壊滅していたミサイル基地
【壊滅していたミサイル基地】6月
N市は、少しずつ魔物の数を減らしていった。
『N市の西側はほぼ敵をみかけなくなりましたね』
N市と言っても広大であり、
俺たちの攻略範囲は西側の一部だ。
『やっかいな大コウモリも飛んでこなくなりました』
『皆さんのレベルも上がってきたので、次の目標に移りましょうか』
『陸軍の基地ですね』
N市の南約15kmのところに陸軍のA基地がある。
『おそらく、壊滅しているでしょうが、ひょっとしたらまだ基地内で抵抗している者がいるかもしれません』
俺たちはN警察署から拝借してきたウ○モグ車で、
陸軍A基地を目指すことにする。
N市の西側をゆっくりと南下していく。
N市を越え、K市にはいる。
山や田畑に囲まれた地域を抜け、密集した集落を通り、
しばらく走ると軍の基地のそばにやってきた。
ここは世界大戦時には高射砲陣地があったところで、
現在ではミサイル基地になっている。
だが、遠目にもわかる。
戦いの跡がある。
そして、この基地は壊滅している。
基地の隊員が何人いたのかわからないし、
そのうち、生き残りが何人いたのかもわからない。
きっと最後まで勇敢に抵抗したのだろう。
思わず、冥福の祈りを捧げてしまう。
ただ、壊滅した基地を見ると、この基地にいた敵は、
俺たちが遭遇したゴブリンやホブゴブリンとは
質が違うと思わされる。
コンクリートの建物が破壊されているのだ。
ホブゴブリンでさえ、そのような攻撃力を持っていない。
基地を見渡してみる。
建物はほぼ原型がないほど崩されている。
映画の爆撃の後みたいだ。
敵もいなくなっているのは幸運というべきか。
当初、偵察だけと思ってここに来たが、
敵がいないのなら、と残骸を捜索することにした。
『(タケシ、ここにぶきうまっている)』
レオが残骸を示してそういう。
『市河さん、この残骸、武器庫があるかもしれません』
だが、残骸を取っ払えない。
ちょっと断念して、他を見て回る。
少し離れたところにも車両基地のような跡地がある。
破壊された車両が無惨に並んでいる。
そのうえにむき出しの鉄骨が覆いかぶさっている。
屋根の一部だったのだろう。
『おい、この車両、案外無事っぽくないか?』
西田さんが黒焦げっぽい8輪装甲車を示す。
確かに火災にあったあとがあるが、タイヤは無事っぽい。
鍵はかかっている。
俺はレオとともに車両に登り、ハッチに手を当てた。
『(タケシ、かぎはかんたんだ。ちょっとまて)』
数十秒、レオはハッチと格闘していると、
『カチャッ』
蓋があいた。
中を見ると、全く大丈夫そうだ。
『よし、私にまかせろ』
西田さんはそういうと車両に乗り込み、
なんだかゴソゴソとし始めた。
すると、元気よくエンジンがかかった。
『とりあえずは、応急処置だ。後で、中村さんに鍵を作ってもらおうか』
西田さんは30年前まで陸軍にいた経歴の持ち主だ。
『この車は最新じゃないが、細かい機器の扱いはわからんぞ。ただ、動かすだけなら、問題ない』
確かに、細かなボタンが多い。
『ただな、たぶんだけどエアコンがついていない』
『は?』
『軍の車両にエアコンがつくことは滅多にない』
『どうして?』
『こういう車両はな、歩兵と行動するやろ。歩兵は外で大変な思いをして歩いているのに、車の中だけ快適、ってわけにはいかんやろ』
『それとな、ABC兵器なんかで外が汚染されている場合、エアコンはまずいんや。外の空気を中に入れるからな』
『じゃあ、戦車なんかは蒸し風呂ってこと?』
『ああ。真夏は地獄らしいぞ。俺は乗ったことがないが。ただ、最新戦車はエアコンが載っている。ただし、機器冷却用が主で、そのおこぼれで室内も冷やそうってやつやけどな』
『はー』
『ポータブルエアコン、後付エアコンとかあるけど、ポータブルエアコンは強力なのを探す必要があるし、後付エアコンは手に入るかなあ。他の車のエアコンを移植するってのもあるけど、僕らでは無理じゃないかな』
『キャンピングカー売ってるところなら、後付エアコンの強力なのがあるかも』
『キャンピングカーか。販売店は遠そうだよね』
『このへんだと、H市に有名な店があります。俺の車を買ったところです』
『そっか、行けるといいな』
『よし、みなさんちょっとどいていてくださいね。瓦礫からこの車を出しますから』
装甲車は鉄骨に覆われた廃墟の中から
なんとか外へ出ることができた。
この車の諸元はわからないが、外から見る限りは
全 長 約7m
全 幅 約2.5m
全 高 2m弱
乗員数 約12名
武 装 12.7mm重機関銃M2
である。M2は傑作銃なので、すぐにわかった。
なお、後日簡単な資料を見つけたところ、
最高時速100km、走行距離500km。
ディーゼルエンジンを搭載。
通常は前から数えて第3軸と第4軸が駆動するが、
全軸駆動に切り替えることもできる。
『いいのが残ってたな』
『ああ、少々の攻撃なら耐えられそうだ』
『じゃあ、武器庫がありそうな場所、なんとかしようか』
俺はさっきの推定武器庫の場所まで行って、
装甲車にロープをひっかけて残骸をどかしていった。
しばらく作業すると、瓦礫から黒焦げの扉が見えてきた。
『この扉なんとかなるかな』
とは思うものの、見た目でも扉が歪んでいるのがわかる。
『中村さん、とりあえず鍵お願いできますか』
『よっしゃ』
しばらく奮闘したあと、中村さんは鍵をあけた。
しかし、扉はビクともしない。
再び扉のノブに鉄製のロープをひっかけて、
装甲車で引いてみた。
ほんの僅か開けることに成功したが、
結局ノブがとれてしまった。
装甲車に鉄棒をくくりつけ、ノブの穴を押してみた。
すっぽりと穴が開いたので、ドアの隙間とその穴に
鉄製ロープをくくりつけ、再度装甲車で引っ張ってみた。
『ギギギ』
という耳障りな音をたて、ようやく扉が開いてくれた。
『おお、弾薬が大量にあるぞ』
この倉庫は弾薬のみであった。
だが、それでも幸運だ。
俺たちは装甲車の弾薬、ショットガンの弾、
ライフル銃の弾を持ち出せるだけ持ち出した。
『大漁だな!』
俺たちは意気揚々と拠点に戻ることにした。
弾薬庫を見つけてくれたレオにはチュールのお礼だ。
『出発する前に、この車の使い方を練習しておこうか』
といいつつ、しばらく車を点検していた。
そして、俺たちは車の走らせ方や銃器の扱い方を
西田さんから教えてもらった。
この車は、運転するのに見通しがかなり悪い。
だから、車のハッチから顔を出して目視したほうがいい。
それと、M2機関銃は車内からも操作できる。
M2機関銃はライフルの3倍程度の威力がある。
しかも機関銃で連発できるのだ。
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