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車中泊したら魔獣にやられた1

【車中泊したら魔獣にやられた1】異常発生初日


(おおっ、出たぞ。ビデオ行くぞ)


 俺は苅屋健志、38歳。

 趣味は車中泊で、とあるオートキャンプ場に来ている。

 身長180cm 体重70kgで大柄ということもあり、

 車はRV4躯の大きめサイズを駆っている。


 俺がここにいる目的は車中泊だけじゃない。

 このところ、何度かUFO目撃騒ぎが起きている。

 ネットでも話題騒然で祭りになっているわけだ。

 しかし、動画がない。


 で、俺も便乗しようかと。

 まあ、期待しないで待機してたわけだ。


 出没するのは夜。

 場所は比較的山間部が多い。

 このために、夜間撮影に強いビデオカメラを買った。


 オートキャンプ場、季節外れのせいもあるが、

 俺の車しかいない。

 3月とはいえ、まだ寒い。


 家族は?バツ1。子なし。言わせるな。


 でも1人じゃないぞ。

 車中泊にはいつも一緒の子猫がいる。

 一ヶ月前にやはり車中泊してるときに草むらから現れて、

 そのまま保護した。


 普段はリードをつけてるが、今は周りに誰もいないから、

 フリーにしてある。

 遠くに行っても、チュールと叫べばすっ飛んでくるからな。





 俺は車の外でビデオをセットし、夕食の準備をしていた。

 すると、辺りが一瞬真昼になるような発光が。

 それとともに、甲高い『キーン』という耳障りな音。


 見上げると、距離数百メートル?のところを

 でっかい円盤型の物体が飛んできた。


(きたきた!)


 俺は腰が抜けそうになりながら、スクープ!

 大慌てでビデオの録画ボタンを押す。

 よし、録画がオンになったぞ。


 飛行物体はゆっくりと北西方面に向かい、

 突然姿が消えた。


(よっしゃ!円盤ゲット!こりゃバズるぞ!)


 俺は嬉々として停止ボタンを押し、再生してみた。


(あれ?ホワイトノイズしか写ってないぞ)


 しっかり撮影したはずなのに、ビデオに写っていない。

 ザーというノイズしか写っていないのだ。


(ひょっとすると、強い妨害電波でも出てるんかな?)


 俺のミスなのか?

 しかし、そもそも複雑な操作じゃない。


 ボタン一発で誰でも撮影できるはずだし、

 何回か撮影の練習をしたが、ミスったことなんて無い。

 事前確認もした。


(妨害電波のせいで、動画がアップされないのかもな)



 がっかりだ。


 祭りになってるかもしれないから、ネットを見てみる。

 しかし、ネットが繋がらない。


 さっきまでつながっていたのに。

 山奥だから、通信状況が悪いのか。


 それとも、UFOの妨害電波のせいかもしれないな。

 妨害電波というのは、俺の想像でしかないが。



 下山して改めてネットをチェックすればいいや。

 俺は気分を改めて夕食にとりかかった。


 今は3月初旬で流石に朝晩はかなり冷える。

 超強力フラッシュライトをやや明るめに調節して、

 一気に夕食をかっこんだ。


『にゃー』


 忘れてるわけじゃないぞ。はい、レオのご飯。


 子猫の名前はレオ。

 長毛種の混ざった黒毛ミックスで、期待を込めて名付けた。

 もちろん、ライオンのように雄々しく育ってほしいからな。



 食後はコーヒータイムでまったり。

 レオには子猫用チュール。


 リンゴをむこうとサバイバルナイフを取り出した。


 ナイフは車に積んでるところを見つかるとアウトだ。

 このところ、やけに法律が厳しくなって、

 ナイフどころか、単なる鉄棒程度でも検挙されるらしい。

 長めのマイナスドライバーとかも駄目なんだと。


 だから俺の車には秘密の扉があって、

 危なそうなものは全てその中に入れてある。

 もっとも、警察に車を調べられたことはないが。





 リンゴを食べながら、音楽のボリュームをあげると、

 ガサガサと草むらをかき分ける音。


 獣か?


 普通なら逃げていくと思うが、腹減らしてるのかもしれん。

 レオが尻尾を膨らまして、威嚇してるぞ。

 おお、いっちょ前に。


 俺は、フラッシュライトの光量を最大にし、

 音のする方向へナイフとともに構えた。


 その時だ。


 突然、大きな物体が猛ダッシュでこちらに近づいてくる。


『フギャッ』


 進路途中にいた子猫は弾き飛ばされてしまった。


『レオ!』


 俺はフラッシュライトをその物体に向けた。

 強力なフラッシュライトだ。

 最大光度にすると、車のヘッドライトよりも数倍眩しい。


 大柄の物体は顔をそむけながら俺の直前で立ち止まった。

 見たこともないような異様な顔だ。

 口から2本の鋭い牙が生えている。


 獣が眩しさのあまり屈み込んだところに、

 俺はサバイバルナイフをつきたてた。


 2mを遥かに超える巨体だ。

 しかし、見事に片目にナイフが突き刺さった!


 だが、獣が手を振り回すと、俺は吹き飛ばされてしまった。


 恐ろしい力だ。


 木に背中を強打し、痛みで俺はもんどりを打つ。

 意識を手放しそうになるが、

 俺は必死に逃げようとする。


 が、体が動かない。


 獣は目から血を流し、怒りに打ち震え俺に向かってきた。

 くそっ、これまでか。


 ところが、奴はナイフを引き抜こうとした途端に、

 コンクリートの車止めに足をとられ、

 地面に倒れた拍子にナイフが深く押し込まれてしまった。


『ギャオー!』


 獣は悲鳴をあげたと思うと、瞬時に霧となって消えた。


 同時にまばゆい光に包まれたかと思うと、頭の中で、


『……レベルアップしました……』


 という声を聞きつつ、

 俺はとうとう意識を手放した。



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