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第17話:終わりゆくこの世界

◾️連行


「こやつ、死んだんじゃないか?殺すなと言ったであろう!馬鹿者が!」


シビゲールが地面に転がる無惨な姿のアーレイを指差して大声でモルモンに詰め寄る。


モルモンは丁寧にローブの端を払い

膝をついて答えた。


「シビゲール様、ご安心ください。氷の柱の先端は尖らせてはいませんゆえ、気絶しているだけと思われます。」


シビゲールはフンと鼻を鳴らし

生き残った重装兵に大ピニアス塔へ運ばせるよう命じた。


モルモンは転がっている隕石の欠片を回収し、アーレイが持っていた大鎌を手から引き離してその刃に反射する自分の姿を見た。


(こんなもの振り回して、誇りなど取り戻せようか。そなたに恨みなどない。ただ私の計画の駒すぎないのだ。)


モルモンは廃宿に向かって大鎌を思いっきり投げた。風を切って高速回転した大釜は、爆音と共に廃宿の壁を貫通し部屋の壁に刺さった。


大鎌は、氷魔法の紋様を讃えた絵画に深々と刺さっていた。





◾️牢獄


大ピニアス塔に連れてこられたアーレイは、ジメジメした暗い地下牢に投げ入れられた。ネズミが驚いて壁を這いまわる。看守が哀れみの顔を向けた。


「こんな若いお嬢ちゃんも異端者ってことか…残念だが、ここに放り込まれてまともに生きて帰ったものはいないんだ。」


看守は目を瞑って首を左右に振り、牢屋の鍵を閉めて去った。


アーレイは止血されただけで、重症のまま虫の息となっていた。


「バラス…様…私は…お役に…立てられませんでした…。エリアス様…お逃げください…」





◾️異端審問


その頃、大ピニアス塔に戻ったシビゲールとモルモンはアーレイの処遇とその後の計画について練っていた。


「モルモンよ、お前の計画通りバラスは娘を旅に出させノコノコと隕石の欠片を集め、持ってきた。娘に魔力を施すことができると嘘を言って、親の気持ちを利用したのは正解だったな。しかもお前は錬金術に造詣なんてないだろう。まったく、小賢しい男だ。」


シビゲールは大口を開けて笑った。


「しかも、バラス卿がお前を相談役として信用したのは、アーレイと同じ虐げられた民族である氷魔法使いだったからだろう。かつてバラス卿は辺境の貴族でありながらグリニード戦争で我々側として兵を出した身。その後、復興の手伝いや孤児の支援などやっておったわ、罪悪感もあったと見える。」


モルモンは目を閉じて頷いた。


「バラス卿がペンデンテス領内で発見した古代文明の装置を見せられた時、私は驚きましたよ。あれは内側に人間を入れて魔力を限界まで吸い上げ、外部との影響を遮断する効果も付与されていました。」


モルモンはお茶に口をつけた。モルモンの横顔は大ピニアス塔のステンドグラスから差し込むオレンジ色のキラキラとした夕陽に照らされ、彫りの深い目元は薄暗く、黄色く光っていた。


「うむ、我々が崇拝している大隕石の力は偉大だ。人間に魔力を付与し、その身、形すら決定されている。太古の昔、大隕石の降臨によって古代文明は滅び、魔力の影響に耐えられなかった生き物が魔物の先祖だと聖書には書かれているのだ。」


シビゲールは部屋の本棚に近づき

聖書を取り出してバラバラと開いて読んだ。


「しかし、最近、大隕石はますますその魔力放出を強めてきている。お主にはその意味がわかるであろう」


モルモンはフッと笑い。

シビゲールの方を見た。


「シビゲール様、今はメルスマ教会の権威の維持を最優先にお考えください。バラスから正式にあの装置を奪えるよう、アーレイの処遇を」


シビゲールは頷く。


「アーレイは我らメルスマ教会に刃を向けた氷魔法使いの遺民である。打ちのめされ、教会の前で我々に絶対服従とメルスマ教の崇拝を約束した民族でありながら、大隕石の力を疑うような行為をしてこの都にやってきたことになる。つまりバラスは終わりだ」


シビゲールが合図すると部屋の外にいた兵士が入ってきた。


「アーレイを異端審問にかける。準備せよ」



つづく。


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