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転生

冷水湖しみずひろし30歳。無職。童貞。

 これだけ聞くとどうしようもない人に見えるだろう。実際クズだと言われても反論できない。

 しかし、実家暮らしで出費を最小限に抑えているが、生活費を親に出してもらっているわけではない。学生時代に得た小金を使って趣味の競馬で月に5万ほど稼いでいて、そのお金で生活している。

 それならプロ馬券師と名乗れるのでは?と思われるかも知れないが、流石にそれは烏滸がましいと思うほどしか稼いでいない。一人暮らしだと家賃で詰むし。

「いってきます」

 今日は12月24日。そう、有馬記念の日だ。

 えっ?クリスマスイブ?なにそれ?縁がないから忘れてたわ。

 有馬記念という事で普段は家で観戦するだけだが、今日だけは別だ。久しぶりに家を出て現地で観戦する。

 久しぶりの外出で慣れない満員電車に体力をゴリゴリと削られる。あと3駅で東中山駅に着くのでそれまでの辛抱だ。今日のレースの最終確認でもしてやり過ごそう。

 あと少しで次の駅に着くというところで目の前にいた女性が悲鳴をあげた。何事かと視線を上げるとその女性は俺を見るなり意味のわからないことを言い出した。

「この人痴漢です」

 電車内の全員が俺を見る。近くにいた男性がスマホを持つ俺の左腕を掴む。痛いし、やっていないので話してほしい。

 駅に着くと俺は俺の腕を掴んでいる男性に引きずられるようにして電車を下ろされた。

「お前、ちょっと来い」

 男性が唾を撒き散らしながら吠える。なに正義ぶってんのか知らないけど正直いってうざい。万が一俺が痴漢をしていたとしても被害者の女性が俺を責めるのならわかるが、なにもされていない赤の他人が俺を責めているのはおかしくないだろうか。

 俺は男の手を振り払う。

「俺は痴漢なんてしていない。もし俺が痴漢をしたのであればその証拠を警察に提出をしてからお願いします。では。俺は用事があるので失礼します」

 言いたいことは言えたので俺は彼女たちに背を向けて少し早めに歩き出す。こんなところにはこれ以上居たくない。だからニートをやっていたのに。外出なんてするもんじゃないな。

「おい、待てよ」

 ちょうど階段に差し掛かったところで後ろから怒声と共に足音が聞こえてきた。振り返ると先ほどまで俺の腕を掴んでいた男が拳を握って俺を追いかけてきた。

 は?

 男の拳が俺の頬に直撃する。

 身構えていなかった俺はバランスを崩し階段から転げ落ちる。

 視界が赤く染まり意識が遠くなっていく。

 起きたらどうなるのかな。無罪で病院のベッドが理想的だけど。痴漢冤罪は怖いからな。どうなるのか分からない。有罪扱いにされている可能性も十分ありそうだ。法律は詳しくないからイメージだけど。

 ああ、でもどっちにしても有馬記念は断念するしかないな。みたい馬がいたのに。

 

 

 目が覚めると病院のベッドの上ではなくゆりかごの上だった。

 ちょっと待ってくれ。意味が分からない。まだ独房で目が覚めた方が現実味があって信じられるぞ。

 体を起こそうとするが思ったように体を動かすことができない。もしかすると事故の影響で障害があるのかも知れない。あの男は絶対に許さない。

 とりあえず声を出して人を呼ぶとするか。

「あーう、ああうー」

 なんだ、この赤子のような声は。俺の声は30歳成人男性のモブ声だぞ。どう頑張ってもこんな声は出ることはない。

 俺の声に反応したのか、一組の男女が近づいてくる。

 俺を覗き込むのは憎らしくもならないほどのイケメンの男性と若い頃の母に似た女性だ。

「あら、起きたのね。今度は何かしら」

「どうだろう。見たところおむつではなさそうだけど」

「それじゃあミルクかしら」

 おむつ?ミルク?ちょっと意味が分からない。そんなのまるで赤子みたいじゃないか。 両手を持ち上げる。視界に入るのは小さく、柔らかそうな手。俺の手とは全く違う。これはどう見ても赤子の手ではないだろか。

「そういうこと」なのだろうか。

 よく見ると男性の耳が少し尖っている。まるで木の葉のようだ。

 異世界転生。今のところそう考えるのが妥当だろう。

 とりあえずその胸をしまってくれ。初めての生の女性の裸体なのに若い頃の母に似ているせいで全く興奮できない。この体のせいと言うのもあるのかも知れないけど。腹も減っていないし。それに、どちらかというとおしっこの方がしたい。


 暫定ではあるが、両親に見守られながらお漏らしという考えうる限り最悪の屈辱を味わってしまった。

「あらあら、事前に教えてくれたのね。あなた、変えのおむつ取ってきてくれないかしら」

 男性が席を立つ。その間に女性が俺の服を脱がし始める。

 女性がタオルを手に俺の股を拭く。このとき、俺は今までの人生で一番の衝撃を受け得た。

 そう。息子が消えていたのだ。

「うああん」

 あまりの衝撃に自分でも驚くほどの声が出た。

 俺は生まれ変わったら女になっていたのだ。

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