車中泊したら魔獣にやられた2
【車中泊したら魔獣にやられた2】異常発生初日
ザリザリ。
『レオ、朝ごはんか。ちょっと待て』
俺は頬に感じるレオの舌で意識を取り戻した。
周りが明るい。朝のようだ。
同時にレオからいい香りが漂ってくる。
花のような香りで気分が落ち着く。
『いや、朝ごはんじゃない。獣はどうなった』
目を開けると、レオの顔。
『ああ、おまえ無事だったか』
俺は慎重に自分の体をチェックしてみる。
頭は……異常無し。
腕は……異常無し。
足は……
俺は猫を抱えながらゆっくりと起き上がる。
全身異常がないようだ。
だが、服が血まみれだ。
『(タケシ、オレがなおした)』
『? 誰だ』
『(オレだよ)』
『もしかするとレオか?』
『(そうだよ)』
誰かがしゃべっているんじゃない。
俺の頭に直接語りかけている感じだ。
『ドッキリか?』
俺は周囲をキョロキョロした。
『(キョロキョロするな)』
『なんだ、俺は夢を見てるのか?』
『(夢じゃないぞ。タケシ、おまえじぶんをチェックしてみろ)』
『? チェック?』
すると突然、俺の眼の前の空間に浮かび上がる文字。
名前 苅屋健志 かりやたけし
年齢 38歳
出身 異世界大和国
種族 人間
特記 鑑定魔法L1、剣L1、身体強化L10
『なんだ、これは?メニューってやつか?』
『(トッキがでたろ)』
『特記?まて、出身 異世界大和国ってなんだ?』
『(しらん)』
『ふざけてんのか?』
『(いせかいてんせいか?)』
『異世界転生はしてないだろ。俺はガキになってねえし、風景も変わってないぞ。だいたい、異世界なんて空想物語じゃねえか』
『(そうか?)』
『うーん、レオがしゃべってるしなあ。メニューもでたし』
『(くうそうじゃないぞ)』
『それにしても、猫のくせに異世界転生知ってるんだ』
『(タケシ、いつもパソコンでアニメ見てた)』
『なんだよ、キーボードの上で寝てただけじゃねーのか』
『(おれはかしこい)』
『まあ、いいか。で、鑑定魔法L1、剣L1、身体強化L10ってなんだ』
『(オレもでた。カイフクマホウL10、シンタイキョウカL10、あと、シンニュウL5)』
『俺たちは魔法が使えるのか?』
『(そうだな。つかえるみたいだ。オレはタケシをカイフクさせた)』
『俺を回復させた?』
『(タケシはホネがバキバキだった)』
俺は意識を失う直前を思い出した。
確かに痛みで体が動けなかった。
恐怖が蘇ってきた。
『(オレもやばかった。でもかいふくした)』
『おまえは俺の命の恩人ってか』
『(おたがいさまってやつだ)』
『いや、回復魔法ってやばいぞ』
『(よくわからんが、ケモノをたおしたろ)』
『ああ』
『(オレたち、やつのトクギをすいとったみたいだ)』
『じゃあ、あの獣は魔物ってことか?』
『(しらん。そういや、エンバンとんでたよな)』
『ああ』
『(エンバンがとんでるなら、バケモノぐらいいるだろ)』
『うーむ。じゃ、次な。鑑定魔法ってあれか?』
すると、俺の頭の中に文字が浮かび上がる。
名前 レオ
年齢 六ヶ月
出身 異世界大和国
種族 猫/パステト
特記 回復魔法L10、身体強化L10、侵入L5
『レオ、お前の情報がわかるようになったぞ。お前の種族、猫/パステトってあるが、なんのことだ?』
『(しらん)』
鑑定魔法は、モノの名前とかがわかるようになるらしい。
もっとも、L1だからたいしたことはないだろうが。
『じゃあ、身体強化って』
『(だから、セツメイよめ)』
『基礎体力の3倍以上?』
『(オレも3バイいじょうってなってる)』
試しに、石をつかんで投げてみた。
あり得ない速度で吹っ飛んでいく。
ジャンプしてみた。
1m程度は軽く飛べるようだ。
そばに置いてあるバッテリー、重さ16kgを持ち上げた。
片手でひょいと持ち上げた。軽い。
ちょっと走ってみた。
すごい。切れが違うし、風景が飛んでいくようだ。
息もきれない。
『確かに、身体能力が爆上げしてるぞ』
『(オレもだ)』
視力や聴覚などの5感も鋭くなっている気がする。
俺はわけが分からないながらも、意識を集中させてみた。
『なんだ、俺の周囲の情報が頭に飛び込んでくる』
『(タケシ、オレもまわりのけはいにビンカンになった)』
『シンニュウってのは?』
『(わからんが、こっそりうごけるってことかな?)』
『猫だしな』
UFOを見てから、不思議なことが続く。
オレはふと見慣れぬ黒光りする棒を目に止めた。
『なんだ、これは?』
オレは棒を拾い上げた。
すると、クロスボウに変身した。
『(それ、ケモノがもってたやつだ)』
『なんだと?』
『(タケシ、みえなかったのか?)』
『てか、おまえふっ飛ばされたくせに見えてたのか』
『(ああ。タケシ、かまえてみろ)』
俺はクロスボウをかまえてみた。
すると、不思議なことに光の矢らしきものが現れた。
俺はそばの木に照準を合わせると、色が赤く変化した。
俺はトリガーを引いた。
『バシュ!』
光の矢は見事木に深々と刺さった。
木は太さ30cmはある。かなりの威力だ。
もう一度かまえてみる。
光の矢がセットされた。
照準を合わせる。
照準が赤くなる。
発射する。
しばらく、クロスボウの練習をした。
どうやら、光の矢は無尽蔵みたいだ。
射程距離は100mはある。
それ以上でもいけるようだが、実用的ではなさそうだ。
『(タケシ)』
『なんだ』
『(チュールくれ)』
俺は緊張感のなさに力が抜けながらも、
レオにお礼のチュールをあげた。
しかし、俺やレオの能力、
誰が信じるというのだろうか。
というか、俺はいまだに頭が混乱している。
この世界はゲームのような世界になったというのか。
今ごろ、みんなメニューを眺めているというのか。
いずれにせよ、少なくともレオの能力は隠しておこう。