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荒神既に帰す  作者: 王圏 庵
3/7

~三章~

初投稿作品となります。

更新速度、文章、内容等至らぬ部分はあるかと思いますが

温かい目で見守って下されば幸いです。

コメント等励みとなりますので

宜しくお願い致します。

化物と目が合ったまま動けずに時間だけが流れていく。

実際にはほんの数秒の出来事なのだろうが

俺には数時間にも感じられる程の時間だった。

ふと、化物が目線を逸らし、辺りを見渡し始めた。

何かを確認しているのか、警戒しているようにも見える。

一つ分かることは、『俺の事はいつでも殺せる』そんな余裕だった。

漫画やアニメならこの隙に攻撃をしたり、

せめて逃げ出したりするのだろうが

硬直した身体はピクリとも動かない。

逃げたとしてもすぐに追いつかれるだろう。

そう思うと余計に身体が強張ってしまった。


一通り辺りを見渡した後、

そいつは再びゆっくりと俺に視線を戻した。

いよいよやられる。殺される。

そう思ったと同時に俺の頭をよぎったのは

幼いころの嫌な思い出だった。

独りぼっちが寂しくて泣いていたあの頃の。

走馬灯ってこんなもんなんだな。

俺が目を瞑り初めて死を意識したその時、

化物の絶叫にも似た咆哮が響いた。


……来る!!

来る。もう来る。……来……来ない?

思ったよりすごく遅い。

来るなら一思いに早くやってほしい。

焦らすのか?弄んでいるのか?

そう思うと少し腹が立ってきた。

不思議なことにほんの少しの怒りが恐怖を和らげてくれた。

おかげで固くつぐんだ瞼を開くことが出来た。

まぶしくて景色が少しぼやける。

化物はどこだ?あそこから動いているのか?


目が光に慣れたとき遊具の上には化物ともう一つ姿が見えた。

それは二本の足で立っていて

身の丈は俺より小さく見える。

長い黒髪に変わった着物の様な服。

手には長い棒のようなものを持っている。

こちらに背を向けていて顔は見えないがはっきり分かる。

人だ。

人があの化物と対峙している。

しかもよく見ると化物の右前足から血が噴き出ている。

あの人が攻撃したのか?

自分の三倍は大きいあの化物を?


さらに、彼は持っている棒を横一線に振り払った。

その時俺はそれが薙刀に似た武器だと認識できた。

薙刀が通った直後、化物の顔から血が飛び散った。

二度の攻撃に化物は怯み傷口をかばうように悶える。

直後、化物はかばうような動作から流れるように

左前脚の爪を彼の頭上に振り下ろした。

俺には彼らの動きが早すぎて何が起こったのか理解が出来なかったが

彼は無傷で化物から4m程離れた位置に移動していた。

彼の攻撃から一瞬の出来事だった。


「大丈夫かのぅ?」

「ひいっ!!」


俺は突然後ろからの声に思わず叫び振り返った。


「あまり大きな声を出すでない」


そこには赤ら顔で鼻の長い小柄な白髪の老人がいた。

その姿形には見覚えがあった。


「て、天狗……?」

「よく知っておるのぅ。左様。儂は鞍馬山が天狗、僧正坊である」


鞍馬山?天狗?この人は本気で言っているのか?

天狗か聞いたのは俺だが天狗なんている訳ないだろう。

でも明らかにこの老人の鼻は特徴的で

昔話に出て来る天狗の顔そのものだった。


「信じられないという顔じゃのぅ。しかし、儂が嘘をついたとしてあの獣はどう解釈するのだ?」


老人はこちらの反応を面白がるように質問してきた。

確かにあの化物を見た後だ。天狗が居たっておかしくはない。

……そんな気がしてきた。


「あの化物は何なんです?」

「かっかっか!そっちが先に気になるか。

 よかろう。あれはパズズと呼ばれる中東の怪物じゃ」

「パズズ……?キメラじゃなくて?」

「キマイラとは似て非なるものじゃ。よほどこっちのがタチは悪かろうて」


この爺さんなんでも知ってそうだな。

てか、この爺さん達は俺にとって敵なのか?味方なのか?


「あなた達は一体何なんですか……?」

「ふむ、それはこの討伐が終わってから話すとしようかの」


爺さん天狗は俺に微笑みかけると目線を移し

戦闘中の彼に向って声を張り上げた。


「黒丸!早う終わらせぃ!」


声を聴くや否や彼は一足飛びにパズズの頭上に近づき

その首に薙刀を突き立てた。

刃はまっすぐパズズの首に突き刺さり

パズズは驚きに似た表情のまま地面に突っ伏し動かなくなった。

あれだけ恐ろしかった化物は最後、何の声も上げることなく討ち取られた。

彼はパズズの首から薙刀を引き抜くとこちらに向かって声を発した。


「僧正様!終わりました!」


その時俺は初めて彼の顔を見た。

その顔見て彼は彼ではなく彼女であることを知った。

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