第26話:不安定の最強
◾️白鱗と紫雷
ミナリーンが地下に降りていくと、柱が規則正しい感覚で並んでいる開けた空間が広がる。壁には松明がかけられて薄暗いが視界はなんとか確保できる程であった。
「面白い造り…、古代遺跡ってなんだが無機質な感じがするかも」
次の瞬間、壁が大きな音ともに吹き飛び土煙が立ち込める。ミナリーンは手で顔を庇った。
「何!?」
土煙が晴れると、男たちが転がっているのが見えた。その男らの体は不自然にひしゃげており、原型を留めていないように見える。
(嘘…あれ…人!?)
ミナリーンは無惨な死体を前に身震いし、リボルバの弾を確認して構えた。
壁の奥から、ドスドスと何かが歩いて来る音が聞こえ始める。
破壊された壁から出てきたのは、巨体のトカゲのようであった。角が複雑な形状で伸びており、その皮膚は白い鱗で覆われており、尻尾は三叉であった。
巨体トカゲはミナリーンの方を目をパチクリさせて見る。その目の奥には知性を一切感じさせない恐ろしさが宿っていた。
(何あれ…今まで見たことない魔物!)
ミナリーンは強い恐怖を感じ、銃口を向ける。巨大トカゲが大きな鳴き声をあげ、壁伝いに這ってミナリーンに急接近した。
「こ、こないで!!!」
ミナリーンはリボルバーに雷の魔力を込めてパンパンと2発撃つが、いづれも当たらない。
(動きが速い!?やばい!!殺される!!)
大きなトカゲは鋭く大きな爪を伸ばし、ミナリーンに斬りかかろうとしたその瞬間、風を切るような音と共に大きなトカゲは飛ばされる。
(何が起こったの!?)
別の通りから何か車輪を転がすような、ガラガラとした音が聞こえる。
「ふぅ間に合ったぜ…。おい、お前!生きてるか?」
通りの陰から出てきたのはバクロであった。松明の明かりによって照らされると、彼はバリスタ(大弓兵器)を率いていたことが分かった。
「ザフィアが大陸からの防衛戦争に使ってたお古なんだよこれ、いつか使うと思って手に入れていてよかった」
バクロの後ろにいたダンケスが指を刺して叫んだ。
「お頭!あのトカゲまだ生きてます!」
「クソ!ダンケス!再装填急げ!」
ガチャガチャとバリスタをいじる音が聞こえる。
ミナリーンは気を取り直して銃口を大きなトカゲに向ける。
大きなトカゲは背中に大きな矢が刺さった状態だったか、痛がる様子を見せず、起き上がって今度はバクロの方に顔をやった。
「やばい!ダンケス!急げ!!!」
「今、やってますって!!!」
ダンケスが次の矢を設置し、引き絞ろうとした。
しかし、捻りバネがほつれ破損、バリスタの発射口はバラバラに破損し、矢は思わぬ方向へ飛んでいく。
「うわ!!」
ダンケスは砕けたバリスタの破片に直撃し後方へ転がる。バクロも衝撃で壁に叩きつけられる。
大矢はミナリーンの頬を掠めて、壁にあたり土煙が上がる。
「きゃ!!」
ミナリーンは尻餅をつく。大きなトカゲは微動だにせず、バクロらに飛び掛かる前動作を行っていた。
バクロは壁に寄りかかりながら、必死にミナリーンに叫んだ。
「こいつは…雷に弱いんだ!頼む!お前の力を貸してくれ!」
ミナリーンはハッと我に帰り、立ち上がって右手を掲げた。
次の瞬間、魔法陣が足元に展開され、ビリビリと髪の毛が静電気を帯びてクラゲのように浮く。
(あれ…?!以前よりも魔力の流れる速さが違う!)
壁伝いに電気が拡散し、辺りが青白い電気まみれの世界となる。
バクロの髪の毛は逆立ち、体がビリビリと痺れ始め、ガタガタと震え始めた。ダンケスは意識を失いながらも地面をバタバタと、釣り上げられた魚のようにのたうち回っている。
「私の魔法、ちょっと危ないので離れててくださいね!」
「あがががががが」
(ちょっとどころじゃねぇ!なんだ…これ!?俺の知ってる雷魔法じゃねぇぞ!!)
バクロは震えながらも、そのミナリーンの姿を見て、心臓の鼓動が早くなるのを感じた。
「天から降臨せし雷の隕石よ!我が手に力を宿し、邪悪な魔物に怒りの鉄槌を!」
ー雷隕石の力を見よ、『ブラック・サンダーガ!』ー
ミナリーンが手を振り被すと白黒の眩い光が発せられ、バチンという激しい音と共に、トカゲに紫色の電光が直撃した。
壁伝いに紫の電気が広がり階段を伝って、地上のレイトまでをも包み込んだ。
バクロがゆっくりと目を開けて、大トカゲの方を見た。
(…!?なんという威力だ…。)
白い鱗で覆われていたトカゲは、立ち尽くしたまま
真っ黒の炭と化していた。
つづく。




