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【完結】前世の男運が最悪で婚約破棄をしたいのに、現れたのは王子様でした?  作者: 月にひにけに
第二章 侯爵家の秘密

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69.旅立ち

「ーーでは、行って参ります……!」


 腰に剣を携えて、旅支度を整えて瞳を煌めかせる私とは対照的に、アラン兄様の風化具合は凄まじかった。


「……うん、くれぐれも気をつけて。……ライト、絶対に目を離すなよ……っ!」


「わかってるよ……」


 ガシリとアラン兄様に頭を掴まれたライト兄様は、幾度となく重ねられたであろうその言葉に辟易として顔を歪めた。


 少しばかり私に口添えしたことを今頃後悔しているかも知れないなと、私はその光景を無言で見遣る。


「ローランド、イリヤさん、どうか子どもたちをよろしくお願いいたします」


「お任せ下さい、伯爵様」


 深々と頭を下げるお父様に、ローランドさんは静かに礼を取る。


 父の古い知人と言うローランドさんは、長らく冒険者として生計を立てていたそうで、ここ最近の実戦訓練も兼ねてルーウェン家に滞在してもらっていた。


 イリヤさんはローランドさんの冒険者仲間の女性で、女性の同伴を訴えたお母様の意を汲んで同行してくれる、意志の強そうな瞳の綺麗な女性で、明るくさっぱりとした素敵な人。


 熊のような大きな体躯に残る幾重もの古傷と、伸び切った髭や頭髪の厳ついローランドさんの風格に最初こそ身構えをしたものの、物静かで冷静沈着。冒険者としての豊富な知識を惜し気もなく教えてくれるローランドさんに、私とライト兄様は毎日齧り付いて知識を吸収していた。


 あれから慌ただしくも穏やかな時が過ぎ、ライト兄様、ルド様は無事に学園の高等部を卒業。ルドガー様は個人都合として休学の後、その姿を表立って見せることはないままに卒業になったと聞いた。


 私とサラサも無事に中等部は卒業し、サラサは主席。私は何とか恥ずかしくはない程度での卒業に至る。


 ライト兄様の旅に同行する条件でもある復学をした後は、やはり人の口に戸は立てられず、表でも裏でも何かしらある事ない事と噂をされたようだったが、サラサに助けられた面が大きかった。


 そして何より、時折りひょっこりと学園に姿を見せるルド様が、年頃の令嬢ばかりが集まる学園において、それ以上の求心力を持って噂を塗り替えてくれたように感じる。


「ルドガーです。お世話になります」


 旅支度に身を包み、仮面を外したルドガー様が頃合いを見て頭を垂れた。


「……本当に来やがった……」


「……ほ、本当にお家は大丈夫なんですか……?」


 どちらかと言うと心配の方が勝る私たちはヒソヒソと声を潜めて問いかけると、ルドガー様は事もなげに口を開く。


「問題ない。侯爵と……次期当主に話はつけてある。私が作成する魔術具と、あとは家業の依頼遂行が私に対する主な目的だが、それさえ賄えればむしろ私が近くをウロウロするより都合が良いだろう」


「そ、そういうものですか……?」


「そういうものだ」


 えぇ……と眉を顰める私に、ルドガー様はふっと笑って答える。


「家業の都合で時折離脱することもあるかも知れないが、外に出る機会を与えてくれたことを感謝している。同行を許してくれてありがとう、2人とも」


「いえ、そんな……とんでもないです……っ」


「相変わらず堅苦しいやつだな」


 チッと照れたように視線を逸らすライト兄様に、ルドガー様はふふと笑う。


 ヴァーレン家へと戻った後の卒業までの期間、幽閉とまではいかなくとも、自由気ままとはほど遠い生活を強いられていたらしいルドガー様は、せいせいする、と明るく笑った。


「ヴァレンタイン卿とグレイヴ令嬢はいないんだな。意外だ」


「サラサは元々多忙ですから」


「ヴァレンタインも何かと忙しいらしいぞ。まぁ卒業後はそんなもんだろ。お気楽にしてんのは俺らくらいだよ」


「そうか」


 そう一言言い置いたルドガー様に様子を伺われた気がして、私はどことなく落ち着かない。


「また、会えますから」


「ま、そうだな」


「あぁ」


「そろそろ行こうか」


 頃合いを見たローランドさんが、声を掛けてくる。


「気をつけなさい」


「元気に帰って来なければ承知しませんからね」


「気をつけて……っ!」


「今度は僕も連れて行ってね」


「行ってらっしゃいませ」


 見送りに来た家族や屋敷の使用人たちに別れを告げて、馬車を使わない旅路へと足を踏み出す。


 まずは3ヶ月。剣士としての箔付けを目的としたライト兄様とは違い、その間にある程度の収穫と実績を得ること。


 旅の進退はローランドさんが判断し、適正や状況によっては期限前の中断も有り得るという条件付き。


 条件だらけの不確かな道の中、得られた機会を生かすも殺すも自分自身。


 困難しか見えない時も、見方や考え方を変えることで、全く新しい展開が開けることだってある。


 正攻法でぶつかればいいという訳でも、きっとない。


 大事なのは、勝つことではなくて負けないこと。最後に自分が、できれば周りも、納得して笑えていられる未来になるように、少しずつでも前進する。


 少し前の私には信じられないような貴重な機会が目の前にあった。その恵まれた環境と、出会いへの感謝を忘れず、いい機会に、していきたい。

 

「行ってきます……っ!」


 私は笑顔で、手を振った。


 





完。



ここまで長々とお付き合い頂き本当にありがとうございました!!

広げたものの、色々回収し切れていないのですが、ひとまず終わりとなります。


終わりは無難と破天荒でぼんやり考えていたのですが、破天荒にしてしまいました……←


三角関係については番外編的なもので終着点をつけようと思っております。

気が向きましたらもう少しだけお付き合い頂けますと幸いです……。


少しでも楽しんで頂けたら嬉しいです。

ありがとうございました!

読んで下さりありがとうございます!

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読んで頂けて本当に励みになります!

ありがとうございます!!

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