C町での生き残りの捜索2
【C町での生き残りの捜索2】異常発生3週間後
『よく、3週間も持ちこたえられましたね』
『ええ、まず僕たちのいたところが4階で、怪物騒ぎが下の階で聞こえてきましたので、すぐにペントハウスに避難できました。ペントハウスには通常人がいないことも助かりました』
『食事には苦労しましたが、夜間は魔物の活動が低下するのはすぐにわかりましたから、なんとか病院の厨房で食料を調達しました』
『かなりやばかったです。食料がつきかけていました』
『僕たちもお医者さんや看護師さんを迎え入れられたのは心強いです』
『この近辺の病院や薬局の薬は大量に残っています。ここは薬の研究機関・工場です。それに、病院を稼働させようと思えばできるはずです。手術も可能だと思います』
『お風呂にでも入ってもらって食事しましょうか』
『ああ、天国ですね』
病院の人たちは、周囲の人が消えることは目撃していた。
しかし、人間が魔物に変身したのは見ていなかった。
一番きついところを見てはいなかったのは、
ある意味幸いだったであろう。
人間は危険が迫ると上に行くようで、
飯田先生がとっさに屋上への扉の鍵を握りしめると、
ちょうど廊下にいた看護師や患者に呼びかけ、
屋上へ避難した。
屋上には避難器具が設置されてあるので、
いざとなれば、地上に降り立つことができる。
小学生の江藤くんは玄関にいて母親を待っていたのだが、
入り口から魔物が入ってきたため、上に上がったのだ。
ちょうど屋上に向かう飯田さんたちと合流して
ペントハウスに逃げ込んだという。
結果としては、ナイスな判断だったわけだ。
それでも、精神的な負荷はかなりかかっている。
夜になると泣いているものもいるし、
寝ていてうなされるものもいる。
『江藤くんはいつも明るくふるまっているけど、目の前で母親が消えちゃったんだよね』
『ええ。最初の頃は目が虚ろだったのよ。最初の夜なんか錯乱状態になったし、ほんの一時期だけど、赤ちゃん返りしたこともあったわ』
『私達もそれぞれ家族がどうなったかわからないけど、江藤くんのケアに一生懸命になることで、ある意味立ち直れた部分があるわよね』
『江藤くん、僅かの期間でここまで立ち直れるのは気持ちの強い証拠だろうけど、やっぱりムリはいつか歪となってくる。それは僕たちも同じだけどね』
『でも、レオちゃん、不思議な猫ね。江藤くんにも寄り添っていたけど、そばにいると、気持ちが安らかになってくるのよ』
『夜なんか、みんながレオちゃんのそばで寝たがるのよね』
こういう場面では本当にレオは役にたつ。
レオからは気持ちを和らげる香りが漂っている。
それと、密かにレオは回復魔法を使っているようだ。
精神面を根本的に治すことは難しいが、一時的なしのぎにはなる。
しばらくは、彼らにはゆったりと過ごしてもらった。
数日後、新メンバーを加えて現状を話し合うために、
トレーニングセンターに集まってもらった。
『皆さんの安全は確保されました。食料も当分困りません。しかし、戸惑うかもしれませんが、みなさんも生き残る力を手に入れる必要があると思います』
『生き残る力ですか』
『ええ。実は魔物をやっつけると、僕たちの身体能力が上がります。僕は一流アスリート並みの体力を身に着けています。こちらの苅屋さんは人類最強レベルです』
『俺はもともと何の変哲もないオヤジでしたが、今では握力200弱、垂直跳び2m弱、通常の人間の3倍以上の反射神経を手に入れました。それ以外でも身体全般的に能力が向上しています』
そういいながら、俺は実測器で実際の数値を見せた。
『本当ですね。こんなのみたことない』
『こちらの市河さん、俺たちの最年長で65歳です』
『え、40歳ぐらいにしか見えません』
『若返るんですよ。身体能力だけでなく、全般的に活性化します。精神力もついて、かなりタフになります。気持ちが安定するんですね』
『我々も可能なんでしょうか』
『ええ。間違いなく。メガネは不要になります。髪の毛も復活するし、白髪がなくなって、天使の輪ができます』
『どのように?』
『私達についてきてください。夜間だと、魔物の活動が低下しますから、そこをクロスボウで狙い撃ちするだけです』
『私達でもいけますか』
『老若男女、子供でも、女性でも、年寄りでも、問題ありません』
『それは心強い』
『しかも、成長がわかりやすくなってます。怪物をやっつけると、視界にメニューが現れます。そして、そこに簡単なバイオデータとレベルが表示されます』
『メニューとレベルですか。ゲームみたいですね』
『ええ。ここはシューティングゲームみたいな世界に変貌しています』
『はあ、現実味がないですね』
『はい、全く。ただし、現実には死と隣合わせです』
『ふむ。気を緩めたらいけませんね』
『そうです。それと、重い話をします。やる前にこんなことを言うか迷ったのですが、ちょっと心構えして聞いてください』
『はい、わかりました』
『いいですか、ゴブリンもゾンビも何もないところから生まれたのではありません』
『では』
『実は、彼らは元々人間なんです』
『えっ……』
彼らは絶句した。
当然だろう。
『どういうカラクリかわかりませんが、ゴブリンは人間がもとになっています。そして、それが失敗したときにゾンビになるようです』
『そんな……』
『私達もそれを知った時は非常に混乱しました。彼らは我々の同僚、友人、家族だったのかもしれないのです』
『……』
『そこで私たちはこう考えました。彼らを鎮魂しなくては、と。このままでは彼らは彷徨える怨霊でしかありません』
『彼らを成仏させること。それが我々の勤めではないかと』
『みなさん、この石をご覧ください。この石は彼らへの鎮魂の塔の代わりをしております。私たちはこの石に朝晩祈りを捧げています。そして、討伐すれば手を合わせて鎮魂します』
『まず、あなたたちの心に折り合いをつけてください。私たちは前に進まなくてはなりません』
『折り合いのついた方はどうぞ申し出てください。十全たるサポートをします。折り合いがつかない方も混乱する必要はありません。できる限りのサポートをするつもりです』
『オレの母ちゃんや友達も怪物になっているってこと?』
『江藤くん、そうかもしれない』
『オレ、やる。母ちゃんも友達もオレの手で天国に送ってやる』
『私達もやる。あんな姿になってしまうなんて残酷すぎる』
『だからといって、彼らに同情しないように。彼らに慈悲の心はありません。なんの衒いもなく、まっすぐに我々を狩りにきます。奴らは獣以下です』
『うむ』
『ほんの一瞬の躊躇で死ぬのはこちらになりますから、ためらいの心を捨てるようにしたいです』
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