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ネトゲ恋  作者: ちょうちょ
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〜ある女の物語〜

この作品はフィクションです。

夏真っ盛りの午後、彼女は何もかも嫌気がさしていた。


市内の小学校で勤めている彼女は、30歳代という歳にして小学校で講師をしていた。


彼女にはの娘が1人おり、年下の夫がいる。


夫とは5年前に近所の飲み屋で意気投合し、複数回娘も交えて遊びに行き、この人ならと思える男性であった。


夫の実家は東京だが、仕事を辞めてワーホリで彼女の近所の安ホテルで生活していたのであった。


飲み屋でも、面白いが性格があんまりだとあまり評判は良くなかったが、そのモテない所が彼女にとっては魅力的に見えたのである。


表向きは明るく振る舞う彼だが、金遣いは荒くなく、子どもとも嫌がる事なく遊んでくれる彼にどんどん惹かれていった。


しかし、会う日も会う日も安ホテルなので、一緒に安心して住める場所が欲しかった。



そして彼女の親に相談し、昔使っていた実家の空き家に住み始めた。


築50年以上の古い長屋の端っこ。しかも10年くらい放置してあったので、色んな箇所がボロかった。


だが、3人で一緒に住めるというだけで彼女は嬉しかった。


ボロボロのガスオーブンも買い替え、穴の空いた外壁もリフォームし、昔使っていたピアノや、要らないものは全て捨てて、新しい生活が始まった。


一緒に生活していると楽しい日もあるが、辛い日もある。皆同じだ。毎日楽しいだけでは暮らせない。苦楽を共に過ごすことが誰かと一緒に暮らすということだ。


そう思っていたが、仕事に家事に育児だけではなく、夫の面倒まで見る事に疲れてきたのだ。


今まで暮らしてきた通りにならない事は百も承知だったはず。なのに、それだけではない気がしてならない。


夕飯の時間になると目の色が変わるのだ。


「スプーンをみんなの分用意するんだよ。」


と言って娘に持って来させる。


それまで娘は家のことをほとんど手伝うことがなかったからできるのか心配だったが、案の定いやいやしていた。


「自分の部屋を掃除しろ。」


そう言って、自分でできるようにさせようとする。確かに小学校3年生となれば、それくらいできる子もいる。


しかし、娘は自分でなんてしたことがなかったのだ。私がほとんどしていたからだ。


こう自分の都合よく人を動かそうとする姿に嫌気がさしていた。


段々と娘も夫と居ることを避けるようになり、自分の部屋で過ごすことが増えていく。


夫も夫で自分の部屋を作り、好きな映画を見てスマホをいじり、時々笑い声が聞こえてくる。


それが日常になっていった。


仕事から帰っても、寂しい日々が続き、犬を飼うことにした。一匹もう一匹と飼っていくと、ついでに野良猫まで拾ってしまい動物三匹と人間3人が暮らすことになった。


しかし彼女は動物達が心配な事と、娘に気を使い、夫とは寝室を共にせず、夜は1人でリビングで寝る。


そんな生活を繰り返し4年が過ぎ、毎年受けていた教員採用試験から投げるかのように、何か熱中できるものが欲しいと思っていた時。


「アクティブミラーというゲームが出るらしいよ。なんか面白いんだって。キャラクターも可愛いらしい。」


娘からの勧めでスマホアプリをダウンロードしてみた。


娘の言う通り、面白そうだった。女の子が敵と戦っていくゲームでどのキャラもリアルで魅力的だった。


ストーリーを進めていくと、ジェムやコインが貰え、キャラを育成できるのだ。あまりそういうキャラ育成系のゲームはした事がなかったが、キャラの良さから続けていく。


毎日のように採用試験のことも忘れて、育成に励みストーリーを進めていく。


夏休みという事もあって、熱心に取り組んだ。


夏も終わりかけた時、ギルドに入る事にした。ギルドに入れば、大樹林のかけらを集め、そこでジェムやブースターに交換できるのだ。ならば入らな損ということでどこでもいいと訳の分からない言語のギルドに加入した。


同盟チャットでは、何もわからない。文字も読めない。


「何語だこれ。insta?」


インスタのアカウントとかを教えあっているのだろう。


よくわからないまんま、数日続けていた。


すると、グローバルチャットでは毎日流れる日本語。


(日本語で会話してる。)


その時の彼女はそれくらいに思っていたのだ。

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