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第12話:古都ザフィア到着

◾️暴く月夜


ホプキンスを発った馬車は、夜の街道を静かに進んでいた。


御者台にはアーレイが立ち、レイトは馬車の中、眠っているエリアスの向かいに座り、クロスボウの手入れをしている。


ミナリーンがパーティーに加わってから、既に一週間以上が経過していた。


ミナリーンが小さな声で呼びかけた。その声は、いつもより僅かに震えている。


「レイトさん」


レイトは手を止め、ミナリーンを見た。


その視線が、膝を抱えることで強調されている彼女の豊かな胸元に一瞬吸い寄せられ、すぐに慌てて逸らした。


「どうした、ミナリーン。まだ眠れないのか?」


ミナリーンは、おずおずと顔を上げる。


「あの……おじいさんの話、私も聞いてました。レイトさんの吸魔体質のことと……魔物になるかもしれないっていう、呪いのこと」


レイトは息を飲む。ミナリーンに恐ろしく思われていると思うと、胸が締め付けられる。


「ごめん、ミナリーン。怖いよな。でも、俺はこの力をもう使わないようにしようと思ってる……」


ミナリーンは静かに首を横に振った。


「違います。あの時助けてもらったのは私の方で……わ、私は、レイトさんの力が恐ろしいんじゃないんです」


彼女は俯き、自分の膝を握りしめた。


「私の魔力は不安定で、いつも周りの人を傷つけてしまうかもしれない。一緒に戦う大事な人も危険に晒してしまうかもしれない……、そんなふうに思って生きてました」


ミナリーンが寂しげな顔で、力無く笑った。


「洞窟で私のパーティが逃げ出しちゃって……実はホッとしてたんです。やった、怖いけどもう傷つける人がいないんだって、誰も居なくて……いいんだーって」


ミナリーンはその小さな肩を震わせて顔を背けた。


「でもそんな時にあんな風に皆んなに必要とされて、一緒に戦って……、レイトさんの役に立った自分が嬉しくて……」


レイトはそっとミナリーンの手を握る。ミナリーンは驚いて体を硬くしたが、すぐに優しく握り返した。


(自分だけが、役立たずと悩んでいたのが恥ずかしく感じるな……)


レイトは優しく微笑む。


「俺も……この能力があっても誰かに頼らなきゃ、もちろん一人じゃ戦えないんだ。お互い様だね」


ミナリーンは涙をこらえ、強く頷いた。


「はい……ありがとうございます。私、少しでもこの不安定な魔力と向き合って、頑張るって決めました」


その時、月夜に照らされたレイトの首元に、うっすらと黒い煤のようなアザが見えた。


「レイトさん……それって……?」


レイトは夜風に震えるふりをして、無意識のうちに首元の何かを隠すように襟元を深く着直した。


(くそっ……だんだん広がってる…、ここまで……)


レイトは誤魔化して苦笑いした。


「今日は、だいぶ冷えるね。ミナリーンも早く寝た方がいい。」




◾️荷台のダンス


水平線から太陽の光が広がり、世界をキラキラと照らし始めた頃、古都ザフィアへの道のりは残りわずかとなっていた。


レイトは馬車の窓から見える教会の尖塔を見つめながら、静かに口を開いた。


「なぁみんな。そろそろ古都ザフィアに着くみたいだ。長い旅だったなー」


エリアスは顔を上げ、誇らしげに胸を張る。


「やっとついたわね、さっさとやるべきことやって帰りましょ。今までみたいに簡単よ!」


エリアスがひょいと馬車の淵に立って

レイトを指差す。


「そ、そして、ちゃんとパパに認めてもらうの。あ、あとレイトの呪いを解く方法も…まあ、ついでに考えといてあげるわ!」


エリアスは顔を赤くして、恥ずかしそうに相変わらずそっぽを向いている。


「わー嬉しいなー、あ、失敗して魔物になったら、ちゃんと倒してくれるんでしょ?半殺しだけはやめてね…」


「あんたって人は…!」


レイトとエリアスが荷台の上でふざけ合っている様子を見ながら、ミナリーンは不安そうにもじもじ、アーレイも呆れ顔で微笑んだ。


「はぁ…エリアス様、転んで怪我しますよ」


「レイトさん、エリアスさん危ないですぅ!」


エリアスがニヤニヤと笑ってレイトを揶揄した。


「ちょっと前まで、剣もダメ、魔力もない、お金もない、何にも持ってない乞食だったもんねー」


「あ、酷いこと言うなぁ、ほんとに…」


(俺は、前世よりも多くのことを手に入れていると感じる。この感覚が欲しかったのかもしれない、そう、剣とか魔法とか力とか、なーんもなくても…認めてほしいと)


レイトは首元をさすった。




◾️古都の門


馬車はついに、遠方にそびえ立つ古都ザフィアの城壁を捉えた。


それは、ペンデンテスや水の都シュイレーンとは全く違う、重厚で威圧的な石造りの都市だった。


空には灰色の雲が低く垂れ込め、街全体が静寂に包まれている。教会の尖塔が、他のどの建物よりも高く空を貫いているのが見える。


レイトは手綱を握る手を固く握りしめた。


「着いたよ、古都ザフィアだ。アーレイ、そうだよな?」


馬車が門に近づくにつれ、厳かな紋章をつけた重装の兵士たちが石像のように左右に立っているのが見えてくる。


レイトは、ミナリーン、エリアス、アーレイと視線を交わし微笑んだ。


ここから先、本当の地獄が待っているとも知らずに。


つづく。

12話まで読んでいただきありがとうございます。


やっとここまで来ました。

引き続きお付き合いいただければ幸いです。

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