第31話:冷雷の対面
白い魔法陣から、空気を凍らせるほどの冷気が迸り、凄まじい轟音と共に巨大な氷塊が炸裂した。
カメレオンの断末魔が充満する中、広間全体に衝撃波に粉雪が舞い散る。
バクロは荒い息を吐きながら、松明を掲げて結果を確認しようと目を凝らす。
「くたばったかこのバケモノが……。ダンケスよくやったな…」
力尽きて動かなくなったダンケスを抱え上げようとした時、土煙の中心から、一際冷たく澄んだ光が放たれた。
金属のような凄まじい硬質の音が響き渡り、土煙が晴れる。そこにはカメレオンではなく、人影が片手を挙げて立っていた。
バラバラと砕ける音が響き、人影の足元に氷が砕け散り、バクロの足元にカケラが転がる。
荘厳な模様が描かれた銀色の甲冑、そして銀色のお面。胸元に飾られた宝石が寒々しい光を放ち、右手には冷気を纏った大槍を携えていた。
レイトは地面に膝をついたまま
甲冑の人物を見上げた。
「なんだ!?あの甲冑!?」
「あ、新しい敵!?」
ミナリーンが銃を構え直す。
「こ、こいつ!俺の魔法を防ぎやがったのか!?」
バクロは地団駄を踏み、目を細めて相手を見やる。
銀色の甲冑は挙げていた片手を下げ、右手に持っていた槍を回転させ間髪入れずにバクロに飛びかかる。
「くっ!」
バクロは咄嗟に避けたが、横腹を掠めて出血し、赤い雪が舞う。
「ぐぁ!!」
銀色の甲冑は槍を半回転させしならせて、受け身に失敗したバクロの胸めがけて突き攻撃を放つ。
「させるか!」
レイトが飛び込み、バクロの胸手前寸前で攻撃を受け止めようとするが、銀色の甲冑は槍を引き、即座に持ち替えてレイトの胸を深く突き刺し貫通する。
「うっ…あ…!」
槍が引き抜かれると、レイトはもんどりうってその場に倒れた。銀色の甲冑は血糊を払い、ミナリーンとバクロの方をゆっくりと向いた。
「死に損ないが…俺を守るために…」
バクロは半身を起こし片腹を抑えながら、微動だにしなくなったレイトと見つめた。
「また!!…レイトさんを……よくも!!!」
ミナリーンが血相を変えてリボルバーを連射し、湿った空間に青白い閃光と共に叫ぶ声が響く。
銀色の甲冑は閃光フラッシュの中、一発を槍で弾き返しつつ俊敏な動きで避け、氷槍を構え体制を直した。
「あなた!当然出てきて誰なんですか!レイトさんを…こんな、こんな酷い目に遭わせて!覚悟してください!」
ミナリーンは相手から一切視線をズラさずに装填を行う。落ちる薬莢がキリンキリンと鋭く響かせた。
「なかなか良い弾筋でした。申し遅れましたが…我が名はノースレイ、これが最後の挨拶になるでしょう」
鋼鉄の仮面からこもるその声は、どこか悲しげで、そして美しく響いた。
「女…!?」
バクロは目を丸くした。
ノースレイは氷槍の底を地面に叩きつけると衝撃波が広がり、ミナリーンの長い髪を靡かせる。
「そろそろ終わりにしましょう」
ノースレイが片手を上げて、呪文を唱えると同時に
胸の紫色の宝玉が輝き出す。
「あなたがその気なら、私は手加減しませんから!」
ミナリーンもすかさず片手を上げ、呪文を唱え始めた。
吹雪と雷電が空間を席巻し始める。
つづく。




