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物語の始まり

 とある世界にティムル大陸という大地があった。

 その広大な大地には様々な国が点在していた。

 世界は平和とは言えないがそれでも正しく事が動いていたのだろう。

 そんな世界に歪みが一つ生まれた。

 魔族の誕生である。

 魔族はどこからともなく現れ瞬く間に大陸の一部を占領し魔王の名の下に魔国を作り上げた。

 その様な動乱の最中から物語は始まる。


 王都ラクシール、広大な土地を有するラクシール国の名前を冠する都市の名前である。

 その都市にいる下級貴族のダグラス家に一人、子供が生まれた。

 その者の名前は、ファルス=ダグラス。

 彼の物語が始まるのは6歳のときだろう。



【ファルス=ダグラス 6歳】


「ねぇねぇ、父さんなんでうちはお金持ちなの?」


 ある日の夕食の時、普段は物静かに食事をとる私だったが何を思ったのか碌に話したことのない父に質問を投げかけた。

 当時の事を思い出すと父は父で面倒臭さ半分投げやり半分で私の問いかけに答えていた気がする。


「ふむ、それは私たちが貴族だからだ」

「どうして貴族だとお金持ちなの?」


 父の答えにさらに疑問を覚え、私は質問する。


「ファルス、お前は子供だからよくわかっていないのだろう、人間とは貴族のことを指し、そのほかの市民は違う生き物なのだよ」

「貴族と市民はどう違うの?」


 私は懲りずに父に質問する。


「そりゃぁ……っ! 生まれが違う! 私たち貴族は市民と違って高貴な血筋なのだ!」


 父は最初、言葉が詰まるがすぐに答える。


「でもこの前、家庭教師の先生が人の体の作りは性別除いてほとんど一緒って言ってたよ」

「がっ、そういう意味でわなくてだな……」


 父は私の質問の答えがわからないというよりそれを説明する言葉が見つからないという様な様子だった。

 だが幼い私がそれに気づけるわけもなく、さらに質問をする。


「父さんはお酒を毎日飲んでばかりなのにどうしてお金がいっぱいうちにはあるんだろう? ねぇ?どうして?」


 答えに対して質問で返す。

 こんなの子供の頃なら誰でもしたことがあるありふれたことだ。

 ただ今回は質問した内容がよくなかった。

 見方によっては6歳の子供が父親を、貴族を侮辱している様に取ることもできる。

 勿論、こんなの無理矢理言い掛かりをつけているに等しい。

 6歳になる子供がそんなこと考えられるほど賢いはずがない。

 だが目の前の男は自分が侮辱されていると捉え、(あまつさ)え自分の息子のそんな戯言を受け止める器もなかった。


「なっ生意気な! おい! こんな奴の顔も見たくないっ、誰かこいつをその辺の教会に押し込めろ!」

「へ? と、父さん?」

「っ! 黙れぇえ!!」


 父は顔を真っ赤にしながら激情に身を任せて貴金属の食器を私に投げつけた。

 その食器は運悪く、私のこめかみに当たってしまう。

 鈍い痛みと共に食器の当たったこめかみから血があられ出してくる。

 その痛みに堪らず幼い私は泣いてしまった。


「父さん、すごく痛いよ、父さんっ!」


 そこから先のことはよく覚えていない。

 家の使用人にその場から引き摺り出され馬車に乗せられていた。

 いつの間にか頭には包帯が巻いていて着の身着のまま馬車の中に揺られている。

 悲しさや不安より、傷の甘い痛みと現実感のなさからただ身を任せることしか当時の私は出来なかった。

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