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第21話:禁忌の力の解放

◾️大ピニアス塔潜入


馬車の底に張り付くという奇策でザフィアへの潜入を成功させたレイトとミナリーンは、なるべく人目に付かない裏路地を通りながら大ピニアス塔へ向かっていた。


レイトは必死に俯きながら早足で歩いていた。


「レイトさん、お古ですけど…これ使ってください」


ミナリーンはカバンから取り出したフード付きの羽織着をレイトに渡した。


「あ、ありがとう」


レイトはようやく前を向いて歩けることに安堵した。


ミナリーンがレイトの腰と背中を見て回った。


「あと、レイトさん武器を何も持ってないようですね…」


レイトは素寒貧の仕草を見せる。


「そうなんだ…たぶん大ピニアス塔で気絶した後に奪われてしまったらしい。」


ミナリーンは少し考えた様子をし、思い出したかのようにカバンから何かを探してレイトに差し出した。


「これ…ナイフ?」


「これ、旅に出る時に父が護身用にーってくれたナイフなんです。今こそレイトさんが使ってください」


(何から何まで…俺はしてもらってばっかりだな…)


「こんな大切なものを…ごめん…、借りるね!」


ミナリーンは少し嬉しそうな顔をしていた。

レイトはそんな彼女を見て曇った表情になる。


(ミナリーンをこれ以上関わらせると、また迷惑をかけること間違いない…エリアスのことを考えなかった失敗をまた繰り返すわけにはいかない…!)


「ミナリーン…ここで別れよう。ザフィアの中に入れたことだけで十分だ。」


ミナリーンは目を丸くして

レイトに近寄る。


「え…?私はレイトさんと一緒にエリアスさん達を助けます!」


「いや、ミナリーンは優しいから…そう言ってくれるけど、君にも大事な両親がいて、メルスマ教会とは何ら問題を起こしてない…だからここで…」


「確かにレイトさんの言ってくれてることはわかります…!でも長い旅で私と一緒に居てくれたのは、皆さんだけなんです…」


「私がされて一番嫌だったこと…それは仲間である私を置いて逃げることなんです…だから、私が見捨てるなんてできないです…!」


ミナリーンはレイトに詰め寄った。

その目には覚悟が見える。


(やっぱりミナリーンはそう言うかもしれないと思っていた…だがまた同じことにならないだろうか…少なくとも保険はかけておきたい!)


レイトはミナリーンの顔を布で隠す事を条件に、一緒に助けに行くことを約束した。


「玄関はもちろん衛兵がいる、昨日侵入に成功した場所があるんだ、そっちから行こう!」


大ピニアス塔の裏手に周る。

しかし、昨日あったはずの木が切り倒されていた。


「クソ!侵入経路がバレてる…?!」


「大きな切り株だけ…みたいです」


焦るレイトは周りをキョロキョロと

新しい侵入経路を探す。


(アーレイは無事かどうかも分からない…エリアスが捕まったのは俺が宿を離れたせいだ、俺が、俺が...)


レイトの胸を、自責の念が激しく突き上げる。


「どこか無いか?どこか…」


その時ミナリーンが大ピニアス塔の近くに流れる川を指さしてこう言った。


「も、もしかしたら、あそこから下水道に繋がってるかもしれません!」


「ミナリーンすごいや!その考えは思いつかなかったよ」


2人は川に向かって走り土手の横から流れ出る石造の排水溝の前まで来た。


「柵が嵌められてる…これミナリーンの魔法で開けられないか?」


「や、やってみます…!」


ミナリーンは両手を鉄柵に向けた。

ミナリーンの足元に黄色の魔法陣が展開する。


「天から降臨せし雷の隕石メテオよ、わ、我が手に力を宿し、我らを阻む鉄柵に怒りの鉄槌を…」


「雷隕石の力を見よ!、『サンダーボルト!』」


手から一瞬眩い光があたりを覆い

薄紫の雷槍が鉄柵を貫く。


「やったな、ミナリーン!すごいや!」


◾️強敵との対峙


2人は暗い、薄暗い下水道を進んでいく。


(臭いがキツイな…まるで前世と同じ、下水道の臭いと同じだ。)


「レイトさん、私、暗いの怖いんですよ…」


ミナリーンはそう言いながらも、レイトの服の裾を強く握り締め周りを警戒していた。奥に進むにつれ壁は滑らかに整備された道となってくる。


「にしても見かけは立派な下水道だな…まるで壁なんかはコンクリートに似てるかも…」


「こ、こんくりーと?」


ミナリーンは不思議な言葉に首を傾げる。


(剣とか鎧とかの世界に、こんな下水道ってあるのか?やけに現代的な作りに感じるけど…気のせいか)


「私も初めて下水道歩いたんですけど、すごい広くて思ったより綺麗ですね!」


下水道の奥に進むにつれて、天井から砂埃が溢れる。馬車を引く音が微かに聞こえる。


(ここは大ピニアス塔前の大通りのあたりなんだろうか…いや、分からないな)


奥の天井から光が差し込んでいるのが見える

2人が近づいて見上げると円形の蓋の隙間から空が見えた。


(マンホールと同じ仕組み!?)


「ミナリーン、たぶんここから出られるはずだ!」


「私…お手洗いの真下とかだったら絶対泣きます。」


「大丈夫だ…ついてきて!」


レイトは壁に取り付けられた錆びて歪んだ鉄製の階段を登って行った。


レイトがマンホールをズラして恐る恐る頭を出すと天井の高い石造りの広間だった。


「何で部屋に中にマンホールが…!?」


レイトとミナリーンは這い出ると、2人は広間の奥に人影が見えるのに気づく。


「あ、アーレイさん!」


「今助ける…!」


レイトは駆け寄ろうとして、その場で足が止まった。


壁に磔にされたように吊るされたアーレイの姿。アーレイの身体からは血が流れ、意識があるのかどうかも分からない。


「クソッ!」


レイトが怒りを抑えきれずに叫んだ瞬間、広間の奥の扉がゆっくりと開き、二人の人物が姿を現した。


「やれやれ、騒がしいと思ったらまたネズミがまた一匹…おや、お前は…つい先ほど、街の外へ放り投げた愚かな少年ではありませんか」


長身で長髪、黄色い目のモルモンが、氷のような冷気を纏わせながら、双剣を携えて立っていた。


その隣には、教会の威圧感を全て体現したようなシビゲール大司教が、静かに二人を見下ろしている。


「モルモンよ、掃除を怠ったな?」


シビゲールが髭を撫でながら、不快そうに尋ねる。


モルモンは冷笑する。


「どうやら異端者たちの奴隷用心棒のようです。一度見逃してやったのに…残念です…非常に」


「奴隷でも用心棒でも無い!俺は仲間だ!!貴様ら!アーレイをどうするつもりだ!エリアスはどこいる!すぐに解放しろ!」


レイトの言葉に、シビゲールはフンと鼻を鳴らした。


「愚か者め、騒ぐな。お前たちは、教会の崇拝する大隕石の力を疑い、異端の旅を企てたのだ。そして、お前たちを差し向けた者には、既に裁きは下されている」


シビゲールが声を低くする。


「貴様たちの旅を援助したマードック子爵バラス卿は、異端の儀式を企てた罪により、処刑となるのだ。ああ…エリアス嬢についてはー」


「嘘だ...」 レイトは絶句した。


レイトは、短剣の刃をシビゲールに向けて、ミナリーンの手を強く握り締めた。


ミナリーンは驚いてレイトを見る。


「レイトさん!ダメです!その能力は…!」


ミナリーンが黄金に発光し電流がレイトに流れ始める。レイトの髪の毛は黄金に逆立ち、レイトの胸元のアザはさらに複雑に大きくなり首元から伸び出ていく。


それを見たモルモンは目を細める。


「ほう、大変興味深いですね…」


「クソが!絶対に許さない!殺してやる!!」


レイトは雷の魔力の全てを短剣に集中させ、渾身の最強斬撃をシビゲールらに向けて放った。



つづく。

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