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【完結】前世の男運が最悪で婚約破棄をしたいのに、現れたのは王子様でした?  作者: 月にひにけに
第一章 婚約相手は王子様?

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34.婚約破棄? ⭐︎

「それで、ハンナちゃんたちは昨日どんな話をしてたんだい?」


 遅れて届いたルド様分の紅茶を飲みながら、私とサラサの変な空気をかき消すようにルド様がにこやかに話を振ってくる。


「そうですね、私もそれが聞きたいです」


 ルド様に合わせるように、サラサも私へ話を促す。2人の視線が集まり、私は若干緊張を覚えながら、口を開く。


「何を……と言っても、よくわかんなかったんだよね……。結構無言な時間も多かったし……」


 話しながら、私は昨日のことを思い返す。


 ライト兄様とルド様がトイレ前で注目の時間を繰り広げている最中、私とヴァーレン様は気まずい時間を過ごしていた。


 部屋に置いてけぼりにされ、隣に座り、婚約者と言う立場ながら、その距離感は果てしなく遠い。


「あ、あの……ライト兄様はいつもあんな感じなので……兄妹揃ってご迷惑をおかけして……っ」


 隣に座るヴァーレン様を見上げると、仮面の奥からこちらを見返す黒い瞳とかち合った。


 その瞳は優しげながら、私の言葉を遮る。


「ルーウェンとは付き合いが長くてね。煮え切らない私の背をいつも押してくれるから、助かっている」


「そ、そうですか……? なら良かったのですが……」


 にっこりと穏やかに笑うヴァーレン様に対して緊張しているようで、私は二の句が継げずにスカートを揉みしだく。


「……まぁ、ちょくちょく力ずくだったり悪戯心優先の時は困り物だがな」


「ライト兄様、ヴァーレン様にまでそんな感じなんですか……」


 ゲンナリとした私の顔を見て、ヴァーレン様はふふと笑う。


「…………」


「…………」


 降りてくる沈黙の中、会話が続かないなと視線を泳がせる私に、ヴァーレン様は少し息を吐いたかと思うと口を開く。


「……ヴァレンタイン卿とは……その……仲が良いのか?」


「……っ!? や、いえ、会ったのはほんの数日前なので、あんな王子様みたいに人気のある方と仲がいいだなんてそんな恐れ多いと言いますか……っ!?」


 後ろ暗いことは何もないはずなのに、突然の本題と内容にアワアワと答える私は、どうしても不自然に映っている気がしてならない。


「……そうか、今日は乱入してしまって申し訳なかった。邪魔をするつもりではなかったんだが、結果的に盛大に邪魔してしまったな……。今もヴァレンタイン卿はルーウェンに捕まっているし……」


「ですから、あの、今日は、何て言いますか、呪いのお疲れ会みたいなものなので、仲良いとか良くないとかではないです!」


 ルド様にしたように、一から事情を説明しようかとも思ったが、そうすると必然的に婚約破棄を目論む流れも必要になってしまう。


 今このタイミングで、情報をほぼ掴んでいない格上身分のヴァーレン様に、それを切り出すのはさすがの私も躊躇われた。


 慌ただしい私をしばし眺め、ヴァーレン様は静かに口を開く。


「婚約の…………ことだが………………あれは、無理しなくて構わない」


「…………………………えと、それはどう言う……?」


 ヴァーレン様の言いたいことがわからず、「?」だらけの頭で見返していると、ヴァーレン様は視線を逸らしながら口を開く。


「もっと……早く言うべきだったのだろうが、私との婚約は……気にしないで、ハンナ令嬢が好ましく思う男性が見つかるまでの……何と言うか、隠れ蓑にしてくれればいい……と思っている……」


「………………え?」


 聞き間違いかと思ったが、遠回しに婚約破棄を告げられたような気がしたのは気のせいだろうか。いや、気のせいでは無い気がする。


 本当に全く何でもないが、ルド様と接触していたことが問題だったのだろうか。そりゃぁ婚約者の立場で婚約相手が他の人と仲良さげではいい気がしないのは当たり前だ。当たり前だけれども。


「あ、あの……そ、それは婚約……破棄……と言う……?」


 何故であろう。そもそも婚約破棄を望んだことから始まっている事態のはずなのに、いざヴァーレン様から突然に告げられた内容に私は頭が真っ白だった。


 私の軽率な行動で怒らせてしまったのかと、一家打首なんて凄惨な想像に打ち震える声で様子を伺うと、ヴァーレン様ははっとしたように振り返る。


「すまない、そう言うつもりではなく………………っ!」


「おい、バカ妹っ! ニースも待たせてんだ! 帰るぞ!」


 ヴァーレン様が慌てたように口を開こうとするのと同時に、既視感のある勢いで個室の扉がバシーンと開かれる。


 ギョッとして不自然な体勢で停止し、ヴァーレン様と私は扉を振り返る。


「ルーウェン。曲がりなりにもうら若き婚約者カップルが滞在する個室に、ノックもなしに踏み入るのはどうかと思うよー?」


 ライト兄様の後ろから、ルド様がにこやかに口を挟む。ルド様の髪と衣服が心なし乱れていたのは、ライト兄様の詰問のせいだったらしい。


「……この妹と()()に限って、絶対に()()


「……どういう意味だルーウェン」


「わからないよー? 可憐な女の子の前では、男は皆んな狼だからねぇ?」


 謎の自信と共に意地悪い顔で断言してくるライト兄様に対し、少しだけムッとした様子を見せるヴァーレン様と、ハハハーと笑うルド様を、私は見ている他なかった。

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