第22話:展開魔法と放出魔法
◾️記憶
そう、俺は毎日不安だったのだ。
平凡に、普通に恵まれていたはずなのに。
テストの点は平均点台だが、赤点を取ることは少なかったと思う。スポーツは…苦手だったかもな。
クラスメイトはいつも俺に微笑んで話しかけてくれたし、特に虐められもしていなかった…と思う。
でも、俺は前世でちゃんと笑っていただろうか。
顔が一人で笑い返していただけだったかもしれない。
たまに小説を読むこと以外趣味も無い。
部活は入っていたんだろうか?
バカみたいな、ふざけた事は言わなかった。いや、本当は冗談を言うのが怖かったんだ。真面目で優等生風にするのだけは得意だったのだ。ハハ、真面目風無能だったな今思えば。
俺に”友達”はいたんだろうか。思い出せない。話しているはずなのに、そこにはいつも、誰もいない感じがしていた。なんだが毎日寂しかったような気がする。
あの日から父は変わってしまった。
全く記憶のない俺の母さんの遺影を捨てた日から。
いや、思い出したくない。
◾️魔法の仕組みと赤い氷
広間の隅々まで照らされるほどの閃光を放ち、青紫色の雷に全身纏われたレイトの電斬撃波がモルモンめがけて放たれた。
「これは、素晴らしい…!」
不敵な笑みを浮かべるモルモンに直撃する。
その衝撃波は煙幕を拡散し、広間の窓ガラスを全て割ってバラバラと落とすほどであった。
(頭が…痛い。一瞬記憶が飛んだ!?そんなことよりすごい煙幕だ…これは…やったか…?!)
レイトは急な頭痛と疲労に膝をつく。
「レイトさんの…ばか」
ミナリーンは悲しみの目をレイトに向けたまま、顔から血の気が引き、膝をついてゆっくりと倒れ込んだ。
(本当に…ごめんミナリーン…カッとなって力を使ってしまった…)
レイトは首元が焼けるような痛みに気づいた。
胸から首にかけて黒く、刺青のような紋様が伸びている。
(あーー痛い!!またアザが広がってる…タコが貼り付いてるみたいだ…!)
「ああああ!痛い!痛い!痛い!痛い!」
レイトは首元に両手を当ててもがき苦しむ。
立ち込めた煙幕が少しずつ晴れると、なんと氷の壁がレイトの目の前いっぱいに広がった。
レイトは両膝をついて両手を首に当てながら、涙目で顔を上げる。
(もう…嫌だ…)
「クソ…な、なんだあれは…」
氷の壁はバラバラと崩れ、服に一切の乱れがないモルモンが姿を現した。
「どうして…?」
「少年よ、そなたは特異な体質のようだな?最初に命を助けてやった時、魔力が感じなかったのも納得だ。」
「なんで氷の壁が…しかもお前は何も…詠唱してないじゃないか!」
(クソ!アーレイもミナリーンも攻撃の際には必ず詠唱していた…隙をついて攻撃したのに何故…!)
モルモンの後ろからシビゲールが出てきた。
「わしの大事な教会をめちゃくちゃにしおって…なんだ今の攻撃は、けしからんな」
モルモンはシビゲールの方を向いて膝をつき
丁寧に謝罪をした。
「シビゲール様、申し訳ございません。彼の能力を見てみたくて、大事な教会の窓ガラスを全部割らせてしまいました。あとで貼り替えますので…お許しを」
シビゲールは呆れた顔をして首を横に振った。
モルモンはマントを払って立ち上がり、レイトの方を向く。
レイトは驚きと焦燥の顔をしていた。
「おっと、ハハハ!その顔は私の魔法について興味があるということかな?君には紋様がない、しかも何やら呪い付きのようだ。魔法に縁がないと思うけど、期待に応えて教えてあげよう。」
モルモンは目を瞑り人差し指を立てて、得意げに話した。
「まず魔法は展開魔法と、そして放出魔法があるのだ。展開魔法は詠唱をして格固有の隕石の力を呼び出し、対象を設定して放つ」
モルモンはニヤつく。
「そして二つ目!もうお分かりだろう、私は放出魔法を使ったのだ。放出魔法はねぇ、詠唱不要で即座に出せるんだよ」
レイトは歯を食いしばった。
(展開魔法?放出魔法…?初めて聞く言葉だ…。アーレイとミナリーンはその、放出魔法のようなものを使ってたのは見たことない…クソ!)
「そしてね、展開魔法は体の魔力を媒体に、隕石の力を呼び出す作業が必要だから詠唱が必要なんだ。放出魔法は、自分の体の魔力を外側に出すだけだから簡単なんだ、まぁ道具が必要なんだけどね」
「ごたごたうるさい!」
レイトが短剣の刃を向けると
モルモンは口を開けて笑った。
「ハハハ、おっと失礼しました。少々授業が長すぎたようですね、今度こそ終わりにしましょうか」
シビゲールがあとは任せたと、モルモンの肩を叩いて奥に消えていく。
モルモンがレイトに哀れみの目を向け、ゆっくりと片手を挙げる。
「天から降臨せし氷の隕石メテオよ!我が手に力を宿し、哀れな敗者に永遠の眠りを与えん、神聖な力よ今ここに!」
光を帯びた円盤状の氷がモルモンの周囲に成形されていく。
レイトは身構えたが、もう立ち上がる余力もなく尻餅をつく。
(ああやばい!殺される…もうだめだ)
その時、レイトの右手に冷たい感触が伝う。
振り向くと血だらけのアーレイが這いつくばって手を握っていた。
「アーレイ…!」
アーレイはレイトに微笑んだ。
つづく。




