめている。
バクロは、顔面蒼白になったダンケスの肩を抱えようとした時、ゴロゴロと呼吸が荒くなっているのを聞いて口を震わせた。
「ダンケス…頑張り過ぎだな、後で…ビールでも飲もうか」
バクロは俯き口を震わせて、引き締めた。
そしてレイトとミナリーンに顔を向けた。
「向こうに外に出られるところがある、ついて来い」
「レイトさん…行きましょう…」
ミナリーンが頷き、レイトの手を引っ張ろうとしたが、レイトは冷たく振り払った。
「俺は…死なないだけのクソ男だ…。仲間も置いて、みんなに助けられるだけの…」
レイトが俯き鼻を啜る。
「俺が、俺自体がもっと強ければ!俺が!」
バクロがダンケスを静かに寝かせ、レイトの方に近づいた。
「こっちを向け」
レイトが振り向くと同時に、目の前に拳が現れて大きな音が広場に響いた。レイトは尻餅をついてバクロを見上げる。
「そうだ!!お前は弱いし、死に損ないの馬鹿野郎だ!弱音を吐いても強くなれねぇんだよ!嫌ならそこでシクシク泣いてろ。ああ…ハハ、お前死ななそうだしな、ここで一生後悔するにはいいじゃないか?どうせ何もできないんだろう」
レイトはわなわなと肩を震わせ、起き上がってバクロに掴みかかった。
「お前に…お前に…!何がわかるんだ!俺だって辛かったんだ!ああああああ!!」
レイトは拳を上げて殴り返そうとするが、バクロの拳の方が速かった。
「お前のことなんか知ったこっちゃねぇ!!」
「っ!」
レイトは顔面に、再度猛烈な一撃を喰らい唇を噛み出血するも、踏ん張ってバクロの顎にカウンターを喰らわせた。
バクロが一瞬よろめく。
「ハハ、まだ…できるじゃねぇか…」
「レイトさん…」
ミナリーンが心配そうにレイトを見つめる。
レイトが膝を突いて微かな声で言った。
「2度も…アーレイを見捨てたんだ…」
バクロが鼻血を袖で拭いて頭を掻きながら
そっぽを向いて言い放った。
「…さっきは俺を守ろうとしてくれたんだろ…ありがとな」
レイトは顔を上げた。そこには情けない悲壮な顔が現れていた。
「ハハ、そんな顔するなって、お前はまだやれるってことを…伝えたかっただけだ」
ミナリーンが目を丸くしてバクロの方を向いた。
「バクロさんって意外と、イケメンなとこあるんですねーって」
「そ…そんなんじゃねぇよ!」
バクロはフンとそっぽを向いた。
その横顔は天井の隙間から差した光に、三日月が赤々と照らされたようだった。
「レイトさん…行きますよーって。みんな大丈夫ですよ、レイトさんが思ってるより強いんですから」
ミナリーンがしょぼくれたレイトの手を優しく引いて歩き出した。
一行は最初の広間からハチミツを食べた空間に戻ってきた。バクロが暗闇の奥を指し示す。
「この倉庫がある線路の先に、トロッコがある。少し歩くことになるかもな」
「…あ!」
ミナリーンが強引に無気力のレイトを引きずって、倉庫の中に入っていく。
「レイトさん口を開けてください!はい、あーん」
レイトの口の中に甘く濃い味が広がっていく。
前世で食べたことのある懐かしい味。
「はちみつってこんなに…甘かったっけ…おいしい…」
ミナリーンが二口目を準備し、レイトに微笑んだ。
バクロがダンケスを背負い直し、呆れて天を仰いだ。
つづく。




