食についての提案
【食についての提案】
『私から提案があるのですが』
そういうのは、中村さんだ。
『この研究所には食料は十分足りてるんだけど、野菜が不足しています。ホームセンターに種は十分にあります。だから、栽培してはどうかと』
『ああ、それは大賛成だわ』
女性を中心に賛成の声があがった。
『問題ないですよね。そもそも、周りに農地だらけです。農作物が育っている畑もあるし、ちょうど時期的に種まきには絶好の季節だし』
中村さんを中心に野菜と果物を植えることにした。
土壌改良は中村さんにはお手の物だ。
『野菜作りの提案したついでにもう少し詰めてみたいんですけど』
『中村さん、どうぞ続けてください』
『現状では、食糧はあまりすぎるほどあるし、この研究所のおかげで料理も問題ない』
『ほんと』
『でもさ、食糧はいずれダメになるでしょ。この研究所のインフラもいつまで保つか』
『ああ、この研究所にストックしてある食糧は、おそらく数ヶ月で殆どが廃棄処分だろうね』
『穀物系は精米とか小麦粉とかは2・3年保つかな?』
『精米店や農家に脱穀してない米があるとして、それだと保存ばっちりやって、10年保つかどうか』
『肉は壊滅だよね』
『うん。チルドビーフだって、状態が良くても2年程度だ』
『非常食だって、賞味期限は長くても5年とかだもんね。それも、大量にあるわけじゃない』
『賞味期限だから、期限切れても問題ないかもしれないけど、それでも消費期限はさほど延長できるとは思えない』
『つまり、数カ月後には急速に食のバリエーションが狭まるし、1年後あるいは数年後に飢餓が到来してもおかしくないと』
『だからさ、野菜だけじゃなくて、米とか小麦あたりの生産を視野に入れる必要があるのと、タンパク質をどうとっていくのかってこと』
『中村さんは農家だっけ』
『うん。米・小麦あるいは大豆とかの二毛作やってるし、一通りの野菜の栽培もやってるから、作ることだけは大丈夫だと思う』
『肥料は大丈夫?』
『肥料は保存さえしっかりしていれば、劣化するようなもんじゃない。でも、将来的には中世のようになるかもしれないね』
『じゃあ、貝殻粉とか堆肥とかを活用するのか』
『まあ、そうなるよね。ただ、昔よりも土壌に対する知識はかなりあるから、生産性はそこそこ確保できると思うけど、田んぼや畑はたくさんあるから効率性はとりあえず考えなくてもいいかな』
『動物性たんぱく質は』
『人間が僅かに生き残っているだけで、ペットとか見ないでしょ?空に鳥も飛んでないし』
『地上の哺乳類や鳥類は絶滅したかもね』
『虫はいるよね』
『害虫がどういう動きをするのか怖いんだけど。天敵がいなくなってるだろうし。農薬もだんだん劣化していくんだよね』
『最悪、虫喰うぞ』
『えー』
『偏見。虫は栄養素が高いし、美味いのもあるらしいぞ』
『昆虫食レストランもありましたよね』
『ただ、牛とか鶏は望み薄ですね』
『うん。いても怪物にやられてしまうだろうし、そもそも牛とかだと飼料が大変。バカ食うからな』
『すると、植物性タンパク質、大豆とか、あと魚?』
『魚はどうなんだろう。普段、魚が川にいるなんて気にしないもんな』
『私釣りが趣味なんですけど、魚、川で泳いでますよ』
『昔は川には大量のうなぎで黒ぐろしていた、って話も聞きますから、生態系が回復したら川魚期待できるかもですね』
『じゃあ、海魚も期待できるね』
『こっからは海までちょっと遠いですけど、近海物はどっちゃりありそうですね』
『で、なんとか食糧は確保できたとして、問題は危険性』
『ああ、魔物が跋扈してるんだからな。一応、この付近の魔物は排除したが、いつ何時現れるかわかったもんじゃない』
『田畑自体は1haかそこらで十分ですから、周囲をネット・フェンス・電気柵なんかで囲う必要がありますね』
『耕作は一人ではやらないこと。必ず見張りとともに行うこと。てことですかね』
『あ、あとガソリンはたぶん1年保たないんじゃないかな』
『そんなに早く劣化する?』
『うん。下手すると数ヶ月で腐るよ』
『それは大変だ。多少なりとも劣化を遅らせるには?』
『密閉した容器で冷暗所に保管。ただ、危険だから保管所も選ばなきゃダメだけど』
『それでも、来年か再来年にはガソリンが枯渇すると』
『わからんけどね』
『うーむ、生活を一から見直す必要があるな』
『電気に移行するかね』
『電気っていっても、電気はガス発電とかがメインだからな』
『持続可能性のある発電機を活用するしかないですね』
『太陽光か風力発電か。幸いにもこの拠点には太陽光発電が充実しているから、それで賄うとして、太陽光発電機もどんどん手に入れる必要があるね』
『EVを見つけてこなくちゃ』
『見かけたら、引っ張ってこなくちゃいかんですね』
『ただ、バッテリーも将来的にはダメになるから、代替を考えなくちゃ』
『鍵とかは、中村さんがどうにかしてくれるよ』
『いや、万能じゃないんで五分五分とみてくださいね』
『じゃあ、中村さん。農作業の計画、お願いできるかな。当然、農作業は中村さんだけにまかすことはしないよ。全員を計画に組み込んでほしい。みんな、それでいいよね?』
『当然だ。中村さん、お願いするよ』
『わかりました。まあ、器材とか農機具とかは店やその辺に転がってますから、辛い農作業とかにはなりませんので安心してください。電動農機もありますからね』
ブックマーク、ポイント、感想、大変ありがとうございます。
励みになりますm(_ _)m




