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第16話:夕陽と朝日を待つ者

◾️紅の金細工


レイトとエリアスは、古都ザフィアで隕石の欠片を集めるにあたり、足りなくなった旅の必要資材の買い出しのため港に来ていた。


港には大きな輸送船が何隻も停泊しており、多くの積荷が行き来している。港には各地方から様々な物資が集まる。様々な人がせめぎ合っていた。


レイトとエリアスは市場を歩いていた。


「なぁ、エリアス、何でバラスのことになると、すぐアーレイに冷たくあたるんだ?孤児のところ、救ってもらって大事に育てられたら、自分の親のように感じるだろう。」


エリアスは少しバツが悪そうな顔をした。


「うるさい、あんたは分からないのよ。私は確かに実の娘だけど、アーレイは私が生まれる前からパパと仲良くしてるの知ってるから、無性に腹が立っちゃうの」


「アーレイって確か、戦争孤児なんだよね?」


「そう、グリニードの戦い…?というのがあったみたいなの。氷の加護を受けていた民族の当主が異端扱いを受けたみたいで、戦争になっちゃったんだって。」


「多くの氷魔法使いが戦いで死んじゃって、当主も捕まってから異端裁判で死刑になったって聞いたわ。だからアーレイのような氷魔法使いは今は少ないかも」


(そうか、あの時ミナリーンが氷魔法を見て驚いていたのはそういうことだったんだな。)


レイトは顎に手を当てて

納得するように頷いた。


その時、エリアスは目に入った装飾品露店に吸い寄せられていく。そこには首飾りやイヤリング、宝石が埋め込まれた様々なアクセサリーが飾られていた。


店員は2人の耳を見て微笑んだ。


「あら、いらっしゃい、お若い新婚さん」


「ち、違うわよ!」


エリアスは赤面する。

レイトは満更でもなさそうな顔をした。


エリアスが紅の宝石が埋め込まれた金細工のイヤリングを手に取って暫く見つめた。


(これがお気に入りなのかな…?)


エリアスはそれを展示台に戻して

真顔でレイトの方を見た。


「別に、欲しいものはなかったわ、早く行きましょう」


エリアスは先に歩き出してしまった。

レイトは店員の方を見ると、手招きしているのが見えた。


「新郎さん、彼女これ絶対気に入っていたわ。色々なカップルを見てきたから分かるの。今なら新婚記念として少しお安くしとくわ。」


レイトは笑って頭を掻く。

「俺、遠くの国から来たのもあって、この国のお金の計算ができなくて…」


「いいわ、もし良かったらお財布見せてちょうだい。」


レイトはお財布を開けて店員に見せた。

店員は親切にもお金の価値を展示台の商品ごとに比較して教えてくれた。


「ありがとう!おばさん。それじゃあ…このイヤリング下さい」


レイトは紅の宝石のついた金細工のイヤリングをサイドポケットに深くしまい込んだ。




◾️ペンデンテスでの約束


レイトとエリアスが港から宿屋まで戻ると

馬車留めに人集りができているのに気づく。


「なんだ?あの人たち、俺らの馬車に集まってる…もしかして泥棒か…?!」


「ちょっとあんたたち!私たちの馬車から離れなさいよ!」


レイトとエリアスは急いで自分らに馬車に駆け寄った。


「おお、あなた方がこの馬車の持ち主ですか?驚かせて申し訳ない。私たちはこの町で馬車商人を営んでいる者です。いやーこの作りといい、この車輪の謎の素材といい、どこで購入されたのか気になってしまいまして…」


レイトはペンデンテスの馬車職人のことを思い出した。


(そうだ、約束してたんだった。この馬車を『見本』として紹介して、あの馬車職人との約束を果たさなきゃ)


エリアスは馬車商人たちの話を聞いて

安堵しつつ、思い出したかのようにレイトを見た。


「レイト、ちょうどいい機会なんじゃないの?」


レイトはペンデンテスの馬車職人から購入したことと、旅をしていること、道中の乗り心地などを説明した。


「それは素晴らしい!ザフィアから西の方は道が荒く、車輪が壊れやすい。対応できる馬車があれば売れると思っていたところです。


商人の1人が情け無いという顔で

顔を左右に振った。


「ペンデンテスは辺境で、ほとんど外部からの行き来がなく、地産地消が主な商売が多いと聞いていたので、盲点でした…。」


(この人たちは身なりも良さそうだ、きっと裕福な商人らだろう。これでペンデンテスの馬車職人も日の目を見ることができるんじゃないか?)


エリアスが仁王立ちで叫ぶ。

「ペンデンテスはね、小さい町だけど、小麦は沢山取れるし、立派なところなんだからね!覚えておきなさいよ」


(パパのおかげなんだからね!)


レイトとエリアスは馬車商人たちと別れ

宿に戻った。


「レイト、アーレイはどこに行っちゃったんだろう。夕方には戻るって言ったわよね?遅くない?」


窓から差し込む夕陽はレイトとエリアスの顔をジリジリと焼くような赤い、赤い光だった。



つづく。


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