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凹の水平線〜ララバイゼロ〜  作者: テルマエ出前
第1章:最強と呪い
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第13話:別れ

◾️意図せぬ永遠の誓い


門に立つ兵士たちは往来する人々の通行許可証をチェックしている。


アーレイはそれを見るやいなや荷台の後ろに周り、隕石の欠片が入っている小袋を、胸の中に隠した。


「ここから先は、少しでも異質なものがあれば、すぐに目をつけられます」


アーレイが静かに言った。


「レイト殿。貴方の耳には、この世界の人間なら誰もが持つべき**『隕石の加護の模様』**がありません。古都では、異端審問の対象になりかねません」


レイトは目を丸くしてアーレイを見る。

「えっ、そ、そんなに!?今まで大丈夫だったのに!?」


「ええ、ここは隕石の加護の本拠地であり、メルスマ教会員や熱狂的な信者も多いと聞いています。ただ、対処法は考えておりますのでご安心を」


アーレイはそう言うと、持っていた小さな化粧道具を取り出した。


「一時的ですが、エリアス様の耳の模様を真似て、貴方の耳に描きます」


「なんと…俺の…耳にもついに!?」


(俺にとってはこの耳は魔法が使えない証の他に、みんなと違う『はぐれもの』とされてるみたいで寂しかった。まぁそうなんだけどね。でもついに、ちゃんと仲間になれるってことだな!)


エリアスは顔を真っ赤にしてアーレイを睨みつけた。


「なっ!ちょっと、アーレイ!何勝手に決めてるのよ!なんで私の模様なのよ!」


アーレイは淡々としている。


「理由は単純です。エリアス様の模様は線の間が広く書きやすい上に、汗などで滲んでもわかりにくいからです」


レイトの期待げな顔に、エリアスは大きくため息をついた。


「わかったわよ!しょうがないから、やってあげる。でも勘違いしないでよ、私がわざわざ**『呪いの男』**とお揃いになる羽目になっただけなんだからね!」


アーレイは手に持っていた化粧箱から筆を取り出すしてエリアスに差し出す。


エリアスは驚いて身体をそらす。


「え?しかも私が描くの?!」


アーレイが、またもや化粧箱から手鏡を取り出してミナリーンに押し付けた。


「わ、私が持つんですか!?」


「私は御者台で門兵に通行許可証を提示する仕事がありますので、ミナリーン様がお願いします。そしてレイト殿、早くこちらへ」


レイトとアーレイは御者台を交代し、おそるおそるミナリーンがエリアスの耳を鏡で写した。


「ちっ、しょーが無いわね」


エリアスは渋々とレイトの首筋から耳にかけて、細い筆で慎重に模様を描き始めた。筆先がレイトの耳たぶをかすめるたび、レイトは思わず身を硬くする。


ことの真意を知っていたミナリーンは恥ずかしさで、みるみる顔を赤くして片手で顔を塞いだ。


「アーレイさんは悪い人ですぅ…」


この世界では心に決めた人の片方の耳に、自らの紋様を入れる風習があったのだ。


エリアスの紋様は、レイトの耳に、そして左右対称に刻まれた。


2. 厳戒態勢の古都と潜む視線


門番に身分証を提示し、馬車がザフィアの街中に入る。


城門をくぐった瞬間、空気が一変した。大通りは活気ある露店で賑わってはいるが、その奥には厳かな街並みが海岸まで続いている。


魔銃を担ぎ重装の兵士が隊列を成してガチャガチャと地面を揺らして巡回している。その兜にはどれも複雑な紋様が刻まれている。


レイトは兵士たちとすれ違うたび、反射的に耳元に手をやり、偽りの加護が崩れていないか確認する。


兵士たちの冷たい視線が、一瞬、レイトの耳元で止まり、すぐに逸らされる。


レイトはアーレイの忠告を思い出していた。


(頼む、エリアス…ちゃんとバッチリ描いてくれててくれよ……!)


レイトは冷や汗をかきながら、偽りの紋様のせいで、自分の心臓が普段よりも速く脈打っているのを感じていた。


アーレイが静かに街を見渡し、レイトらの方を向いた。


「古都ザフィアは、かつて大陸からの侵攻に備えて築かれたようです。バラス様の書斎で読んだ本の記述によれば、街の作りが他と異なり、防衛を最優先とした重厚な石造りになって、やはり荘厳ですね」


アーレイは街の奥に見える、明らかに突出した塔を指差した。


「そして、街の遥か奥に聳えているのは、メルスマ教会の本拠地、大ピニアス塔。権威の象徴です」


エリアスが顔を顰めた。


「あの塔が……メルスマ教会の本拠地…なのね。絶対認められてやるんだから!レイト、さっさと宿を探して作戦会議よ」


エリアスは認めてもらいたい対象を目の前に

闘志を燃やしていた。


ミナリーンが不思議な顔でエリアスの方を見る。


「エリアスさん、認められる…って何をですか?」


「ミナリーンに言って無かったわね、メルスマ教会に認めてもらいたいの。一緒に戦った仲だから知ってるでしょ、私が魔法使えないのを。」


「はい、ずっと不思議でした!ホプキンスの洞窟での戦いでも、エリアスさん魔法は一度も使っていませんでしたね…てっきり魔銃が好きなんだと思ってました!でも…メルスマ教会に認められる必要があるんですかね…?」


ミナリーンが上を向いて

顎に人差し指をかざして不思議がる。


「実は私、冒険者の見た目してるけど、辺境の貴族の娘でね、魔法が使えない未熟者は跡を継げないって…。だから強くなろうと思ってここまできたの」


「そうだったんですね…私もある意味認められたくてここを目指してたんです。一緒ですね!」


エリアスはミナリーンをキョトンと見た。


「エリアスさん、レイトさん、アーレイさん、ここまで一緒に来られて良かったです。私はこのまま神殿に向かおうと思います。」


レイトが寂しそうな顔で見る


「なぁ、ミナリーン、神殿で診てもらった後

俺らと一緒に旅を続けないか?」


エリアスも同調して頷く。

アーレイは静かに見守る。


ミナリーンはゆっくりと首を振った。


「神殿で診てもらうのには時間がかかるって聞きました。数週間、下手すると数ヶ月かもしれないです。なので、しっかり自分の魔法と向き合う時間に使いたいと…思ってます」


エリアスが腕を組んだ。


レイトはエリアスをみてニヤついた。

(おお、きっと傲慢ぽいこと言うんじゃないか?)


「ふん!強くなったらいつでもペンデンテスに遊びに来なさいよ!正式に認められて強くなった、このマードック家の次期当主が歓迎するわ!」


ミナリーンは深々とお辞儀をした。


こうしてミナリーンは3人と分かれ

神殿へ向かうのであった。





◾️極秘任務と父の愛


一行は門から最も遠い、海岸沿いの宿屋へと向かった。


街の中心部から離れることで、教会の目から触れる機会を減らすというのがアーレイの判断だった。


宿屋の二階の部屋で、レイトたちは地図を広げる。


「エリアス様とレイト殿は、街のギルドや市場を回り、隕石の欠片や、最近の魔物の異常に関する情報を集めてください。」


エリアスが不満そうに腕を組む。


「あんたは?まさか私たちを遠くから見張ってるつもり?」


アーレイは静かに頷いた。


「私はバラス様から託された**『任務』があります。隠密裏に調べるべき情報**があります」


アーレイの目には、強い光が宿っていた。


エリアスは不機嫌そうな目でアーレイを見る


「パパはあんたに何をお命じになったのかしら」


「申し訳ございません。エリアス様、バラス様から絶対に言わぬよう強く言われておりますので…」


エリアスはそっぽを向き

こう言い放った。


「パパはアーレイが大事なんだわ!」


「エリアス様、バラス様は何よりもエリアス様のことを案じておりました」


アーレイは、バラスと共にペンデンテス領内の森で発見した謎の機械が、後に『魔力が転送できる装置』と知ってバラスが非常に喜んでいた顔を思い出した。


これでエリアスは救われる…と

そう言っていた。


つづく。

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