第11話:4人パーティーの連携
◾️道中の休息:ホプキンスの日常
それから数日、一行は古都ザフィアへの中継地点にある小さな街**「ホプキンス」**で休息を取ることになった。
宿の食堂で、簡単な夕食を取っている時のことだ。
「この街のパン、すごく美味しいですね!小麦の味が濃いというか……」ミナリーンが嬉しそうに呟いた。
「そう?私はシュイレーンのソルベの方が美味しいと思ったけど。あんたはそんなパンなんか食べてないで、しっかり魔力回復のための栄養を摂りなさいよ。」エリアスがツンとした口調で言う。
「エリアス様の言う通りだ、ミナリーン殿。貴女の雷魔力は消耗が激しい。休息と食事は、エリアス様を守るための準備です。」アーレイが冷静に続けた。
「は、はい!ありがとうございます!」ミナリーンは恐縮しながらも、二人の気遣いに心が温まるのを感じた。
レイトは、二人のやり取りを見て笑った。「なんだか、エリアスとアーレイがミナリーンの世話役みたいだな。これで、パーティのバランスが取れたんじゃないか?」
「誰が世話役よ! 私をあんたの横にいるだけの存在と一緒にするんじゃないわ!」エリアスがフォークをカチャンと鳴らし、レイトを睨みつける。
「でも、レイト殿の分析は正確ですよ。エリアス様は、ミナリーン殿の世話を焼くことで、ご自身の立場と役割を再認識し、精神的な安定を図っていると推測されます。」アーレイが感情を挟まず分析した。
「アーレイ!あんたまで……!パパに言いつけるわよ!?」エリアスは顔を真っ赤にして抗議した。
この緩やかな日常が、旅の緊張をほぐしてくれる。
そして、この首元にできたアザも忘れることができる…。
「よし、明日はギルドの依頼をこなして、旅費を稼ごう。難易度低めの洞窟の魔物討伐、全員で行くぞ。」
エリアスは即座に応じた。
「当たり前じゃない!あんたの**"あの能力"**に頼らずとも、私が一人で家を継ぐのにふさわしい魔法使いだってことを、あんたに証明してあげるわ!」
(やっとこの異世界で、俺が好きだった物語の英雄や勇者のような気分になってきた。英雄の道も始まった感あるぞ…!もう吸魔しないように強くなればいいんだし、ほのぼの旅をしていくのもアリだな!)
本当にヤバくなったら冒険者を辞めればいい。
レイトはそう思っていた。
◼️ダンジョン攻略と四人の連携
翌日、一行はホプキンスの街外れにある小さな洞窟
**「嘆きの洞窟」**へ。
レイトは、アーレイの忠告と、エリアスの強い決意を胸に、吸魔戦術(エリアスの手をつなぐ)を封印した。彼は、クロスボウと戦術で貢献する。
レイトがクロスボウのライトを点けて構え、先頭を進む。アーレイが隣で松明を握り周囲を照らした。
「レイト殿、通路の奥から、複数の足音が接近しています。魔物は小型。」
レイトは即座に指示を出した。
「よし、通路が狭いから、アーレイが前衛で防御に徹してくれ。エリアスは魔銃を温存。ミナリーン、雷撃で動きを止めるんだ。」
その瞬間、小型魔物**「ゴブリン・ラット」**の群れが飛び出してきた。
「アイシクル・シールド!」
アーレイが氷の壁で群れを食い止める。レイトはクロスボウでリーダーを貫き、動きを鈍らせた。
「今だ!ミナリーン、頼む!」
「は、はい!」ミナリーンは緊張しつつも、リボルバーを構える。
「ライトニング・スパーク!」
不安定ながら強力な青い雷撃が通路で連鎖し、ラットの群れは一瞬で感電死した。電撃余波の一部の電撃がレイトに直撃する。
「あがが、ススススごいぞ、ミ、ミナリーン!感電はアーレイの防御を完璧にサポートしたガガガ!」
さらに奥、広くなった空間で、鎧を纏った大型の魔物**「アイアン・ゴーレム」**が待ち構えていた。
「レイト!どうするのよ!?炎魔導弾はあんまりないから撃ちたくないのに!」エリアスが焦った声を上げる。
「温存する必要はない!エリアス、あいつの関節の隙間を狙え!俺が注意を引きつける!」
レイトはクロスボウの閃光の矢でゴーレムの視界を奪い、動きを止める。
「今だ!肘の関節だ!」
「うっさいわね!お安い御用よ!」
レイトの指示通り、エリアスは躊躇なく魔導弾を撃ち込んだ。
ドォン!
関節の隙間に命中した炎が、鎧の内側から爆発を起こし、ゴーレムの動きを一瞬止めた。
レイトが叫ぶ
「アーレイ!トドメを!」
アーレイは、動きの止まったゴーレムの頭部へ跳躍。大鎌で硬い鎧の隙間から、内部の核を正確に貫いた。
ガシャン!
ゴーレムは音を立てて崩れ落ちた。
「……やった!完璧な連携だ!」
レイトが拳を突き上げる。誰一人の特殊能力に頼ることなく、四人はそれぞれの役割で勝利を掴んだのだ。
◾️パーティーリーダーの才
クエストを終え、ホプキンスのギルドで報酬を受け取ったレイトたち。
ギルドを出た後、エリアスがレイトに話しかけた。
「ふん。あんたが騒ぐほど、別に大したことなかったわね。でも、指示は的確だったわ。おかげで魔導弾を一つも無駄にしなくて済んだ。」
レイトはウンウンと満足そうに頷いた。
「俺はもう、ただの役立たずじゃないってことだ。」
馬車に乗り込む前、アーレイが古都ザフィアへと続く道筋を見つめながら、静かに口を開いた。
「今回の任務で、レイト殿の**『パーティリーダー』**としての価値が証明されました。ですが、これから向かう古都ザフィア周辺領では、一層の警戒が必要です。」
アーレイは、荷物を積み終えて少し離れたところにいるミナリーンに聞こえないよう、レイトとエリアスにだけ聞こえるよう、声を潜めた。
「ミナリーン様には我々の目的を安易に話すべきではないと考えています」
アーレイは馬車で荷台の整理をしているミナリーンを横目に、レイトとエリアスにもっと近くに寄るよう手招きをした。
「古都ザフィアは、メルスマ教会の権威が最も強い場所です。前にもお伝えしたことがありますが、隕石の欠片を集めていることが知られると、冒涜に当たるとされるかもしれません。」
(やっぱり、密猟…みたいなものなのか?)
アーレイは、荷台の奥に置かれた革の袋を見つめながら言った。
「元来、世界に散らばっている隕石の欠片はメルスマ教会より神聖なものとされ、集めたりするものではなのです。」
エリアスの表情が強張る。家督相続のため、絶対的に教会に認められなければならない彼女にとって、これは最も重い警告だった。
「わかった。何かあった時にパパとミナリーンには迷惑はかけられないわ…」
レイトも、その文化を理解し、深く息を吐いた。
ミナリーンが馬車の荷台を整理し終えて戻ってきた。レイトは笑顔で彼女に言った。
「さあ、ミナリーン。古都はまだまだ遠いぞ。出発だ。」
彼らの旅は、強大な権力と、一歩間違えれば破滅を招く真実を秘めた古都ザフィアへ向かい、再び動き出す。
つづく。




