6話 悪魔の戦い
6話となります。
薔薇の悪魔と左目のない人間の関係とは。
今回は初バトルとなります!
ぜひ最後までご覧ください。
鎧をつけず、私が壊した剣とは形も大きさも異なる長い剣を腰に携えていた。
「…老けたわね、ロイ。まさかあなたとこんなところで会うなんて」
「あの日、私がお前を逃したせいで大勢の仲間が死んだ。あの日からこの左目をその戒めとして生きてきた」
「そう簡単にやられると思う? ロイ、わかっているでしょう。あなたが何をしようと、私には敵わない…」
「それはどうかな…」
まただ。一瞬にして人間の姿が消え、気が付くと私たちの真上に剣を抜いた状態で移動していた。両手で剣を持ち、右目を見開いている。
「離れて!」
落ち着いた声で私にそう言うと、ゆっくりと腕を伸ばして何かを呟いた。その瞬間、さっき見た薔薇の壁が地面から生え、頭上を覆いつくした。
「はぁぁぁ!!」
人間が大きな声を振り絞りながら剣を振るう。薔薇の壁に剣先が触れた瞬間、薔薇が枯れていき、壁が崩れ去った。
「その刀…そう、ロイ。あなたはそっち側なのね」
「いつまで平静を装っているつもりだ!」
「私たちは戦うべきじゃない。それはあなたが一番わかっているでしょう?」
「まだそんな甘いことを…もういい。戦う気がないならそのまま立っていろ。一瞬で終わらせてやる」
地面で再び構えなおしている。私は人間から逃げるように反対側へ走った。
女の右後ろから素早く振りぬかれた剣は女の脇腹から胸辺りを切り裂いた…はずだった。
血が流れることもなく、切られたはずの女の体はゆらゆらと揺らぎ、白い煙を出して消えてしまう。女は私の左隣に立っていた。
「私は負けるわけにはいかない。こんなところで死ぬわけにはいかないの!」
右の手のひらを地面につけ大きく回すと、剣を構える人間の足元に大きな薔薇の模様が浮かび上がり、そこから炎の柱が天井に向かって伸びる。その炎は天井を突き破り、大きな瓦礫が次々と降ってくる。砂埃が激しく舞い、部屋全体を覆い隠した。
「うわぁ!」
頭に瓦礫が当たりそうになり、咄嗟に変な声を出して力強く目を瞑り、頭を腕で守る。痛みを感じなかったため目を開くと、私の頭上にも薔薇の模様があり、瓦礫がそこに当たると弾けて粉々になっていた。
女の方を見ると、私の無事を確認し微笑んでいた。
「あなたは私が守る。心配しないで」
「でも、それじゃああんたが…」
「大丈夫。私は負けないわ」
穴の開いた天井からは外の世界が見えた。初めて見る外の世界だ。ここよりも少し明るいが暗いことに間違いはない。空には白く光る何かがあった。それは穴を通って私の世界を切り裂き、私を優しく照らしだした。
「あれは月」
「月…?」
「そう。この世界で一番美しいものよ」
月という名前は本の中でしか知らなかった。月が一番美しいというのは女の主観であろうが、確かに美しかった。
「…薔薇、随分と余裕だな」
砂埃の向こう側から人間の低い声が聞こえる。月明りが砂埃に人間の影を映し出し、砂埃の中から人間がゆっくりと姿を見せた。
「随分と辛そうね、ロイ。老いには敵わないかしら」
「…もう終わりにしよう」
そう言うと人間は剣を鞘に戻し、前傾姿勢のまま持ち手に手を添えていた。
「…っ!」
人間のその姿勢を見ると、女は青ざめた表情で私の方に走って寄り、私たちを守る大きな球状の壁を出した。
「お、おい、なんなんだ…」
私を抱き寄せ、頭を覆う。
「気を付けて」
「何言って…」
外から何かが擦れる鋭い音が聞こえた。その瞬間、私たちを覆っていた大きな壁が一瞬にして崩れ落ち、私を抱いていた女の背中から大量の赤い液体が飛び散った。
6話いかがでしたでしょうか。
初のバトルシーンを書きましたが中々難しいですね。どれだけイラストを描いたかわかりません…(笑)
さて、薔薇の悪魔はどうなってしまうのか。
7話もぜひご覧ください!